降圧剤や減塩で血圧が下がりにくいタイプの人がいる

血圧が上がる病気、腎臓関連や副腎腫瘍を疑う

血圧が高い場合、塩分のとりすぎや運動不足、肥満を解消する生活習慣の改善が欠かせません。そして、一定期間、生活習慣の改善に取り組んでも血圧が下がらないときに、血圧を下げるための降圧剤の処方を行います。

高血圧の治療に使われる薬について
https://medicine-guide.net/archives/24

ところが一定数は、降圧剤を服用しても血圧が思ったように下がらない人がいます。

こうした場合、まず考えられるのは、腎臓病・副腎腫瘍などの病気や、ほかの病気の治療のために使っている薬剤が原因の二次性高血圧です。しかし、これらの原因が見当たらないのに、血圧が下がらない方のほうが多いのが現状です。

この場合、血圧の上昇を起こしやすい「高血圧体質」がある、と考えてまず間違いありません。

高血圧体質が疑われる人は、降圧薬に頼るよりも先に、体質改善が必須です。本人の努力によって高血圧体質が改善されるにつれて、高い血圧が順調に下がり、減塩や降庄薬の服用でも改善しなかった高血圧が驚くほどよくなる方が多いのです。

5タイプに分けられる高血圧体質

  1. 血流不足体質
  2. 血液ドロドロ体質
  3. 便秘体質
  4. 不眠体質
  5. 体が硬い体質
血流不足体質

血流不足体質とは、生まれつき末梢血管への血流がよくない体質を指します。夏でも手足が冷えて悩んでいる人、血色がよくない人、イライラしがちな人は、血流不足体質を疑ったほうがいいでしょう。

血圧は心拍出量と末梢血管抵抗で決まります。冷えや過剰なストレスによって自律神経のうちの交感神経が優位に働けば、末梢血管が収縮するため、当然、末梢血管抵抗は大きくなり血圧は上昇してきます。この血流不足体質を改善することが、高血圧の治療では特に重要です。仕事ばかりでリラックスできる時間がないビジネスマンに多いタイプです。
口癖は「忙しい」「時間がない」です。

血液ドロドロ体質

液ドロドロ体質とは、血液中に悪LDLコレステロールや中性脂肪、ブドウ糖が過剰になり、動脈硬化や血栓が生じやすい状態を指します。メタボ体質といい換えてもいいかもしれません。腹部に脂肪が多い人、高中性脂肪や高悪玉コレステロールを指摘されている人は、血液ドロドロ体質を疑うべきでしょう。
血液ドロドロ体質の改善はこちらです。

便秘体質

便秘体質だと、腸内に便が長く留まるため便が異常発酵を起こし、血圧の上昇を招く有害物質が生じやすくなります。また、便秘体質の人はトイレで力まないと排便できないため、血圧が急に上昇して脳卒中の発作を招きやいという危険性もあります。食物繊維をたくさん摂って、いきまなくても排便ができるように食習慣を改善します。食習慣の改善が難しい人は、トクホのイサゴールなどを活用するのもいいでしょう。量が多いと下痢気味になってしまうので、そうなってしまったら減量すればいいでしょう。便秘薬は、腸の蠕動運動が妨げられるのでできるだけ使用を控えます。

不眠体質

ふだんから寝つきが悪い人、睡眠の途中でよく目が覚めてしまう人、熟睡感を得られない人、睡眠中に呼吸が一時的に止まる睡眠時無呼吸症候群の人に当てはまります。血圧を低く保つためには、心身の休息が欠かせません。睡眠中、私たちの体は通常、副交感神経が優位に働くため、血管が拡張して血圧が低く保たれます。
ところが、不眠体質の人は、睡眠中もストレスにさらされるせいか、血圧が高くなります。
睡眠時無呼吸症候群の注意すべき危険性はこちらです。
どうしても眠れない人は睡眠薬ではなくこちらを利用しましょう。

