トイレ

寒さだけでない

日本では、寒い冬の間にトイレの中で脳卒中をおこす人が少なくありません。一般の家庭では、居間は暖房で暖かくしてあっても、トイレまで暖めているところは少数です。
セントラルヒーティングのマンションでもないかぎり、トイレは冷えきっているものです。トイレで脳卒中をおこすのは、下半身を寒風にさらす結果、血圧が上がるからだと単純に考えている人が多いようですが、トイレと血圧との関係は、単に寒さだけではなく、もっと複雑なのです。

いきみ動作が危険

ここで、排便時のいきみ動作が血圧にどんな影響を与えるのか考えてみましょう。まず、いきみはじめると同時に、血圧が急激に上昇します。これは、いきみ動作で胸腔内圧が上昇するため、肺内の血液が、いっせいに左心房を経て左心室内へ押し込まれ、左心室内の血液量がいっぱいになるからです。

つまり肺は血液をいっぱい含んだスポンジのようなものですから、これを外圧でつぶすと、肺内の血液が一気に心臓へ送り込まれるわけです。そして左心室が収縮すると同時に大動脈へ押し出される血液量が多いために、これが、急激な血圧上昇に結びつくのです。

もし高齢者で大動脈の伸展性が低下している場合は、このときの血圧上昇はいっそう著しいものです。次に、いきみを続けていると、上昇した血圧はしだいに落ち着き、最大血圧と最小血圧との差( 脈庄)はかなり小さくなります。

これは、胸腔内圧がプラスになっているため、胸腔内へ静脈血が還流しにくくなり、したがって心臓内の血液量が少なくなってきますから、心臓が収縮しても、送り出される血液量も減るというためです。

ここでからだは、血圧低下を防止するために、反射的に末梢の血管を収縮させ、これ以上血圧が下がらないように歯止めをかけます。

ただ、高齢者では、この血管反射機能が鈍っているので、血圧低下の歯止めがうまくかからない場合があります。ところで、いきみを中止して息を大きく吸った直後は、血圧が突然下がります。これは、今まで胸腔内圧がプラスのために押しつぶされていた肺が急にふくらみ、静脈血を肺内にプールするため、左心室へ向かっての血流が、一瞬さらに減るためです。
末梢血管の収縮状態はしばらく続いたままですから、最大血圧も最小血圧も、いきみ前の状態より高めに維持されます。

この血圧上昇は、脈拍調節機構を興奮させ、脈拍数は減ります。ただ高齢者では、血管反射機能の低下のため、血圧の上昇程度は弱いものです。いずれにせよ、いきみ動作時の血圧変動は急激であるだけに、脳や心臓の事故をおこしかねません。

尿意の我慢は血圧を上昇させる

動物実験で尿道から生理的食塩水を押し込んで膀胱壁を緊張させると、血圧は急速に上がります。このように膀胱壁が伸展されると血圧が上がることを膀胱反射と呼んでいます。

ところが膀胱にたまる尿は、片側の腎臓から、1分間に1mlという割合で分泌されてくるので、自然状態では、膀胱が急激にふくらむことはありません。
つまり血圧がひどく上がる直前に、血圧調節機構の働きで末梢の血管が拡張し、これによって血圧上昇はごく軽度にとどまっているわけです。

ところで、膀胱をパンパンに張らしておいた状態で排尿すると、膀胱反射による血圧上昇機構は解除されるのに、血圧調節機構の働きでおこった末梢血管の拡張状態は、しばらく続いているために、排尿直後には急激な血圧低下をおこしやすくなっています。排尿中に武者ぶるいを覚える人がありますが、これは血圧低下を食い止める手段でもあるのです。

ときに排尿失神をおこす人もいるくらいです。この排尿による血圧低下は、男性に限ったことで、女性にはみられません。その1つの理由は、女性の排尿が、腰かけるか、かがみ姿勢であること、もう1一つは、女性は男性と違って、膀胱壁を張りつめるほどの尿をがまんすることができないためです。
この排尿時の血圧変動は、男性でも昼間はおこしにくいものです。昼間は、これほど極限まで尿をためることがないからです。冬、寒いトイレに起きるのが面倒くさいと思って、就床中に尿意をがまんし、ついにがまんしきれなくなった結果、トイレで事故をおこすというわけです。

危険を避けるトイレ対策

トイレで脳や心臓の事故をおこすのは、日本だけにしかみられません。これは、血圧の高い人にとって、排泄そのものが危険だという意味ではなく、排泄への工夫が足りないことを教えているのです。

尿意 を我慢して膀胱をい っぱ いにしておくと、血圧が上がります。この後、排尿すると、血圧が一気に下がります。この血圧の変動は、立ったまま放尿する男性に特に著しいものです。動脈硬化が進んでいる高齢者は、洋式トイレで腰かけて排尿したほうが安全です。

まず排便については、日本式のしゃがんでいきむというところに問題があります。しやがんだ姿勢では、いきみ動作で腹庄が大きくかかりますから、それだけ血圧の変動も大きいのですが、

洋式スタイルの腰かけ便器の場合には、これが防げます。つまり、腹庄をかけにくくすれば、いきみ動作のときの胸腔内圧増加が最小限度におさえられるので安全なのです。また、ふだんの食事の工夫などで、便がかたくなりすぎないように注意することもたいせつです。「脱・便秘」のための食物繊維の基本などが参考になります。

