危険の前ぶれ

特に注意するのは脳卒中と心筋梗塞

高血圧の人が突然襲われる危険症はひ人といろいろありますが、頻度のうえでいのは、脳卒中と心筋梗塞の発作です。そして高血圧治療の本来の目的は、こういった病気を防ぐところにあるのですが、いずれの病気も、その基盤は動脈の傷みにあり、しかもこれが一朝一夕で完成するものではないだけに、予防のむずかしさがあります。
高血圧を早めに発見し、さらに早期に正しい治療を受けていれば、動脈の傷みはそれほどひどくなるものではありません。血圧が高いということを自分では知りながら、そのままほうっておくために、突然に発作という目にあうのです。

悪いことをしても自分だけはだいじょうぶという考えは、まさに泥棒の思想に通じるものがあります。つまり、脳卒中や心筋棟塞の前ぶれがおこる寸前で高血圧の治療を開始したところで、もうそんなにひどく動脈が傷んでいるのでは、高血圧治療の意味は半減どころか、治療の時期を逸したといったほうが正しいでしょう。

それにしても、せっかく高血圧の治療を続けていたにもかかわらず、脳卒中や心筋梗塞をおこす人がいます。これは、治療開始が遅れたとか、降庄薬を正しく連用していなかったとか、食塩制限をはじめとする食生活を正しく守らなかったとか、必ずなにか要因となるものが潜んでいるものです。

前触れなしに発症する

高血圧に特有な自覚症状はありません。そして脳卒中や心筋梗塞をいつおこしても不思議はないくらいに動脈病変が進んでも、脳や心臓の組織に酸素不足が生じないかぎり、自覚症状は出てこないものです。大きな発作の前に必ず小さな発作がおこるというのであれば都合がよいのですが、脳卒中のなかでも、脳出血やくも膜下出血などは、いきなり大発作で発病するものですし、心筋梗塞も、なんの前ぶれもなしに突然おこるケースが半分以上ということですから、予断は許せません。ここは定期的に診察や検査を受けて、そのきぎしがあったら、たとえ自覚症状がなくても、予防のために生活上の注意を守ることがたいせつです。

つまりこういう症状は、動脈の傷みが極限に達して初めて出てくるものなのです。もっと早期の脳卒中や心筋梗塞の前ぶれはないかというと、これこそ、高血圧であり、糖尿病であり、脂質代謝異常なのです。高血圧治療の原点がここにあることをよく考えて、くれぐれも脳卒中や心筋梗塞をおこさないように気をつけたいものです。

前ぶれ症状

しいて脳卒中や心筋梗塞の前ぶれ症状というと、それぞれの病気で違いはあります。もちろんこんな症状がなくても、眼底検査や心電図検査をはじめ、問診や診察で、しかるべき兆候というものがつかめることも多いのです。前述のように、こんな前ぶれ症状が出るまで、血圧の治療をいいかげんにしておいてはいけないのです。

脳出血の前ぶれ症状

  • ズキンズキンと拍動性の頭痛がする
  • 視力障害(目が疲れやすい、チカチカする、細かい文字が読みづらい)

脳梗塞の前ぶれ

  • 回転性のめまい
  • 舌がもつれる
  • 一時的な片まひ(突 然、握っていたペンやはしを落とす)
  • 突然の下肢脱力(歩行中よろける)
  • 運動負荷で心電図に異常があらわれる
  • 労作時に脈が乱れる

症状

血圧が影響しているとは限らない

高血圧の人が、肩こりや頭痛、めまい、手のしびれを訴えるのは、それほど珍しいことではありません。また、朝日がさめたとき、胸がつまるとか、胸痛を覚える人も多いようです。

しかし、このような症状はなにも高血圧の人にかぎらず、血圧が低い人にもおこっているのです。また、血圧とは関係のない、別の病気でおこっているケースも多いのです。ところが血圧が高い人は、頭痛や肩こりがおこると、ついつい血圧のせいにしがちです。

最近は、頭痛、めまい、肩こりをしきりと訴える高血圧の方の中で、頸部脊椎症の人がかなりいることです。この病気は、首の骨の変形や椎間板の狭小化などによって、そこから出ている神経が刺激を受けて、前記のような症状をおこすもので、日ごろの運動不足や、不自然に高い枕、悪い姿勢で車の運転をするといったことが原因でおこってきます。