体が硬い人

体が硬い人も要注意です。柔軟性に乏しい体の持ち主は、筋肉や関節とともに血管も硬くなっている場合が多く、血圧が上昇しやすいのです。実際に、国立健康・栄養研究所などの調査でも、前屈が苦手な体の硬い人ほど、血圧は高くなる傾向にあり、動脈硬化が生じやすいと報告されています。

降圧薬の使い方

複数の薬を使う

もともと降圧薬治療は、長期にわたって続ける必要があります。初めは、1つの薬を少量使いますが、思うように効果があらわれない場合、1種類の薬のみ量をふやすと、長い間には副作用が出てくるおそれがあるので、量をふやすのではなく、降圧の作用が違う他の降圧薬と併用して、それぞれの使用量は少なくても、降圧効果を大きくしていくのが良策です。

このごろ、「医者は薬をたくさん使いすぎる」という批判がありますが、正しい降圧薬治療というものは、2種類以上のものを上手に組み合わせて使うじようとうのが常套手段です。この点は、学会から以下のような、おおざっぱなガイドラインが提案されていますので参考にしてください。

  1. 薬物の特徴および副作用を正しく把握し、各患者の病態にあわせて最も適するものを選択する。
  2. 第一選択薬として適する薬物は、カルシウム桔抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体桔抗薬、少量の利尿薬、β遮断薬、およびα1遮断薬である。
  3. この中の1薬を少量から投与して緩徐な降圧を図る。効果不十分な場合相加・相乗効果が期待できる薬物を併用するか、他薬に変更する。
  4. 降圧目標を達成できない場合は、高血圧専門家の意見を求める。

副作用が起きないように

降圧薬でうまく血圧が下がっているから、この薬さえのんでいればよいというわけにはいきません。というのは、効用と同時に副作用が問題になってくるのです。
この点について医師はかなり気をつかっており、血圧が期待どおりに下がっていても、頻回に問診、診療をくり返し、定期的に血液検査を行っています。

降圧薬の向き・不向き

降圧薬種類 積極的な適応 禁忌
カルシウム拮抗薬 高齢者、狭心症、脳血管障害、糖尿病 心ブロック(ジアルチアゼム)
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬 糖尿病、心不全、心筋梗塞、左室肥大、軽度の腎障害、脳血管障害、高齢者 妊娠、高カリウム血症、両側腎動脈狭窄
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬 ACE阻害薬と同様、特にせきでACE阻害薬が使用できない人 妊娠、高カリウム血症、両側腎動脈狭窄
利尿剤 高齢者、心不全 痛風、高尿酸血症
β遮断薬 心筋梗塞、狭心症、頻脈 ぜんそ く、 心 ブロック、末梢循環不全
α1遮断薬 脂質代謝異常、前立腺肥大、糖尿病 起立l封監血圧

降圧薬の種類

血圧値以外の病態にかなった処方がポイント

現在使われている降庄薬は数多くあり、それぞれ血圧を下げるしくみは千差万別です。また同一薬剤でも、何種類もの働きをもつものがあります。
これら数多い降圧薬のなかには、降圧作用が弱いものから強力なものまでいろいろありますし、心臓や腎臓機能に対する作用もまちまちです。
元来、血圧を下げる目的は、脳卒中や心筋梗塞、尿毒症の防止にあるのですから、血圧は下がったけれども腎臓機能が低下したというのでは意味がないのです。
そして原因のはっきりしない本態性高血圧の場合には、複数の因子が互いにからみ合って血圧を上げているのですから、特に心拍出量が増加している場合はこれを是正するために、また交感神経緊張が高ぶっている場合はこれを是正するために、というぐあいに、目的に合った降圧薬を使うのが理にかなっています。