またトイレの保温が不可能であるかぎりは、寒い夜間のトイレ通いは避け、昼間の暖かいうちにすませておくよう、習慣づけるには、夕食後の飲水量を減らす工夫もありますが、いちばん悪いのは、寝室が冷えきっていたり、寝具が不適当のため、寝ているとき、からだが暖まらないで冷えてしまうことです。

からだを冷やすと、脳下垂体からの抗利尿ホルモンの分泌が減りますから、どうしても尿量がふえてしまいます。電気毛布などで就寝前に寝具を暖かくしておいたらいかがでしょうか。ただし就床時はスイッチを切るか、いちばん弱くするかしてください。こともたいせつです。寒い冬の時期の寝具などが参考になります。

夜間の排尿については、特に冬はシビンを用意して、寝室で用をたすようにするのが得策です。シビンも、むきだしにしないで、適当なカバーをかぶせるなり、ふたをつければ、けっして見ばえの悪いことはありません。

通勤

起床~家を出るまで最低1時間の余裕をとる

昔、戦に出る大将は、しかるべき儀式をすませ、心身ともに張りつめて出陣ました。江戸の職人も同様で、朝ぶろで心身をひきしめてから、その日のかせぎに出かけたものです。
こうしたことをしないとよい仕事なんてできるわけはありません。

朝、起床してから洗面、着がえ、食事、排便、朝刊へ目をとおす。こうした一連の朝の習慣をこれだけで1時間はたっぶりとってほしいのです。

理想をいえば、ふだんの運動不足を補うために、朝のジョギングや体操をする時間もとれれば尚いいでしょう。
目がさめてから胃が食事を受け入れるまでには、ある程度の準備時間が必要です。しかも食後20分ほどは、胃の消化活動のため、激しく動き回ることをひかえなければなりません。
つまり、朝、家を出てから、朝食まで20分、朝食に20分、排便に10分と計算すれば、もうこれだけで50分です。これをぎりぎりまで布団やベッドに入っていて、一刻も早く出勤しようとすると、胃が目をさましきっていないのに、無理に短時間で朝食をすますというはめになりますから、朝食の消化は悪いし、食べ残しをしたとなると栄養のバランスは狂ってしまうし、おまけにトイレ時間がなければ、急いでいきまなければなりません。日ごろ血圧の高い人が、朝からセカセカ、イライラでは、いったいどうなってしまうのでしょうか。

通勤時間には特に余裕をもつ

家を出てから、バス停までかけ足、駅の階段もかけ足というのは、食後30分もたっているのならいざ知らず、からだによいはずはありません。ゆっくりと余裕をもって歩きましょう。

マイカー通勤にしても、運転するだけで血圧が上がるものです。会社へ着くまでにストレスで身をけずったら、それこそ大損です。
要するに、通勤時間で5分、10分の差をかせぐためには、極端なストレスを受けるのです。むしろこの5分、10分は、就寝時刻や起床時刻でかせいでおくほうが、健康にはとても有利だということです。

7~8じ時間の睡眠が10分や20分短縮されたところで、健康に有害なはずはないでしょう。むしろ、出勤前のイライラのほうが、どんなに健康に、血圧に、そしてコレステロールに有害であるかなのです。

仕事

生理的リズムに合わせるのが最適

からだには、生体のもつ自然のリズムというものがあります。人間の活動能力を支配しているのは、交感神経や脳下垂体・副腎系の働きによります。
これが昼間は働いて夜は眠るという、ごく自然の生活習慣の場合にはどうなっているのでしょうか。これは、血液中の副腎皮質ホルモン( 血中コルチゾール) の量をはかるとわかります。

午前9時ごろが1日のうちでいちばん活動的な条件にあり、午後からは機能が低下しはじめ、睡眠中は最もリラックスしています。そして、朝、日がさめる2~3時間前から機能が急速に増加してきます。いっぼう血圧のほうは、副腎皮質ホルモンがいっせいに分泌している午前9時では、1日のうちでピークに達しますが、午後5時以降になると下がりはじめ、睡眠中はいちばん低くなるのです。

つまり、自然のリズムからいうと、午前9時から午後5時ぐらいまでが、最も生体は活動に適しており、この時間帯に仕事をするのが、いちばん能率が上がるというわけです。

同じ仕事をするなら、この能率よい時間帯を利用するのが得策です。それを、出勤して無駄に時間を費やし、「仕事がしきれなかったら残業すればよい」などとたかをくくっていると、あてがはずれます。

午後5時以降の生体の能率は低下してきますから、うまいぐあいに仕事が進むはずはないのです。それも無理をすれば、ストレスが加わりますから、副腎皮質ホルモンの分泌もふえ、血圧も上がり、そのときは仕事も片づくかもしれません。

ふだん忙しくて、勤務時間内に仕事が終わらず、残業の連続の人は、なれという現象でなんとかよい仕事もできることでしょうが、日ごろ残業になれていない人の場合は、こんな異常状態が2日も3日も続いたら、ストレスの塊でクタクタになるのは必定です。
要するに、1日の仕事は勤務時間内に終わるように、計画を立てて働くことが、健康にもよいのです。

肉体労働がきついとき

昔は、重労働をすると血圧が上がり、脳卒中がおこりやすくなると考えられた時代があります。それは、日本の農村地帯に高血圧や脳卒中が多発していたこと、特に脳卒中が多い秋田県の特徴の1つに、1人当たりの耕地面積が広いという点が注目されていたからです。

