合併症の食事の注意

日ごろ血圧の高い人が治療を受ける場合、診察や検査の結果、同じ高血圧の人でも、ある人は糖尿病を合併していたり、またある人は血清総コレステロール値が高かったり、血清尿酸値が高めだったりというぐあいに、血圧以外にも脳卒中や心筋梗塞に関連する異常所見をもっている場合が少なからずあります。
こういった場合、血圧を下げるために食塩を1日7gにおさえるというのは共通したことですが、そのほかに、どういう点に注意を向けなければいけないのかという概要をまとめています。

糖尿病

まず痩せる

たとえ血圧が薬で下がっているにせよ、糖尿病があると、血圧値の異常が軽度であっても血管はどんどん傷めつけられ、いずれ脳卒中や心筋梗塞に見舞われます。
ところで糖尿病の治療には優れた薬がたくさんありますが、これらを長く使っていると、かえって心筋梗塞をおこしやすくなるという調査もあります。
またある種の薬は、血糖を下げるには効果があるけれど、血管系の事故をおこしやすいという理由で、今は使われなくなったものがいくつもあるのです。一般に、糖尿病の人は太っていることが多いのですが、こういう場合は、糖尿病の薬を使うことよりも、まず肥満を是正するのが正しい治療法です。
肥満しているとインスリンの働きがうまくいかず、これをカバーするすいそうために過剰のインスリンが膵臓からう分泌されますが、これが附状硬化を促進するはめとなるのです。
やせるためには、標準体重と労働量を考慮に入れて、必要最低量の食事をとることです。同時に運動をすると、糖代謝が盛んになり、効果的です。

高血圧の治療に使われる降圧薬のなかに利尿薬がありますが、これは体内のカリウムを減らす副作用をもっています。もしカリウムが減ってしまうと、今まで血糖値が正常であった人でも糖尿病になることがわかっているくらいですから、すでに糖尿病にかかっている人は、たっぶりカリウムを食事で補っていかねばなりません。そのためにはカリウムの多い野菜やくだものをしっかりとっていただきたいのです。ただし、甘いくだものは、存外と熱量も多〈、これが肥満につながるので注意しなければなりません。この点は葉菜類はカリウムが多い反面、熱量はほとんどありませんので、好適な食べ物です。さらに葉菜類は食物繊維をたっぶり含んでいますから、同じ食事をしたところで、血糖値の急激な上昇は防げます。

コレステロール・中性脂肪が多い

太っている人は痩せる

太ると体内のコレステロール生産が増え、ますますコレステロールはふえます。また、ある程度の脂肪をとっている人たちは、太ると例外なく中性脂肪がふえてきます。肥満は降庄薬の必要量もふやしますが、降圧薬の量がふえると、長い間には副作用が出てこないともかぎりません。余分な熱量のとりすぎは、控えます。

脂肪の摂りすぎに注意

現代人の場合、脂肪のとりすぎだけが高脂質血症の理由とはいえません。しかし、日ごろおつき合いが多く、特にホテルでのフルコースを毎週食べているような人は、アメリカ人と同じ脂肪のとりすぎが原因となっています。ここは上手に残す工夫をしてほしいものです。丸めたバターも、デザートのアイスクリームも、ほどほどにしましょう。

食物繊維を十分に摂る

コレステロールが多い人のほとんこの副作用が特に出やすいのです。

アルコールを控える

酒飲みが痛風にかかりやすいというわけではありませんが、日ごろぜいたくな食事をしている人にとっては、アルコールが血清尿酸値を上げる原因となります。昔は白ワインなら安全だとか、蒸留酒ならその害がないとかいわれましたが、これはまちがいで、アルコール類なら、どんなタイプのものでも作用は同じです。アルコールの代わりに湯茶を多めにとって尿量をふやすことは、尿酸値をふやさないコツでもあります。糖尿病の人なら血糖が急上昇しない沖縄の泡盛がおすすめです。

尿酸が多い人

まずダイエット

尿酸がふえすぎると痛風という病気にかかりますが、痛風にかかっていない人でも、血清中の尿酸がふえると心筋梗塞にかかりやすくなることが知られています。そしてぐあいの悪いことに、利尿降圧薬が尿酸をふやす副作用をもっており、日ごろ太っている人では、この副作用が特に出やすいのです。