ですから、同じ高血圧の人でも、その人にいちばん通している降圧薬を選ぶ必要が出てきます。これはたいへんむずかしい点で、自分の血圧が高いからといって、薬局でかってに降圧薬を買ってくるわけにはいかないのです。血圧値だけではなく、心臓や腎臓に障害があらわれていないか、眼底はどうかなど、必要な検査を含めて慎重な診察で、高血圧の特性を見きわめないかぎり、正しい降圧薬治療はできません。

どんな降圧剤があうか

医学や薬学の進歩によって、以前は数少なかった降圧薬が、今では種類も、増え、新しいものがたくさん出回ってきました。代表的な血圧を下げる薬剤はこちらです。
このうち最近は、特にβ遮断薬やα1遮断薬( いずれも交感神経抑制薬)、カルシウム括抗薬、ACE阻害薬がふえてきました。逆に中枢作用性恥刺激薬、末梢作用性交感神経抑制薬、直接血管拡張薬は、現在あまり使われていません。なお、古くからあった利尿薬は、今でも広く使われています。

  • 利尿薬
    腎臓からのナトリウム排泄を促すことで細胞外液量が減って血圧が下がる。長く使っているうちに、細胞外液量はもとに戻り、今度は末梢血管抵抗が低下することで血圧が下がる。
  • 交感神経抑制薬
    交感神経が緊張しても、心臓の活動性を増やさない(β遮断薬)、いまあは血管抵抗を増やさない(α1遮断薬)ことによって血圧の上昇を防ぐ。
    中枢神経系のa2受容体を刺激することにより塩心性交感神経活動を低下させる。
    あるいは交感神経末端からのノルエピネフリンの遊出を抑制したり、カテコラミンを減少させる。
  • 血管拡張薬
    細胞内へのカルシウム涜入を阻止することにより血管平滑筋を弛緩させる。冠状動脈だけではなく、末梢細動脈を拡張させて血圧を下げる( カルシウム桔抗薬)アンジオテンシンⅡ 産生抑制、アルドステロン分泌抑制によって、末梢血管を拡張させて血圧を下げる(ACE阻害薬)直接血管を拡張して、血管の抵抗を低下させることによって血圧を下げる

治療の原則

高血圧の治療には、降圧薬を使って積極的に血圧を下げる場合と、降圧薬は使わずに食事や暮らしの工夫だけで血圧を下げる場合とがあります。もちろん降圧薬を使う場合も、食塩制限や肥満是正、運動といった生活習慣の修正は必要です。ではどういった高血圧が薬を必要とするのかというと血圧値がある程度高く、一般療法では効果がないという判断された場合です。

臓器障害や心臓・血管病があると高リスクになる

  • 心臓
    左室肥大、狭心症、心筋梗塞の既往、心不全

  • 脳出血、脳梗塞、一過性脳虚血発作
  • 腎臓
    タンパク尿、腎障害、腎不全
  • 血管
    動脈硬化性プラーク、大動脈解離、閉塞性動脈疾患
  • 眼底
    高血圧性網膜症

危険因子や合併症により治療方針が異なる

  • 低リスクの場合
    遺伝要因がなく高血圧による臓器障害がなければ生活習慣で正す。
  • 中等リスクの場合
    降圧剤の使用
  • 高等リスクの場合
    降圧剤の使用

血圧はどこまで下げるか

高血圧の人は、若い人でもないかぎり、高血圧を指摘された時点では、大なり小なり、ある程度の血管病変を合併しているものです。
こういう場合、うかつに理想の血圧値まで降圧すると、臓器の血流が減って、機能低下をおこすはめになります。そういう意味で、降圧目標を一律に決めるわけにはいきません。
その人の年齢、臓器障害の程度、治療前の血圧値などを考慮に入れて、その人その人について決定していく必要があるのです。