しかし現代流に考えれば、からだをよく動かしている人の血圧は低く、また同じ高血圧の人でも、運動訓練によって血圧が下がるということが知られています。
したがって、肉体労作業に従事するからといって、それ自体が高血圧や脳卒中をもたらすことはないのです。

欧米では、肉体労務者は心筋梗塞にかかりにくいという点を注目しています。ただし、労働が激しい場合は、食事のとり方に気をつけなければなりません。

多くの熱量をとらなければならないために、どうしても主食偏重になってしまい、栄養のバランスがくずれてしまいがちです。それに発汗が多いので、食塩を多めにとってしまうことも血圧には悪条件ですから気をつけましょう。労働量に見合うたんばく質を十分補給しさえすれば、からだは耐えられるのです。

ストレス・性格

少々の緊張でも血圧は上昇する

精神的にも肉体的にも、ストレスが加わると血圧は上がります。医師であれば深夜の電話ベルとか救急車の警報で実に神経がいらだつものですが、ウィーンフィルハーモニーの常任指揮者でもあっ方のお話によれば、新幹線の車内放送を知らせるオルゴールが、音楽家の神経をさかなでするそうです。

ネコはネズミの声にいきり立つし、イヌは自分以外の尿臭を電柱でかぐと興奮します。そういうわけで、ほかの人には気にならないことが、自分には気になる、イライラするということが多数あります。

そしてこういったときの血圧は当然のことながら上昇するわけですが、ふだんそんなに気にさわるという問題でもないのに、精神的に緊張すると、それだけで血圧は上がります。

たとえば、買い物のときのお釣りの暗算とか、気がねする人と会話を交すときがそうですが、ふだん血圧が高い人ほど、そのときの血圧上昇は大きいのです。

ストレスをおこしやすい性格

同じ強さの刺激でも、ストレスをおこしやすい人と、そうでない人があります。A型性格がストレスに弱いことがよく知られています。しかし実際に高血圧の人をしらべてみると、必ずしもA型性格の人が多いというわけではありません。

それにしても、A型性格の人はストレスを受けやすく、ノルアドレナリンという興奮性のホルモン分泌がふえます。これは血圧を上げ、コレステロールをふやすだけではなく、血液の凝固性も高めまこうそくすから、心筋梗塞にかかりやすいと警告されています。

一般に医師はA型性格が多いのですが、同じ医師でも、ストレスが多い専門科医ほど心筋梗塞にかかることがイギリスで調査ずみです(たとえば、皮膚科・整形外科医より、麻酔科・外科・内科医のほうが心筋梗塞にかかりやすい)。

ストレスは発散がポイント

もともとの性格はそう簡単には変えられるものでありませんが、日常、上手にストレスを解消して、リラックスすることがたいせつです。
ゴルフ、釣り、酒、子供と遊ぶ… …など、人によってさまざまでしょうが、要は、のんびり、ゆっくりとした気分になれる時間を長くもつことです。特に、ふだん血圧が高い人は、会議の最中でも、深呼吸や手首の屈伸運動など、緊張ずくめの気分をちょっとでもほぐすことを考えましょう。
昼休みはソファーに横になってもよし、また好きな音楽を聞くこともよいでしょう。親しい友人と冗談を交すのも一方法です。緊張のしっばなしでは、血圧も上がったままで、それだけ身を蝕むはめとなるのです。

A型について

同じ強さの刺激でも、せっかちなA型性格の人ほどストレスをおこしやすく、ノルアドレナリンという興奮性のホルモン分泌が盛んになります。このホルモンは、血管の緊張を高めて、血圧を上げます。またストレスは、コレステロールもふやします。

暑さ

脱水状態は血栓をつくってしまう

高血圧は冬の寒冷が危険だということは常識です。それなら夏は安心かというと、実はそうではないのです。
脳卒中や心筋梗塞という病気が冬にふえるのは当たり前ですが、こういった病気は夏でも発生しているのです。心臓血管系の病気で命を落とす人が寒い季節に多いことは、国際的な常識でもありますが、ただここで例外が1つ知られています。
それはオーストラリアのシドニーで、心筋梗塞で亡くなる人が、冬に比べて夏のほうが多いのです。オーストラリアは赤道の南側にありますから、日本をはじめ欧州やアメリカの気候と夏冬が逆になっていますが、そういう意味ではなくて、シドニーでは、実際に寒い季節よりも暑い季節のほうが心筋梗塞をおこしやすいのです。これはどうしたことかというと、シドニーの冬は暖冬ですごしやすいのですが、夏は酷暑そのもので、このために脱水傾向になります。その結果、血液がこくなり、血液が凝固しやすくなって、血栓症を合併するからなのです。つまり、冠状動脈の血栓症が心筋梗塞につながるというわけです。
それでは、南太平洋やアフリカも気候はシドニーと同じですから、心筋梗塞が夏に多いはずだと考えられますが、実はそうではないのです。

というのは、心筋梗塞という病気は、栄養がよすぎてコレステロール値の高い国民はかかるものの、栄養の悪い開発途上国の人たちはかからないからです。
クーラーが普及していないころの日本で酷暑の夏を迎えたことがあります。このときは、夏だというのに、高齢者がひんばんに脳血栓や心筋梗塞に襲われました。これは高齢者が環境変化に対する順応性の低下のため、暑さで脱水をきたしたからなのです。

