たんぱく質

たんぱく質が不足すると脳卒中の原因になる

実験用のネズミとして、高血圧自然発症ラット、脳卒中易発症ラットと呼ばれるネズミを作り出しました。これらのネズミは遺伝素因が強いため、ほうっておいてもほとんどがが高血圧になります。

アメリカの研究者がこのネズミを本国へ持ち帰り、いぎ実験を始めてみると、思うように血圧は上がってこないし、脳卒中にもならないという結果が出ました。

日本では血圧が上がるのに、なぜアメリカでは血圧が上がらないのえさかというと、実は餌の成分に違いがあったのです。日本もアメリカも、塩の量は同じだったのですが、たんばく質の含有量がアメリカの餌のほうが格段と多かったのです。

また、脳卒中の多い農村と脳卒中の少ない魚村とを比較すると、魚村のほうが尿中に多くの無機硫酸を含んでいることが調査されました。この理由は、魚村のA食事には魚介類が多いことにあるのですが、これは、たんばく質をきちんととっていると、血管が丈夫になり、脳卒中になりにくいという1つの暗示です。

高タンパクは食塩の害も減らす

もうひとつの重要な研究があります。これは、高血圧の家族歴をもっているが現在のところは正常血圧である群と、高血圧や脳卒中の家族歴をもたない正常血圧群について、それぞれ1日25gずつの食塩を摂取させたものです。そうすると、高血圧の素因をもっている群の血圧ははっきり上昇したのですが、素因をもっていない群の血圧はほとんど上がりませんでした。
ここでいったん減塩食に戻しておいて、素因をもつ人たちに、1日25gの食塩摂取を再び行いましたが、今度は動物性たんばく質を40gから110gに増加してみたのです。すると、前は血圧が上がったのに、今度はあまり上がらないという結果が出ました。そして尿中へナトリウムがどんどん排泄されていることが確かめられました。つまり動物性たんばく質は、ナトリウム排…泄を促進する作用があり、これが食塩の悪影響を打ち消したのだということがわかったのです。

「日本人の栄養所要量」によると、成人では中等度の活動の際、男性で70g、女性で60gのたんばく質が必要です。そして動物性と植物性を約半々の割合でとることが疾病予防の上でたいせつだと提言をしでいます。
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かつて脳卒中が多発した農村では、動物性たんばく質の摂取が少なめでした。現在では食生活が改善されて増加傾向にあります。米どころに住む人たちは、どうしても食塩過多になりがちですから、塩分の害を防ぐ動物性たんばく質を積極的にとりましょう。

動物性と植物性の違い

たんばく質というと、アミノ酸がたくさん結合して構成されたものですが、このうち、血圧を下げ、脳卒中を予防する作用が強いアミノ酸というと、メチオニン、リジン、プロリン、タウリンといったところです。特に魚のたんばく質はこの効果が強いといわれていますが、最近ブームになっている大豆のたんばく質には、血圧を下げる力がほとんどありません。

この二つのたんばく質の違いはどこにあるかというと、魚がもっているメチオニンというアミノ酸が大豆にはほとんどないのです。これは大豆に限った話ではなく、植物性たんばく質全般にいえることで、メチオニンをほとんど含んでいないのです。高血圧と脳卒中を予防する意味では、特に動物性たんばく質が重要だということがおわかりいただけたと思います。

それでは動物性たんばく質はできるだけ多くとればよいのかというと、これまた早計なのです。というのは、動物性たんばく質は、動物実験上、粥状硬化症を促すことが古くからわかっているからです。

これに対して植物性たんばく質は、粥状硬化症の発生には関係ないとされています。それどころか、大豆を食べるとコレステロール低下に効果があります。
大豆たんばく質がコレステロール値を下げる作用は、アミノ酸構成というより、アルギニンというアミノ酸が関係しているのではないかと考えられています。

たんぱく質の上手な摂り方

動物性たんばく質と植物性たんばく質を半々にとるのが理想です。植物性では、量のわりにたんばく質が多いのは大豆です。ご飯は1日軽く3杯でたんばく質は21gになりますが、豆腐だと3分の1丁で9gのたんばく質がとれるのです。
野菜は1日少なくても300gとることがすすめられますが、これだけで5gのたんばく質が含まれます。くだものはたんばく質は含まれません。

動物性たんばく質として1日に必要な目安は、切り身の魚を1切れ89g、獣鳥肉60g、卵1個、牛乳1本というところで、これで動物性たんばく質33gになります。
以上は、糖尿病の基礎食(1200kcal)と同じです。

人間が生きていくために必要かつ最低のエネルギーは1200kcalです。これは、標準体重60kgの人が、ただ横になってじっとしているとき(1kg当たり20kcal消費する)の1日の必要エネルギー量と同じ理想的な栄養配分例です。そして、たんばく質をはじめ、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルなど、最低必要な栄養素が完全に組み込まれているのが下表で、糖尿病の基礎食と呼ばれているものです。

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