理想の降圧目標

降圧目標は若年・中年者、糖尿病患者の場合は130/85mmHg未満ですが、高齢者の場合は年齢を考慮して140~160以下/ 90mHg未満です。
また臓器の側からみると、血管病変の結果、狭くなった血行路を十分に血液が流れるためには、血圧はあまり低いと困るのです。つまり血圧は、臓器血流の原動力でもあるのですから、たとえば腎臓に障害がおこっていて、血液中の尿素窒素やクレアチニン値が高くなればなるほど、降圧の目標値も高めというところでがまんせざるをえません。
しかし一方で、血圧をある程度下げると腎臓の負担がとれて、腎機能が降庄前より改善してくることも多いのです。

血圧を理想値まで下げてはいけないというルールは脳についてもいえます。脳という臓器は、100gについて、1分間に五50mmの血液を流す必要があります。
そして、脳血流を保っ血圧が必要以上に上がると、脳動脈が収縮して血液の流れすぎを防ぎ、逆に血圧が下がったときは、脳動脈が拡張して必要な血流量が減らないように、自動調節機構が働いています。

ただし、高血圧によって脳動脈に硬化がおこり、動脈の内腔が狭くなると、必要量の血流を保つためには、正常血圧の人より高めの血圧が要求されているのです。
つまり、脳卒中の既往歴をもっている人や、眼底所見が進んでいる人の血圧を下げるときは、それなりの注意を必要とします。

要するに、臓器障害があっても高血圧は是正するのが正しいのですが、降圧目標は理想の血圧値よりやや高めの点にねらいを定めるのが常識です。といって、降圧しすぎを心配するあまり、降圧目標を高めに評価しすぎては、これまた降圧薬治療の目的を達しえないという、実にむずかしい責任が医師にかかっているのです。そのほか、やっかいな問題がいくつかあるのです。その一つは、病院や診療所では、家庭にいるときより血圧が高めになるということです。

もう1つやっかいなのは、目標の血圧値まで一気に下げると、臓器の側で低めの血圧に順応する余裕がないため、かえって血圧を下げたことによる疲労感や不調感がおこる点です。したがって降圧は一気にするのではなく、数週間から2~3ヶ月かけて、徐々に下げていくことがたいせつです。

治療効果

血圧を下げれば、血管の傷み方が違う

高血圧を治療しないでほうっておく、動脈の傷つき方が早く、脳卒中や心筋梗塞にかかります。この動脈系の傷みは全身一様におこるわけではありません。
高血圧以外の因子とのからみで、傷みやすい部位はそれぞれ違っています。しかし生命をおびやかす動脈の傷みというと、脳と心臓と腎臓で、高い血圧を下げないでほうっておくとたいへんな結果になるのです。それでは、血圧を下げたらどのくらいメリットがあるのかというと、とにかく心不全、脳卒中、腎臓障害はみごとに予防されます。

欧米では、血圧を下げても心筋梗塞や急性心臓死は思ったほど減らないといっていますが、こういった病気は高血圧以外に発病を進める因子がたくさん関係していて、特に栄養過多の欧米では、血圧を下げただけでは焼け石に水のようなものですから、それは当然の話です。
この点については、「日本人に生まれてよかった」ということができましょう。というのは、現時点の日本人は、コレステロール値も血糖値も、欧米並みに達してはいないからです。つまり血圧を下げる効果は、それだけ大きい意味をもっているということです。

治療を中断すると逆効果

ところで欧米では、最小血圧が90~114mmHgという場合、治療しないていると、5年間で50%も脳や心臓の病気が発生しますが、これをきちんと治療していると、18%におさえることができるという調査がなされています。

日本人についての調査でも、きちんと治療を続けている人は、脳や心臓の事故をおこしにくくなることがわかっています。ただここで問題となるのは、かってに治療を中断してしうと、かえって脳や心臓の事故がおこりやす〈なるということです。つまり高血圧の治療が必要だと判断された場合は、長期にわたって治療を続ける必要があるという結論です。