カリウム不足に要注意

また、汗にはナトリウムやカリウムも含まれていますが、このカリウムの放出が心筋梗塞の引き金となります。カリウムは、筋肉の細胞内に含まれて
いて、筋肉の収縮に関与していますが、真夏に、大量の汗といっしょにカリウムも流れ出て、心臓の筋肉内にあるカリウムが減ってしまうと、心筋梗塞に襲われるというわけです。

カリウムは、いつもナトリウムと手をとり合って体外に出ていく性質をもっています。したがって、利尿降庄薬を長期に服用している患者さんは、積極的にナトリウムを体外に出すと同時に、カリウムも外に出してしまうので要注意です。カリウムを含んでいる野菜やくだものを努めてとりましょう。

クーラーや冷房の冷気にも注意をはらう

もう1つ夏に気をつけたいのは、クーラーです。皮膚に強い刺激が加えられると、血圧は急上昇します。戸外の熱気から急にクーラーの冷気に身を包まれると、これが強い皮膚刺激となり、血圧を上げてしまうのです。

特に夏は、皮下の毛細血管が冬に比べて拡張しており、毛穴が広がり、汗を出して熱を放散させやすい状態にあります。そのからだを、自然のしくみに逆らって無理に冷やすために、水分その他の代謝のバランスがくずれてしまいます。
これは健康な人にとってもよいわけがありません。まして、健康な人より高血圧の人ほど冷気に弱いのですから、いっそう気をつけなければなりません。
さらに、動脈硬化が進んでいる高齢者の場合には、血管が弱っているのでなおさらのことです。クーラーが効きすぎた状態というのは、外気温との差が五度以上ある場合です。寒い部屋に長くいるとそのうちからだがなれてしまいますが、初めに震え上がるほどの冷えを感じたら、冷えすぎです。暑い外気にふれて家に帰り、いきなりクーラーの前で涼むなどということのないように注意します。オフィスや会社で冷房が強すぎて帰宅すると暑いというのは血圧が変動するので注意しなければなりません。
からだは、入ってくる水分と出ていく水分が均等になっています。温和な気候下で安静な生活をした場合、1日にどうしても必要な水分は、不可避尿400mlと不惑蒸泄900mlを足した1300mlで、これを補わないと脱水状態になってしまいます。
外出でもしようものなら、1500mlほど汗をかきます。汗の分だけ飲水量をふやせば問題はありませんが、高齢者では、のどの渇きを覚えにくいので、うっかりすると脱水状態をおこします。また、高齢者の腎臓は尿をこくする機能が低下しているために、不可避尿の量も多めに必要ですから、特に水分の補給には気を配ってください。

寒冷

高血圧の敵「寒さ」

個人個人の血圧は、高い人もあり低い人もありますが、同じ人でも、血圧は夏に低く冬に高いものです。仕組みは、冬期は皮膚が寒冷刺激にさらされるからです。もともと皮膚が刺激を受けると、交感神経が興奮して血圧を上げるのですが、この刺激は、疼痛でも、熱湯でも、寒冷でも変わりがありません。
しかし冬は、急に寒い環境にさらされやすいので要注意です。

寒さのために末梢血管が収縮し、血管の抵抗が大きくなって、血圧が上がってしまうのです。それと同時に、血液の凝固性も高まりますから、脳や心臓の事故はどうしても冬におこりがちとなります。

寒さから身を守るポイント

部屋全体を温め適温に
冬は、部屋全体を20度前後に暖めるように工夫しますよく、コタツだけで身を縮めている人がいますが、これでは下半身だけしか暖まらず、上半身は冷えきった環境におかれているのです。
このため肩や首すじの血液循環が悪くなり、肩がこったり、頭痛がおこったりしがちです。部屋の温度が奪われるのは窓と床面ですから、窓にはカーテンを二重に引き、床面はふかふかのじゅうたんを敷くとよいでしょう。
これは熟の不良導体である空気の層で、保温効果を高めるためです。なお、私たちのからだは急激な五度以上の温度差に弱いので、冷えきった廊下などに出るときは、全身の保温に十分注意し、子供のように素足で廊下を歩くような無精なまねはしないことです。
外出のときは、防寒を心がける
特に体温が奪われやすいのは胴体です。ふだん露出している顔面や指先などは、皮膚温が低いのですが、胴体の皮膚温は高いので外気温との差が大きく、それだけ幅射熟として体温が逃げやすいものです。したがって外出のときは、面倒がらずに、重ね着で空気の層を幾重にもつくるなり、防寒に気を配りましょう。
特に胴体に近い首すじや大腿部をカバーしないと、からだはすぐ冷えきってしまいます。ふだん露出になれている手先も、酷寒の際は手袋をし、また、マフラーの着用を忘れてはいけません。それから、冷たい空気を吸っただけで冠状動脈が収縮することも知られていますから、特にこがらしの季節には、マスクがたいせつです。
なお、飲酒後は、皮膚の血管が開いて皮膚温が高まっていますから、それだけ体温は奪われやすくなっています。宴会からの帰宅時には特に防寒を心がけます。
洗面はお湯で
4度の水に手を突っ込んで、どのくらい血圧が上がるかをみる寒冷昇庄試験という検査があります。これによると、ふだん血圧が高い人は、正常血圧の人より著しく血圧が上昇します。
特に寒い冬の洗面や食器洗い、ぞうきんがけなどは十分に注意してください。冷たいのをがまんして水を使うと、血圧は30~40mmHgも上がります。しかもこの血圧上昇は急激ですから、脳や心臓の動脈硬化を合併している場合は、危険きわまりないのです。

