実験結果から8時間後も安定して血圧の正常を維持
「酢は体にいい」というイメージを持つ人は多いと思います。よく聞くのは、「血圧を下げる」「内臓脂肪を減らす」などの健康効果です。実際、2001年には、食酢に含まれる酢酸(さくさん)に、血圧の上昇を抑制する作用があることが報告されています。
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食酢のメカニズムは、アンジオテンシンⅡという生理活性物質の働きを抑えるというものです。アンジオテンシンⅡは血管を収縮させるため、過剰になると血圧が上がり、動脈硬化を誘発します。酢酸には、アンジオテンシンⅡの働きを抑制し、血圧の上昇を防ぐ作用があるのです。
では、こうした作用を持つのは、酢の成分のなかで、酢酸だけなのでしょうか。今から約10数年前、3種の食酢を使って実験がおこなわれています。
食酢の降圧効果を立証するための実験
実験内容は、穀物酢・リンゴ酢・純米酢から酢酸を除去して粉末にし、それぞれのACE阻害活性を測定するというものです。
『穀物酢>純米酢>リンゴ酢』の順番で、いずれも酢酸より強いACE阻害活性があることがわかりました。
つまり、これら3種の酢には、酢酸以外にも、アンジオテンシンⅡの働きを阻害する物質が、相当量含まれていることがわかりました。
さらに、最もACE阻害活性の強かった穀物酢で、動物実験も行いました。高血圧を自然に発症するラットを、次の3つに分け、2時間ごとに血圧を測定しました。
- 水だけを飲む群
- 降圧剤を飲む群
- 酢酸を除去した穀物酢の粉末を飲む群
その結果、水を飲んだ群は血圧が高いままでしたが、降圧剤を飲んだ群と、穀物酢を飲んだ群は、2時間後および4時間後に血圧が有意に低下しました。そして、6時間後、8時間後には、降圧剤を飲んだラットの血圧が徐々に上がってきたのに対し、穀物酢を飲んだラットの血圧は低いままでした。これは、降圧剤よりも、血圧降下作用が持続するということです。
酢の刺激が苦手なら加熟して酸味を和らげる
加えて、酢を加熱することによって起こる変化についても調べました。結果は、穀物酢と純米酢では、加熱することでACE阻害活性が若干高まりました。一方、リンゴ酢では、加熱するとAC E阻害活性は低下しました。
以上の実験結果からいえるのは、まず、酢には、酢酸以外にも血圧の上昇を抑える成分が含まれているということです。成分の特定には至っていませんが、グルタミンとプロリンが多く含まれるペプチドであると予想されます。
そして、3種の酢のうち、血圧の上昇を抑制する作用が最も強いのは、穀物酢だということです。実験で使った穀物酢の原材料は、小麦・酒かす・米・コーン・アルコールでした。もちろん、酢に含まれる酢酸にも降庄作用があります。ただし、酢酸は揮発性なので、加熱すると飛んでしまいますから、酢酸の健康効果を100%享受したければ、加熱せずに摂取するのが理想です。
とはいえ、家庭で調理する場合、酢酸がすべて飛んでしまうことはないでしょう。また、前述したように、加熱しても酢酸以外の降圧成分は残り、若干ですが、活性が高まります。
結局のところ、酢で血圧降下作用を得たければ、毎日とりやすい方法で摂取するのがいちばんです。
酢のツンとした刺激が苦手な人は、煮物や炒め物に加えて加熱し、酸味を和らげるといいでしょう。それでも健康効果は得られるのでご安心ください。
なお、血圧が高い人は、塩分を控えるよう指導されている人も多いでしょう。酢を使うと、味の物足りなさを補うことができ、自然と減塩できます。そうした意味からも、日々の食生活に酢を上手に取り入れていただけたらと思います。