減塩に成功した秋田県の実例
秋田県というと、全国で1、2を争う高血圧、脳卒中の多発県であり、その背景に習慣的な食塩の過剰摂取があったことは有名です。
ところでこの汚名を挽回するために、秋田県ではかつて、徹底的な減塩キャンペーンがすすめられ、効果をあげました。このための具体的な方策の1つとして「牛乳を食べましょう」というスローガンがかかげられています。
日本人の塩のとりすぎは、ご飯に塩からいおかずが原因です。つまり、米のご飯にみそ汁、つけ物、そのうえにタラコ、スジコが添えられると、ご飯と塩からいものとの相性がよいばっかりに、つい「もう1杯」と、おかわりをしてしまいます。ある調査によれば、ご飯が1杯、増えると、塩分の摂取量は5gも、増えてしまうそうです。このように、熱量の大半をご飯でまかなう食生活では、食塩過多はどうしてもつきものの現象だったのです。
そこで牛乳を飲むだけではなく、料理にも利用しようと働きかけたわけですが、これは栄養のバランスがとれるというだけではなく、食塩のとりすぎも是正され、まさに一石二鳥なのです。
牛乳のメリット
牛乳や乳製品をたくさんとっている地区では、脳出血の発生や胃がんの死亡率が少ないということが、ずいぶん前に日本で調査ずみですが、牛乳・乳製品のとり方と食塩のとり方と対比してみると、互いに逆の関係になっているのです。
つまり、牛乳や乳製品をたくさんとっている地区では、食塩のとり方が少ないということなのです。ただここで、同じグラム数でも牛乳とバターでは熱量も脂肪量も違うのではないかという考えがおこります。
それはそのとおりですが、日本人のバターのとり方はきわめて少なく、1日平均0.9gということですから、牛乳・乳製品といっても、これは主として牛乳とみてよいでしょう。
群馬県の例
群馬県では脳卒中が全国でワーストテンに入るほど多発していたのですが、同じ群馬県にあっても、牛乳・乳製品を多くとる伊勢崎市は脳出血の発生が全国平均をかなり下回っていました。その1つの理由はこんなところにあるのかもしれません。
牛乳や乳製品というと、ついパン食を想像しがちですが、必ずしもそうではありません。牛乳がゆとしたり、ご飯にバターをのせて食べることもできます。ニラやもやしのバターいためにしても、バター本来の風味と含まれてる塩だけで上手に味がつきます。このように和風の食事に乳製品を加えると、こくが出ておいしく食べられますから、つけ物など塩からいものへの要求はなくなるわけです。