できれば夜の排尿は溲瓶で行う
せっかく熟睡して、血圧も落ち着いていたのに、尿意を催して目がさめることがあります。ふだん血圧が高くない人でも、年をとると腎臓機能が低下しますから、昼はあまり尿が出ないのに、夜間安静にしていると、腎臓の機能が活発になってきて、どうしても1~2度は起きるようになるものです。これが夏なら話は別ですが、冬で家屋がいちばん冷えきっている時刻に、トイレに起き出すというのは、血圧の揺さぶりで事故をおこす原因となりかねません。
また、男性の場合は、排尿で急激な血圧低下をおこすこともあり、これがとで脳血栓をおこしたり、失神したりすることもあります。ですから、冬の夜間の排尿は、シビンを使うのが安全です。これを面倒くさがっていると、綱渡りと同じで、いずれ事故をおこしましょう。

生活をする上で重要な6項目

  1. 減塩
    減塩は高血圧治療の基本です。日ごろ大量の食塩をとりすぎる日本の食習慣にならされている以上、ここは、なんとしてでも食塩を減らす努力が必要です。これによって降圧薬の使用量が減れば、それだけ副作用の心配も減るし、また一方で、血圧の予期しなの上昇が防げるのです。
  2. 運動不足に注意
    運動不足の人は、ちょっとした動作で容易に血圧が上がってしまいます。また、体重がふえて高血圧を増悪させるだけではなく、血液の凝固性を克進させて血栓が生じやすい危険もあるのです。努めてからだを動かしましょう。
  3. 禁煙
    喫煙によるニコチンや一酸化炭素は、粥状硬化症の進展に拍車をかけますから、たとえ血圧を下げておいても、心筋梗塞をおこす危険があります。またすでに冠状動脈硬化がおこっている場合は、タバコを吸って遊離脂肪酸をふやしただけで心筋梗塞が発生します。
  4. 肥満に注意
    太りすぎは巷苅物ていると降圧薬が効きにく〈ストレスを飼いならすそれだけ大量の薬を使う必要が出てきます。また肥満すると、血清のコレステロールや中性脂肪がふ、え、糖尿病も発生しやすくなります。これらは粥状硬化症の進展に拍車をかけるもとです。さらに肥満体の血圧は不慮に上昇しやすいというぐあいに、まったく悪いことずくめです。
  5. ストレスに注意
    人は社社会生活をしている以上、ストレスを避けて通るわけにはいきません。ストレスを受ければ、血圧はいつになく上昇するし、コレステロールもふえます。要は、ストレス解消法を身につけ、一刻も早く自己のペースをとり戻すことです。こうすれば、血圧を上がりっばなしにしないですむのです。
  6. 血圧を揺さぶらない
    特に脳や心臓に動脈硬化症を併発している場合は、血圧が不意に上がると、脳卒中や心筋梗塞をおこす危険が大きいのです。これは、ふだんの行状が大きく関係してきます。過労、寝不足、不摂生など、心あたりのある人は、重々注意してください。

食事のタブー

高血圧を正しく治療するうえで、食事は非常に重要な意味をもっています。その理由の第一は、私たち日本人が食塩をとりすぎる食習慣にあり、これをなんとかしないことには高血圧の害に拍車をかけるということです。

第二の理由は、高血圧の場合、栄養よすぎると心筋梗塞をおこし、また逆に栄養が悪いと脳卒中がおこるというぐあいに、栄養のバランスが実にむずかしく、その人の病状に応じて工夫する必要があるのです。次に示したのは、うっかりまちがいやすい食べ方です。思いあたるふしがあったら、すぐにでも改善します。

空腹が満たされればOK

栄養をとるという意味と満腹するという意味は別問題です。好物ばかりを食べて空腹を満たしたとしても、これは単に熱量が補給されたというだけで、からだの構成や代謝に必要な栄養成分がバランスよくとれたということにはなりません。

辛いものは避ける

からくない料理にも、食塩が隠れて入っていることがあります。また、みそ汁やうどんのかけ汁がからいからといって、お湯を足してうすめればよいというものではありません。全部飲みほしてしまえば、塩分量は結局同じことなのです。

バターや卵や有害

バターや卵、獣肉をたくさんとりすぎる欧米では、バターをマーガリンにかえ、獣肉を鶏肉で代用することがすすめられても当然ですが、これはバターや獣肉が健康に有害だという意味ではありません。要はとりすぎが悪いのですから、ふだんバターや卵をほとんど食べていない人までが、これを敬遠する理由はどこにもありません。

田舎料理をバカにする

動物性脂肪をとりすぎてもいないのに血液中のコレステロールがふえている人は、食物繊維の不足に原因があります。「イモの煮物はいなか料理」などとバカにしてはいけません。血圧が高い人は食物繊維を摂ることを習慣化しなければなりません。

ため食い

「朝食抜き、夕食ため食い」をすると、太ります。また動物性脂肪をまとめて食べたあとは、血液が血管の中でかたまりやすく、動脈硬化が進んでいると、脳血栓や心筋梗塞の危険があります。

他人のでまかせを信用してしまう

現状では、効果が確実で副作用の少ない降圧薬がいっぱいあります。クコや紅茶キノコ、柿の葉ジュースなどといった民間薬にとびつく必要はないのです。まず医師を信頼してください。