合併症その2

高血圧+高栄養は注意

高血圧によりひきおこされる心臓病は、心筋梗塞だけではありません。急性心臓死や、狭心症、急性慢性心不全など、いろいろの心臓病があります。血圧が高いとき、こういう病気の発生が正常血圧の人の2倍以上もおこることがわかっています。
元来、心筋梗塞で代表される冠状動脈硬化症は、栄養がよすぎる欧米で高率に発生するものの、かつての日本のように栄養が悪い国ではあまり発生しません。

現時点の日本では、生活水準と生活習慣が微妙にからみ合って、同じ日本人でありながらその人の栄養状態はまちまちです。このごろ、太っている人がふえてはきましたが、動物性食品のとりすぎで太っている人は別として、穀類やイモ類のとりすぎと運動不足のために太った人の栄養は思ったほどよくないのです。たとえば地域の農山村にあっては、太っているのに血清総コレステロール値はむしろ低いというケースがまれならずみられます。

このような栄養背景におかれた日本の地域集団では、心筋梗塞の発生があまり多くないのが実態ですから、古い日本の地域調査では、心筋梗塞の疫学成績が十分そろっていませんでした。

しかし現在では、血清総コレステロール値が高いということは、高血圧と相まって心筋梗塞の危険因子として重要視されています。そして、血圧値が上がるほど、またコレステロール値がふえるほど、心筋梗塞や急性心臓死も増加することがわかっています。

その他の危険因子

さらに、血圧とコレステロールだけでなく、タバコ、左心室肥大、糖尿病、高齢という別の危険因子をもっている場合には、かなりの高率で心臓病にかかることがわかっています。
要するに、血圧がたいして高くないから自分は心筋梗塞の心配がないといばっていられたのは昔のことで、今の日本で栄養がよすぎる人は、コレステロール値も高めだし、糖尿病を合併している可能性も大きいので、血圧がたかだか140mmHg程度でも、心筋梗塞をおこす危険があるということです。

高血圧の人は、正常血圧の人より、2倍以上も心臓病にかかる率が高くなっています。つまり、それだけ心臓に負担がかかっているのです。

合併症その1

脳出血は栄養が偏っているときに起きる

脳卒中という病気は単一な疾患ではなく、いろいろな種類がありますが、代表的なものは、脳出血、脳梗塞、くも膜下出血の3つです。
脳出血は、脳の細動脈壁がもろくなって壊死に陥り、これが血管内圧に耐えかねて破裂し、脳実質内へ出血した状態です。

このタイプの脳卒中は欧米ではほとんどみられないのに、日本では現在でもけっこう発生しています。もちろん栄養が悪かった以前の日本では、「血圧が高ければ脳出血」といわれたくらいに多発していたのです。

ところで脳出血は血清総コレステロール値が低い地域に多発する特徴がみられます。また同じ地域集団でも血圧が正常なら脳出血はほとんど発生しませんが、最大血圧200mmHg以上とか、最小血圧110mmHg以上という群からは、かなり高率で脳出血がおこります。ここで重要な点は、血清総コレステロール値が160mg未満という場合、に比べて、220mg以上という群からの脳出血の発生は半分以下ということです。

これは、高血圧による細動脈・えし壊死が低栄養のときにおこりやすいということを暗示しているのです。つまり高血圧といわれたとき、血清総コレステロール値が低い人は、積極的に栄養をとらないと脳出血をおこすという意味です。

脳梗塞は栄養がよくても悪くても起きる

脳梗塞とは、脳血栓と脳塞栓とを一括した病名ですが、頻度のうえでは脳血栓が圧倒的に多いと理解してよいでしょう。

脳血栓という病気は、脳動脈の粥状硬化症、つまり動脈壁にコレステロールがたまるタイプの動脈硬化症を基盤に発生するタイプと考えられています。しかし日本では、脳の細動脈硬化症を基盤として発生するタイプがまれならずあります。日本の地域調査で、血清総コレステロール値が低い地域に脳梗塞が多発す