アルコールを控える

酒飲みが痛風にかかりやすいというわけではありませんが、日ごろぜいたくな食事をしている人にとっては、アルコールが血清尿酸値を上げる原因となります。昔は白ワインなら安全だとか、蒸留酒ならその害がないとかいわれましたが、これはまちがいで、アルコール類なら、どんなタイプのものでも作用は同じです。アルコールの代わりに湯茶を多めにとって尿量をふやすことは、尿酸値をふやさないコツでもあります。

動物性食品を芋類などにかえる

尿酸がプリン体を材料として作られるというところから、昔はプリン体含有量の多い食品(肉エキス、臓物など) をひかえるべきだと考、えられていたのですが、実はこのプリン体は、体内の糖質からも脂肪からも作られるのです。ここはむしろ、動物性食品を穀類や芋類といった植物性食品で置きかえることに重点をおいたほうが賢明です。

どうしてもダメなら薬を使う

高血圧治療のベースとして使われる利尿降庄薬は、血清尿酸値を上げる副作用をもっているのですが、食生活が今ほど豊かでなかった時代には、この副作用はほとんど出なかったのです。しかし昔の質素な食生活に戻れというのではありません。カロリーと動物性食品を制限してみて、それでもうまくいかない場合は、体内で尿酸が合成されにくくなる薬や、体内の尿酸が排泄されやすくなる薬を使えばよいのです。痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬についてはこちら。

心電図に異常がある

カリウムをしっかり摂る

高血圧の人にとって重要な心電図変化は、左心室肥大と心筋虚血の所見です。いずれも高血圧を長い間ほうっておいた証拠ですが、このままだと、心筋梗塞をおこす危険があると同時に、脳卒中をおこす確率も大きいのです。こういう人は、カリウムを積極的にとるように心がけてください。
高血圧の食事療法の第一が食塩の制限であり、カリウムはその補助手段としてたいせつです。ところが心筋梗塞の予防という意味では、カリウムの補給は、補助手段どころか積極的手段であるのです。これは、心筋内のカリウムが少ないと心筋の抵抗力が減り、酸素不足にさらされたとき、いとも簡単に梗塞をおこしてしまうからです。

アメリカの宇宙基地では、宇宙飛行士たちにオレンジジュースを欠かさず補給していますが、これは、宇宙船の中でのストレスに、心筋が十分耐えられるようにとの配慮なのです。実際にオレンジジュース200mlの中には0.4gといケ大量のカリウムが含まれています。
もちろんオレンジジュースだけがカリウムの多い食べ物ではありません。新鮮な野菜やくだものは、特にカリウム・ ナトリウム比が大きいのですから、積極的にとるようにおすすめします。

動物性脂肪を一気に大量に食べない

動物性脂肪は血液の凝固性を高める働きをもっています。いくら1日に必要なだけの脂肪だからといって、1回の食事だけに集中してとると、血栓症をおこす危険があります。

眼底に異常がある人

動物性食品をしっかりとる

同じ高血圧の場合でも、日本人は脳卒中にかかりやすく、欧米人は心筋梗塞にかかりやすいのですが、この違いは人種差というより、むしろ動物性食品のとり方に問題があるのです。
つまり獣肉や乳製品をとりすぎると冠状動脈硬化が進んで心筋梗塞になりますが、芋類や穀類といった糖質に偏った食生活をしていると、脳の細動脈が傷ついて脳卒中をおこすのです。
眼底に見る動脈は細動脈そのもので、しかも脳動脈に近い部位にありますから、眼底の動脈に異常があるということは、脳細動脈にも同じような異常があると考えてよいのです。ところで高血圧の正しい治療をしていると、眼底所見はある程度よくなってくることがわかっています。
この正しい治療とは、単に血圧を下げるだけでなく、栄養不足を改善させたり、乳製品をしっかりとったりすることです。特別な理由がないかぎり、牛乳は1日1本、卵は1日1個とることを心がけてください。もちろんバターを料理に上手に使うこともたいせつです。