1日2回以上外食する

これでは食塩のとりすぎと野菜不足は必定です。おなかいっぱいになっても、栄養のバランスがくずれては、病気は増悪するいっぼうです。特に食塩過多は高血圧を悪くするばかりです。

1日2杯以上味噌汁(スープなども含む)を飲む

汁物は、食塩がたっぶり入っているわりに塩からさを感じさせません。和食好きの外食党は、うっかりすると1日3杯も飲む人がいます。せいぜい1日1杯までにします。

どんなものにもしょうゆ、ウスターソースをかける

料理の風味を、しょうゆやウスターソースで消すことはないでしょう。これでは文明人の面よごしで、塩食い人種と呼ばれてもしかたがありませんしょうゆは割り醤油がおすすめです。

外食

外食について最低限の知識

外食ばかりしていると、からだによくない」というイメージが定着してしまっている人も多いです。しかしこれは、外食自体がからだに有害な食事だというわけではなくて、限られた食品だけで空腹感を満たすという、きわめて栄養のバランスが悪いところに問題があるのです。

なぜそうなるのかは値段とのかかわりです。栄養のバランスを目的とするなら、あれやこれや種類を多く注文しなければなりません。しかし外食は手間賃がプラスされていますから、たかが湯豆腐や野菜サラダだけと思っても、値段がびっくりするほど高いものです。

客の側からは、財布とのからみで、自分の好みを選ぶわけですから、限度があります。これでは栄養のバランスがくずれても当然です。たとえば、ラーメン、そば、うどんをはじめ、カレーライス、ピラフ、スパゲッティ、シュウマイ、ギョーザなどは、糖質過多でたんばく質の欠乏はNGという意味ではありません。卵を加えて月見うどんとしたり、また具の多い鍋焼きうどんや五目そばを選ぶなり、あとで牛乳とくだものを買って補ったり、いろいろ手段はあるわけです。

近ごろのレストランでは、昼食に定食を提供しているところがあります。焼き魚、魚フライ、レバーのニラいため、八宝菜などをご飯と組み合わせた外食は、たんばく質を補給する意味では好ましいのですが、ミネラルやビタミン不足になることは必定です。特に定食にみそ汁がついているとなると、家庭と外とで1日に2杯も飲むことになってしまい、これでは塩づけです。天どんやカツどんなどのどんぶり物は、たんばく質を補強しているとはい、え、こってりした味を生かすために食塩がたっぶり使われているうえに、野菜不足はいかんともなし得ません。

外食はこうやってバランスを取る

メニュー

デメリット

改善策
かけそば・かけうどん
  • 糖質過多・たんぱく質不足
  • 食塩過多
  • ビタミン・ミネラル不足
  • 卵をトッピングして月見にする
  • 汁を残す
  • 食後に牛乳・果物を追加する
どんぶりもの
  • 糖質過多
  • 塩分過多
  • ビタミン・ミネラル不足
  • 食後に果物を食べる
寿司
  • 塩分過多
  • ビタミン・ミネラル不足
  • シャリを残す
  • 果物を補う
パスタ・ピラフ
  • 糖質過多
  • ビタミン・ミネラル不足
  • 牛乳、果物を補う
定食
  • 塩分過多
  • 味噌汁、漬け物は残す
  • 茶碗蒸しや酢の物に変えられればベスト


外食は1日1回が基本

外食の特徴は、食塩が多すぎることと、栄養のアンバランスにあるのです。ということは、高血圧の人が外食をとるときは、1日に1回だけとし、他の2食は家庭食でバランスの狂いを是正するのが良策といえましょう。

合併症の食事の注意

日ごろ血圧の高い人が治療を受ける場合、診察や検査の結果、同じ高血圧の人でも、ある人は糖尿病を合併していたり、またある人は血清総コレステロール値が高かったり、血清尿酸値が高めだったりというぐあいに、血圧以外にも脳卒中や心筋梗塞に関連する異常所見をもっている場合が少なからずあります。
こういった場合、血圧を下げるために食塩を1日7gにおさえるというのは共通したことですが、そのほかに、どういう点に注意を向けなければいけないのかという概要をまとめています。

糖尿病

まず痩せる

たとえ血圧が薬で下がっているにせよ、糖尿病があると、血圧値の異常が軽度であっても血管はどんどん傷めつけられ、いずれ脳卒中や心筋梗塞に見舞われます。
ところで糖尿病の治療には優れた薬がたくさんありますが、これらを長く使っていると、かえって心筋梗塞をおこしやすくなるという調査もあります。
またある種の薬は、血糖を下げるには効果があるけれど、血管系の事故をおこしやすいという理由で、今は使われなくなったものがいくつもあるのです。一般に、糖尿病の人は太っていることが多いのですが、こういう場合は、糖尿病の薬を使うことよりも、まず肥満を是正するのが正しい治療法です。
肥満しているとインスリンの働きがうまくいかず、これをカバーするすいそうために過剰のインスリンが膵臓からう分泌されますが、これが附状硬化を促進するはめとなるのです。
やせるためには、標準体重と労働量を考慮に入れて、必要最低量の食事をとることです。同時に運動をすると、糖代謝が盛んになり、効果的です。