経過

高血圧をそのままに放置しておくと心臓や動脈に無理がかかるために、それだけ早く傷みます。血圧が高いと脳卒中や心筋梗塞にかかりやすいといわれますが、そのとおりで、脳の細動脈が壊死に陥ると脳出血がおこり、脳の細動脈硬化や脳動脈の粥状硬化が進むと脳梗塞がおこります。

また、冠状動脈の粥状硬化が進むと狭心症や心筋梗塞がおこるのです。高血圧の人の寿命をみると、血圧値が高いほど死亡率が高いし、同じ高血圧でも、眼底所見が進むほど死亡率も高くなります。

また心電図検査をして、左心室の肥大があればあるほど死亡率が高くなります。そのほか、高血圧とは特に関連がないと思われることでも、これが高血圧と複合的に重なると、高血圧の死亡率が高まることが知られています。

危険因子が多い人ほど狭心症や心筋梗塞をおこしやすい

危険因子

  • 高血圧
  • 喫煙
  • 高コレステロール血症
  • 糖尿病
  • 高齢

症状

自覚症状はあてにならない

一般に血圧が高くても、いずれ自覚症状が出てきたら治療すればよいと考えている人が多いようです。痛くもかゆくもないのですからリスクも想像できないのが当然といえば当然です。

その自覚症状とは何かというと、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、手足のしびれなどがあるようにいわれていますが、実はこういった自覚症状は、低血圧の人の訴えでもあるのです。

ここで、これら自覚症状を訴える人を血圧別にみてみると、血圧が正常の人も高い人も同じような確率という結果が出ています。したがって、高血圧に特有の自覚症状はないと考えたほうが正しいのです。

高血圧による自覚症状をあげれば、脳循環障害を合併したときに、回転性めまいやひどい物忘れがおこりがちという点です。また物が二重に見えたり(複視)、突然の下肢筋力低下も重要な脳循環障害の兆候ですが、これは、かなり脳動脈がやられた時期のもので、この段階で血圧をさげたところで効果はないし、場合によっては、血圧を下げるとさらに症状がひどくなることすらあるのです。

高血圧と診断されたら無症状も注意が必要

一般に血圧の高い人は、血圧が正常な人や低めの人と違って、人一倍活動的であり、仕事も人一倍こなす有能な存在なのです。無理もきくし、疲れも知らないという体力ももっています。

そして昨日まで元気に仕事をしていたのに、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞で倒れるという痛ましい出来事がおこるのです。これはまさに会社の倒産と似て、はたで見ている人には驚きそのものですが、

その会社も経営診断を受けていれば、倒産の予知ができたはずです。高血圧もこれと同じで、なんの自覚症状がなくても、実に相違して、からだの中では嵐のような現象がおこっているのです。血圧が高いと指摘されたら、自覚症状がなくても、たいへんなことだと理解してほしいのです。

日ごろ血圧が高いままの状態をほうっておくと、動脈がどんどん傷みます。しかし、じわじわと進んでくる高血圧症のような慢性疾患は、警告としての自覚症状を示さないのです。そして狭心症とか、一過性脳虚血発作とかがあらわれた時期は、かなり病変が進んでおり、こんな段階で高血圧の治療を始めたところで、期待したほどの効果はありません。まさに氷山が見えたときはもう遅く、海面の下には目に見えない危険がいっぱい潜んでいるのです。
高血圧の自覚症状のなかで特に重要なのは、前述した脳循環障害の症状とか、腎機能の低下による夜間排尿回数の増加、心不全の初期兆候としての労作時の息切れなどがあります。ひんみやくまた、発汗しやすいとか、頻脈発作があるとか、二次性高血圧の診断の手がかりとして重要な兆候はいっばいありますが、高血圧が中等度まで進んでも、それを教える自覚症状というものはなにもないのだということを十分に理解してほしいものです。

メモ

自覚症状から、血圧が高いかどうかはわがJ ません。あくまでも血圧をはからないかぎり、高血圧かどうか診断できません。こちらから自分の値がどこに位置するのかをしっかり知ることがとても大切です。
高血圧はじわじわと進んでくる病気で、中等度までは無症状です。狭心症や一過性脳虚血の発作がおこる前から、つまり高血圧といわれたらすぐに、治療を開始することがたいせつです。

