脂肪はコレステロール量に関係する
高血圧の重要な合併症である心筋梗塞は、血清稔コレステロールが増えれば増えるほど多発します。血清総コレステロール値が高く、日本の4~5倍も心筋梗塞で死亡する欧米諸国では、コレステロールが悪者扱いされても当然のことです。
しかし「コレステロールは低いほうが安全だ」という欧米の考え方をそのまま日本にもち込んで、はたしてよいものなのでしょうか。この点については、日本に多発している脳卒中という病気が、コレステロール値の低い人が多いのです。
コレステロールとは?
そして、血液のコレステロールに大きく影響しているのが、ひと口にいえば脂肪なのです。
植物性ならいいは本当?
一般に、動物性脂肪はコレステロールをふやし、植物性脂肪はコレステロールを減らすといわれていますが、そんな単純なものではありません。
実は同じ脂肪でも、それを構成している脂肪酸には3つの種類があって、不飽和基を1つだけもっている一価不飽和脂肪酸はコレステロールを下げることが最近わかりました。
一方、飽和脂肪酸はコレステロールを上げるといわれていますが、この作用があるのはラウリン酸、ミリステン酸、パルミナン酸だけです。
そして不飽和基を2つ以上もっている多価不飽和脂肪酸はコレステロールを下げるといわれていますが、実際にコレステロールを下げるのは、植物油としては米油、コーン油、ペニバナ油、小麦胚芽油、ヒマワリ油だけです。
これに対し、魚に含まれる油は中性脂肪も下げる作用をもっています。
血栓の予防にEPA・DHAhttps://more-supplement.info/use/archives/30
また、ひと口に植物性脂肪といっても、飽和脂肪酸のほうが多価不飽和脂肪酸より多いヤシ油やココナツ抽は、コレステロールをふやす働きがあるのです。もう少し詳しくいうと、飽和脂肪酸がコレステロールをふやす力は、多価不飽和脂肪酸がコレステロールを減らす力より2倍も強力なのです。
では多価不飽和脂肪酸の含有量が多ければ多いほどコレステロール値を下げる力が大きいのかというと、必ずしもそうでありません。米(ヌカ)油は天ぶら油として多価不飽和脂肪酸を35%しか含んでいませんが、これを80%含んでいるペニバナ油( サフラワー油)とたいして変わらない働きをもっています。なお多価不飽和脂肪酸は、n・6系列とn・3系列があります。n・6系列とn・3系などはダイエットにも必須です。
魚と肉の作用は正反対
ところで近年、EPA(エイコサペンタエン酸) と呼ばれる多価不飽和脂肪酸が注目されています。これは、グリーンランドに住むイヌイットが粥状硬化症をおこしにくいということに研究の発端があるのですが、彼らの体内にはトロンボキサンと呼ばれる物質がまったくといってよいほど作られていません。この物質は、血管壁に血小板を呼び寄せて粥状硬化発生のきっかけを作り出す作用があって、アラキドン酸から作られるのですが、イヌイットの体内には、アラキドン」酸がEPAに置きかわっているのです。
EPAは魚油に含まれていますが、タイやカレイといった高級魚には意外と少なく、むしろイワシ、サバ、サンマ、アジといった、俗に青物と呼ばれる大衆魚に大量含まれています。最近は、高級魚は養殖されたものが多く流通しているので、体のことを考えたら大衆魚のほうがおすすめです。
また体内でEPAから合成されるのがDHA(ドコサヘキサエン酸)で、これも血液凝固をおさえる作用があります。
マグロ(特に目)やブリ、サバ、ウナギなどに多く含まれます。これに対して獣肉の脂肪は、トロンボキサンをたくさん作り、粥状硬化を促すだけでなく、血液の凝固性を高めますから、血管内で血液が固まりやすくなり、血栓症をひきおこす危険性をもっているということになります。それでは、「獣肉の脂肪はコレステロールの問題だけでなく、いろいろないたずらをするから、多価不飽和脂肪酸の多い植物油や魚の油が安全だ」と考える人も多いことでしょう。
ところがこの多価不飽和脂肪酸が多すぎると、またやっかいなことがおこります。多価不飽和脂肪酸は実に不安定な存在で、脂肪の過酸化物を作りやすいのです。これが老化現象に拍車をかけることは古くから知られていますが、また同時に粥状硬化の発生にも一役買っているほか、発がん物質の作用を強める作用ももっているというありさまです。
このためWHOでは、多価不飽和脂肪酸は総熱量の10%におさえるようにと警告しています。ところで、コルフ島やクレタ島に住むギリシャの人が動脈硬化にもかかりにくいし、がんにもかかりにくいというのは有名です。
これは彼らが浴びるほど使うオリーブ油に理由があるのではないかと考、えられていますが、このオリーブ油の主成分は一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸です。
では一価不飽和脂叩肪酸ならからだによいのかというと、必ずしもそうではないのです。エルカ酸という一価不飽和脂肪酸は心臓の筋肉を傷める作用をもっています。これはナタネ油に多量含まれていますので、WHO では「ナタネ油を食用とするとき、低エルカ酸油を使うか、ほかの抽と混ぜて使うように」と勧告しています。
脂肪の上手な摂り方
以同じ脂肪といっても、一方に偏りすぎるといろいろな問題がおこります。国民栄養調査に基づいて脂肪摂取の比率を次のように定めています。
- 望ましい脂質エネルギー比率は、総摂取エネルギーの20~25%
- 飽和:一価不飽和:多価不飽和=3:4:3
- n-6:n-3=4:1