高血圧の治療に使われる降圧薬のなかに利尿薬がありますが、これは体内のカリウムを減らす副作用をもっています。もしカリウムが減ってしまうと、今まで血糖値が正常であった人でも糖尿病になることがわかっているくらいですから、すでに糖尿病にかかっている人は、たっぶりカリウムを食事で補っていかねばなりません。そのためにはカリウムの多い野菜やくだものをしっかりとっていただきたいのです。ただし、甘いくだものは、存外と熱量も多〈、これが肥満につながるので注意しなければなりません。この点は葉菜類はカリウムが多い反面、熱量はほとんどありませんので、好適な食べ物です。さらに葉菜類は食物繊維をたっぶり含んでいますから、同じ食事をしたところで、血糖値の急激な上昇は防げます。

コレステロール・中性脂肪が多い

太っている人は痩せる

太ると体内のコレステロール生産が増え、ますますコレステロールはふえます。また、ある程度の脂肪をとっている人たちは、太ると例外なく中性脂肪がふえてきます。肥満は降庄薬の必要量もふやしますが、降圧薬の量がふえると、長い間には副作用が出てこないともかぎりません。余分な熱量のとりすぎは、控えます。

脂肪の摂りすぎに注意

現代人の場合、脂肪のとりすぎだけが高脂質血症の理由とはいえません。しかし、日ごろおつき合いが多く、特にホテルでのフルコースを毎週食べているような人は、アメリカ人と同じ脂肪のとりすぎが原因となっています。ここは上手に残す工夫をしてほしいものです。丸めたバターも、デザートのアイスクリームも、ほどほどにしましょう。

食物繊維を十分に摂る

コレステロールが多い人のほとんこの副作用が特に出やすいのです。

アルコールを控える

酒飲みが痛風にかかりやすいというわけではありませんが、日ごろぜいたくな食事をしている人にとっては、アルコールが血清尿酸値を上げる原因となります。昔は白ワインなら安全だとか、蒸留酒ならその害がないとかいわれましたが、これはまちがいで、アルコール類なら、どんなタイプのものでも作用は同じです。アルコールの代わりに湯茶を多めにとって尿量をふやすことは、尿酸値をふやさないコツでもあります。糖尿病の人なら血糖が急上昇しない沖縄の泡盛がおすすめです。

尿酸が多い人

まずダイエット

尿酸がふえすぎると痛風という病気にかかりますが、痛風にかかっていない人でも、血清中の尿酸がふえると心筋梗塞にかかりやすくなることが知られています。そしてぐあいの悪いことに、利尿降圧薬が尿酸をふやす副作用をもっており、日ごろ太っている人では、この副作用が特に出やすいのです。

アルコールを控える

酒飲みが痛風にかかりやすいというわけではありませんが、日ごろぜいたくな食事をしている人にとっては、アルコールが血清尿酸値を上げる原因となります。昔は白ワインなら安全だとか、蒸留酒ならその害がないとかいわれましたが、これはまちがいで、アルコール類なら、どんなタイプのものでも作用は同じです。アルコールの代わりに湯茶を多めにとって尿量をふやすことは、尿酸値をふやさないコツでもあります。

動物性食品を芋類などにかえる

尿酸がプリン体を材料として作られるというところから、昔はプリン体含有量の多い食品(肉エキス、臓物など) をひかえるべきだと考、えられていたのですが、実はこのプリン体は、体内の糖質からも脂肪からも作られるのです。ここはむしろ、動物性食品を穀類や芋類といった植物性食品で置きかえることに重点をおいたほうが賢明です。

どうしてもダメなら薬を使う

高血圧治療のベースとして使われる利尿降庄薬は、血清尿酸値を上げる副作用をもっているのですが、食生活が今ほど豊かでなかった時代には、この副作用はほとんど出なかったのです。しかし昔の質素な食生活に戻れというのではありません。カロリーと動物性食品を制限してみて、それでもうまくいかない場合は、体内で尿酸が合成されにくくなる薬や、体内の尿酸が排泄されやすくなる薬を使えばよいのです。痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬についてはこちら。

心電図に異常がある

カリウムをしっかり摂る

高血圧の人にとって重要な心電図変化は、左心室肥大と心筋虚血の所見です。いずれも高血圧を長い間ほうっておいた証拠ですが、このままだと、心筋梗塞をおこす危険があると同時に、脳卒中をおこす確率も大きいのです。こういう人は、カリウムを積極的にとるように心がけてください。
高血圧の食事療法の第一が食塩の制限であり、カリウムはその補助手段としてたいせつです。ところが心筋梗塞の予防という意味では、カリウムの補給は、補助手段どころか積極的手段であるのです。これは、心筋内のカリウムが少ないと心筋の抵抗力が減り、酸素不足にさらされたとき、いとも簡単に梗塞をおこしてしまうからです。

アメリカの宇宙基地では、宇宙飛行士たちにオレンジジュースを欠かさず補給していますが、これは、宇宙船の中でのストレスに、心筋が十分耐えられるようにとの配慮なのです。実際にオレンジジュース200mlの中には0.4gといケ大量のカリウムが含まれています。
もちろんオレンジジュースだけがカリウムの多い食べ物ではありません。新鮮な野菜やくだものは、特にカリウム・ ナトリウム比が大きいのですから、積極的にとるようにおすすめします。