検査(2)

肥満判定

高血圧で肥満している場合は、降圧薬が効きにくく、といって降圧薬の量を増すと、長期の連用で副作用の心配が出てきます。また太っていると、高血圧による心臓の傷みを助長しますし、血清脂質(コレステロールや中性脂肪)や尿酸値を高める可能性がありますから、肥満は是正する必要があります。

ところで、肥満度の判定の基礎となる標準体重の算出法はいろいろです。そのために同じ身長でも、異なった方法で算出された標準体重はそれぞれ違っているのです。

特に【身長(cm)-100】というブローカ方式や、その値に0.9を掛けたブローカ変法では、背の高い人は太っているのによりスマートに、背が低い人では太っていないのにより太りぎみに判定されてしまいます。

その他の方法でも、骨太の人や筋肉質の人では、脂肪が多くないのに体重は重いので、肥満度の計算では肥満体と誤まられがちです。また、高齢になると体組織の萎縮によって体重は減りますが、脂肪組織は体重のわりには減っていません。

こういう理由で、肥満度を正しく判定するためには、皮厚(皮下脂肪の厚さ) をはかるのがいちばんです。しかし測定の技術がむずかしく、また誤差が大きいきらいがあります。

近年は、体脂肪計で脂肪率を計測する方法も普及しつつあります。また、体内のどこに脂肪が集まっているかにょって、W( ウェスト)とH(ヒップ)比をはかり、洋ナシ型とリンゴ型に分ける肥満判定もあります。

尿検査

一般には、たんばくと糖、潜血反応の3項目を検査しますが、ほんとうは潜血反応でなく沈渣をしらべるのがよいのです。
これは沈渣のなかに白血球が多ければ、腎孟腎炎発見の手がかりとなるからです。

沈渣のなかに赤血球が多くみられるのは、各種腎炎の診断の手がかりとなりますが、尿たんばくが痕跡程度なのに赤血球が多数みられるときは、腎結石による片腎性高血圧の疑いが出てきます。

なお尿たんばくについては、血圧値のわりに著明なら腎実質性高血圧が疑われ、血圧値のわりに少なければ、高血圧による腎障害と判断されます。
尿糖をしらべるのは、糖尿病発見の手がかりをつかむためですが、同時クッシンググ症候群や褐色細胞腫の一兆候でもあります。特に高血圧の人に糖尿病病が合併すると、粥状硬化が進んで、心筋梗塞や脳卒中のおこり方が多くなるので、これは重要な検査です。
いずれにせよ、食後2時間めの採尿が理想的です。これは、糖代謝障害があっても、空腹時や食後時間がたっている場合は、血糖値がより低めですから、尿に糖が出てきにくいためです。食後の血糖値は1時間前後で最高に達しますが、血糖が上昇して腎臓からは糖が排泄され、膀胱に十分たまるのを待って採尿するというわけです。

血液検査

血液沈降速度(血沈は、促進しているからといって特定の病気を意味しているわけではありませんが、大動脈炎、腎孟腎炎、膠原病などの手がかりとなります。また血栓形式の促進因子であるフィブリノーゲンがふえると、血沈は促進しがちです。赤血球数、血色素量、ヘマトクリット値、白血球数は自動算定装置で一度にはかれます。これで貧血や赤血球増多症の有無がわかりますが、特にへマトクリット値の増加は心筋梗塞の危険因子として重要視されます。たとえば、ヘマトクリットが50以上の群は42未満の群にくらべ冠動脈疾患は2倍以上にふえることが、プエルトリコの調査で証明ずみです。血糖値は、前述のように糖尿病診断の手がかりとして、またクッシンング症候群や褐色細胞腫の参考資料としての意義をもっています。なお糖尿病は、脳卒中や心筋梗塞の重大な危険因子の1つです。