食塩制限

脳動脈が傷んでいると、急激な血圧上昇に耐えきれなくなって、思わぬ事故がおこります。この不慮の血圧上昇は、細動脈の突然の収縮でおこりますが、細動脈の収縮をおこす引き金は交感神経の緊張です。
特に細動脈壁内の食塩含有量が多いと、交感神経のちょっとした緊張で、いとも簡単に細動脈は反応するのです。つまり、脳卒中予防という点からは、ふだん食塩のとりすぎを厳守し、細動脈壁内の食塩含有量をぜひとも減らしておく必要があるのです。眼底所見が進んでいる場合は、たとえ降庄薬でふだんリラックスしているときの血圧が下がっているからといって、安心しきってはいけないのです。1日7gを目標に、厳重に食塩制限を守ることが脳卒中予防のコツです。

尿に異常がある人

香辛料を控える

一般に尿検査というと、高血圧に関してはたんばく、糖、沈渣をしらべるわけですが、ここでは、尿たんばくが(+)だったり、尿沈渣で赤血球が出ている場合にしぼります。
もちろんこういった尿所見があったからといって、いきなり腎臓の病気と決めつけるわけにはいきません。膀胱の病気でも、尿路結石症でも同じような尿異常がおこります。こうした腎組織以外の病気のときは、その病気にかなった治療を受ければよいのですが、いろいろしらべてみて、これが腎臓自体の病気であるとわかった場合には、その原因は2つあります。1つは高血圧のために腎臓の細動脈が傷ついて腎臓が障害を受けたタイプであり、もう1つは、元来、腎臓に病気があってその結果血圧が上がっているというタイプです。いずれにせよ、腎臓が原因でたんばくや赤血球が尿に出ているときは、腎臓を刺激することは禁物です。この意味で、腎臓を刺激する香辛料はとりすぎないように留意する必要があります。しかし、腎臓の機能そのものが障害されていないのなら、食事でのたんばく質やカリウムまで制限する必要はありません。
高血圧による腎臓の細動脈病変は、脳の細動脈病変と似て、栄養が悪いとどんどん進みます。ですから今まで粗食だった人は、動物性食品をしっかりとり、高血圧に対して腎臓の細動脈の抵抗を高める必要があります。

食塩を正しく制限する

食塩は多くとればとるだけ、腎臓の細動脈に負担をかけます。この時点で悪い食習慣を是正しておかないと、いずれ腎臓が広い範囲に障害をおこし、結局は腎機能不全という最悪の状態に追い込むことになります。こうなると、もう食事療法だけではどうにもならなくなります。

腎機能に障害がある

良質のたんぱく質を摂る

元来、食物中のたんばく質とからだを構成しているたんばく質とは、アミノ酸構成が違っており、考えなしにたんばく質をとると、足りないアミノ酸もあれば、余分なアミノ酸もあるということになります。腎臓の機能が健全なら、不必要なアミノ酸は、尿素その他の窒素成分として尿中に排泄されますが、機能に障害があると、排泄不十分のため、体内に不要の窒素成分がたまりすぎ、危険状態を招きます。したがって、腎機能に障害がある場合は、アミノ酸の過不足がないように食事に気をつかうことがたいせつです。
特に米やパンに含まれるたんばく質は、アミノ酸構成がからだのたんばく質とはかなり違っており、不必要な窒素成分が体内に停滞する結果となります。食べすぎないようにしてください。
体内で過不足なく利用できるたんばく質は、卵白と牛乳です。卵白なら、体重60kgの人でも25gとれば十分です。

カリウムの制限

腎臓の機能が悪いと、カリウムの排泄がうまくいかなくなりますが、カリウムは体内にたまった窒素成分と相まって尿毒症の原因となります。カリウムは野菜に多いので、野菜を食べるときは、細かく切って十分に水洗いするか、よく煮て、カリウムが少なくなった状態でとる必要があります。野菜を食べるときは、細かく切って十分に水洗いするか、よく煮て、カリウムが少なくなった状態でとる必要があります。
血圧が高い場合には、カリウムを十分に摂るとナトリウムが排泄されて血圧が下がりますが腎機能が低下している場合、カリウムを摂りすぎると心臓麻痺を起こすことになるので十分注意します。腎臓が悪くなっており、タンパク尿や血尿がでていてもクレアチニンやBUNなどの数値が正常であれば腎機能は正常です。カリウムはしっかり摂るようにします。

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