動物性脂肪を一気に大量に食べない

動物性脂肪は血液の凝固性を高める働きをもっています。いくら1日に必要なだけの脂肪だからといって、1回の食事だけに集中してとると、血栓症をおこす危険があります。

眼底に異常がある人

動物性食品をしっかりとる

同じ高血圧の場合でも、日本人は脳卒中にかかりやすく、欧米人は心筋梗塞にかかりやすいのですが、この違いは人種差というより、むしろ動物性食品のとり方に問題があるのです。
つまり獣肉や乳製品をとりすぎると冠状動脈硬化が進んで心筋梗塞になりますが、芋類や穀類といった糖質に偏った食生活をしていると、脳の細動脈が傷ついて脳卒中をおこすのです。
眼底に見る動脈は細動脈そのもので、しかも脳動脈に近い部位にありますから、眼底の動脈に異常があるということは、脳細動脈にも同じような異常があると考えてよいのです。ところで高血圧の正しい治療をしていると、眼底所見はある程度よくなってくることがわかっています。
この正しい治療とは、単に血圧を下げるだけでなく、栄養不足を改善させたり、乳製品をしっかりとったりすることです。特別な理由がないかぎり、牛乳は1日1本、卵は1日1個とることを心がけてください。もちろんバターを料理に上手に使うこともたいせつです。

食塩制限

脳動脈が傷んでいると、急激な血圧上昇に耐えきれなくなって、思わぬ事故がおこります。この不慮の血圧上昇は、細動脈の突然の収縮でおこりますが、細動脈の収縮をおこす引き金は交感神経の緊張です。
特に細動脈壁内の食塩含有量が多いと、交感神経のちょっとした緊張で、いとも簡単に細動脈は反応するのです。つまり、脳卒中予防という点からは、ふだん食塩のとりすぎを厳守し、細動脈壁内の食塩含有量をぜひとも減らしておく必要があるのです。眼底所見が進んでいる場合は、たとえ降庄薬でふだんリラックスしているときの血圧が下がっているからといって、安心しきってはいけないのです。1日7gを目標に、厳重に食塩制限を守ることが脳卒中予防のコツです。

尿に異常がある人

香辛料を控える

一般に尿検査というと、高血圧に関してはたんばく、糖、沈渣をしらべるわけですが、ここでは、尿たんばくが(+)だったり、尿沈渣で赤血球が出ている場合にしぼります。
もちろんこういった尿所見があったからといって、いきなり腎臓の病気と決めつけるわけにはいきません。膀胱の病気でも、尿路結石症でも同じような尿異常がおこります。こうした腎組織以外の病気のときは、その病気にかなった治療を受ければよいのですが、いろいろしらべてみて、これが腎臓自体の病気であるとわかった場合には、その原因は2つあります。1つは高血圧のために腎臓の細動脈が傷ついて腎臓が障害を受けたタイプであり、もう1つは、元来、腎臓に病気があってその結果血圧が上がっているというタイプです。いずれにせよ、腎臓が原因でたんばくや赤血球が尿に出ているときは、腎臓を刺激することは禁物です。この意味で、腎臓を刺激する香辛料はとりすぎないように留意する必要があります。しかし、腎臓の機能そのものが障害されていないのなら、食事でのたんばく質やカリウムまで制限する必要はありません。
高血圧による腎臓の細動脈病変は、脳の細動脈病変と似て、栄養が悪いとどんどん進みます。ですから今まで粗食だった人は、動物性食品をしっかりとり、高血圧に対して腎臓の細動脈の抵抗を高める必要があります。

食塩を正しく制限する

食塩は多くとればとるだけ、腎臓の細動脈に負担をかけます。この時点で悪い食習慣を是正しておかないと、いずれ腎臓が広い範囲に障害をおこし、結局は腎機能不全という最悪の状態に追い込むことになります。こうなると、もう食事療法だけではどうにもならなくなります。

腎機能に障害がある

良質のたんぱく質を摂る

元来、食物中のたんばく質とからだを構成しているたんばく質とは、アミノ酸構成が違っており、考えなしにたんばく質をとると、足りないアミノ酸もあれば、余分なアミノ酸もあるということになります。腎臓の機能が健全なら、不必要なアミノ酸は、尿素その他の窒素成分として尿中に排泄されますが、機能に障害があると、排泄不十分のため、体内に不要の窒素成分がたまりすぎ、危険状態を招きます。したがって、腎機能に障害がある場合は、アミノ酸の過不足がないように食事に気をつかうことがたいせつです。
特に米やパンに含まれるたんばく質は、アミノ酸構成がからだのたんばく質とはかなり違っており、不必要な窒素成分が体内に停滞する結果となります。食べすぎないようにしてください。
体内で過不足なく利用できるたんばく質は、卵白と牛乳です。卵白なら、体重60kgの人でも25gとれば十分です。

カリウムの制限

腎臓の機能が悪いと、カリウムの排泄がうまくいかなくなりますが、カリウムは体内にたまった窒素成分と相まって尿毒症の原因となります。カリウムは野菜に多いので、野菜を食べるときは、細かく切って十分に水洗いするか、よく煮て、カリウムが少なくなった状態でとる必要があります。野菜を食べるときは、細かく切って十分に水洗いするか、よく煮て、カリウムが少なくなった状態でとる必要があります。
血圧が高い場合には、カリウムを十分に摂るとナトリウムが排泄されて血圧が下がりますが腎機能が低下している場合、カリウムを摂りすぎると心臓麻痺を起こすことになるので十分注意します。腎臓が悪くなっており、タンパク尿や血尿がでていてもクレアチニンやBUNなどの数値が正常であれば腎機能は正常です。カリウムはしっかり摂るようにします。