血清生化学的検査

血清カリウムは、高アルドステロン症の診断の手がかりとしての重要性と、利尿降庄薬の副作用チェックの意味をもっています。アルドステロンは、副腎皮質から分泌されるホルモンの一種で、これがふえると、一見、本態性高血圧と似た高血圧が発生します。

低カリウム血症では、心筋内のカリウムが減り、心筋に虚血が生じたとき壊死に陥りやすいので危険ですし、また脳卒中で片まひをおこしている場合は、回復していた手足のまひが悪化することもあります。

血清総コレステロールがふえると、冠状動脈硬化症が進みますが、同時に血液粘調度も増すので、血栓をつくりやすくなる危険があります。しかし逆に血清総コレステロールが少ないと、脳出血や脳血栓にかかりやすいことが日本の疫学調査でわかっています。
したがって血清総コレステロール測定は、高血圧の生活指導に重要です。近ごろHDLコレステロール(善玉コレステロール) が注目されていますが、血清総コレステロール値が高くないなら、ことさらHDLコレステロールをしらべる必要はなかろうという考え方もあります。

中性脂肪についても、血清総コレステロールが高くなければ検査の必要はないという考え方があります。もししらべるのであれば、食後10時間以上の絶食後に採血することがたいせつです。

また飲酒習慣のある人は、3~4日の禁酒を守ったうえで採血します。この注意を守らないと、中性脂肪が高値を示しても意味づけができません。

血清尿素窒素やクレアチニンは、腎機能障害の程度の指標となりますが、重篤な肝障害があると、腎機能が低下していても尿素窒素は増加しません。これらは腎実質性高血圧の診断には有用ですが、高血圧による腎臓の二次的障害をみる目的では、感度が鈍感すぎて役に立ちません。血清尿酸値は、痛風の診断や利尿薬の副作用をみる目的で検査します。

腎機能検査

腎臓は、血液中の異物を排泄する働きがあり、この働きぐあいをしらべるのがPSP検査です。これは、フェノールズルフォフタレインという赤い薬液を静脈内注射して、尿中への排泄量を調べることで腎機能を知る検査です。

特に静注後15分めの尿中排泄量は、腎血環流量と関連が深いので、有用な検査です。ただ血清尿素窒素がふえているときは、クレアチニン・クリアランスという検査でないと、実際の役には立ちません。

また、腎臓は尿をこす作用がありますが、これは腎機能障害の初期段階で低下するので、尿濃縮試験は有用な検査ですが、水や電解質の異常がある場合や、水分制限を禁忌とする病気をもっているときは、検査するわけにいきません。腎臓の尿細管疾変については、尿中のβ2マイクログロブリンやNAG(尿細管細胞逸脱酵素) をしらべることで診断されます。

眼底検査

高血圧症による細動脈病変を直接にしらべる検査で、特に脳出血や脳梗塞の危険因子でもあるところから、たいせつな検査です。眼底所見の把握には、眼底鏡による方法と、眼底カメラで写真記録する方法と2通りあります。

心電図検査

心電図検査は、高血圧による心臓合併症の発見と、脳卒中や心筋梗塞の危険因子としての心電図異常有無をみる目的で検査します。これも安静時の検査にとどまらず、年齢や既往歴、自覚症状などから冠状動脈硬化症が疑われる場合は、運動負荷時の心電図も記録されます。

胸部レントゲン検査

これは高血圧のスクリーニング検査というより、むしろ臨床全般としてのスクリーニング検査です。もちろん心臓陰影や大動脈陰影の異常は、それなりの意義をもっています。

静脈性腎盂造影

近ごろはスクリーニング検査として省略されがちですが、腎血管性高血圧や片側萎縮腎による二次性高血圧の診断の手がかりとして有用ですから、既往歴その他でこれら疾患の疑いがあるときには、省略できない検査です。