首のレントゲン検査を受ければすぐ診断がつきますが、ときに、胸痛をおこすこともあり、狭心症と誤診されている場合も多いのです。

肩こり、頭痛をとるための体操

  1. 6秒ぐらい頭と手を押しつけあう
  2. 後頭部で押しつけ合う
  3. 側頭部で押しつけ合う
  4. 反対側を押しつけ合う

症状をとるには

この悩ましい症状が続くと、イライラがこうじて、血圧がさらに高くなってしまいます。早く治すには、首や上肢の柔軟体操をよくくり返すことです。
それも、朝だけとか、1日に2、3回というのではなく、1回分が1分半ぐらいでもよいですから、1日に20回も30回も、思い出したときにくり返しやってみてください。

初めのうちは、首を回すとゴキゴキ感じますが、1週間も2週間もたつうちに、だんだん柔軟運動も楽になってくるものです。ことに、朝日がさめたときにぐあいが悪いという場合には、寝ているときの首の姿勢が不自然であるためです。正しい首の姿勢というのは、起きているときの状態なのですが、高すぎる枕をしているときはもちろんですが、ふつうの枕を使っていても、後頭部に枕を当てて雇た姿勢は、どうしてもうつ向きかげんとなります。ということは、一晩中、書きものをしていたとか、裁縫に精をだしていたのと同じ状態ですから、これでは、朝日がさめたとき、肩や首すじが張ったり、胸がつまったりしても、しごく当然のことです。
ここは、大きめの羽毛枕を上手に使うのが得策でしょう。日常生活の首の姿勢についても、気がつかないうちに無理をしていることが多いものです。十分注意しましょう

たばこ

米国はたばこを危険視する

およそ先進諸国のなかで、日本ほどタバコを吸う国はほかにないでしょう。それでいて、タバコと関係の深い肺がんや心筋梗塞という病気は、日本がいちばん少ないのです。
これは世界の7不思議の1つかもしれません。

欧米では、心筋梗塞の要因の1つとしてタバコをとりあげ、高血圧や高脂質血症と同格に危険視していますが、これは、欧米人が栄養過多の状態にあって、血清コレステロールや中性脂肪の値が高く、糖尿病も多いし、太ってはいるし、血清尿酸値も高いというありさまだからです。

ただでさえ悪い条件がそろっているために、タバコを吸うか吸わないかが心筋梗塞の発病に直結しているとしても、当然の話なのです。日本では、アメリカの6分の1しか心筋梗塞をおこしていませんし、国民のコレステロール値も低いために、それほど強くタバコを危険視していません。

そうはいっても、高血圧の人にタバコを許す専門医はいないはずです。

たばこが有害な理由

ところでタバコが心臓血管系に悪影響を与えるのは、ニコチンと一酸化炭素です。ニコチンは、副腎髄質を刺激して、アドレナリンやノルアドレナリンというホルモンの分泌を促し、血圧を高め、脈拍数をふやしますから、心臓の酸素需要が増加します。これが狭心症や心筋梗塞発生の引き金となっても不思議はありません。

一酸化炭素は、タバコが不完全燃焼であるために発生するのです。これが赤血球のヘモグロビン(血色素)といったん結びつくと、容易には離れるものではありませんから、赤血球は酸素を結合する能力を失い、生ける屍と化してしまいます。

ところで脳や心臓の血管が動脈硬化をおこしていると、十分な血液が流れません。さらに、せっかく流れてくる血液が酸素を運んでくれないとなると、脳や心臓の細胞は酸素不足に陥ってしまいます。このメカニズムも、脳梗塞や心筋梗塞の発症原因です。

ところがタバコは、また別の悪さをします。これは、喫煙で血液中に遊離脂肪酸がいっぱいふえるからです。このふえ方は、心筋梗塞にいったんかかった人では特にひどいのです。

血液中の遊離脂肪酸は、心筋の酸素需要を増すだけではなく、血小板どうしの凝集や、血小板の血管壁への癒着をおこし、粥状硬化症の発生に拍車がかかるうえ、、血栓もできやすくなります。

そのほかにもタバコは、フィブリノーゲンをふやし、血液凝固を促したり、善玉コレステロールを減らしたり、血管内皮を傷つける悪戯もします。

昔から、紙巻きタバコは悪いけれど、葉巻きやパイプは安全だといわれています。これは、葉巻きやパイプは煙が濃厚なので、肺へ深く吸い込まないところに危険の少ない理由があると考えられています。

しかし、タバコにうるさい欧米では、近ごろ葉巻きもパイプもだめだという声が大きくなりました。ましてリトルシガーと呼ばれる細巻きは、深く吸い込んでもむせる心配がないだけに、紙巻きタバコと同程度の危険があるといわれています。要するに、タバコはやめるにこしたことはありません。血圧が高い人にとっては、有害そのものといえます。

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アルコール

アルコールと高血圧

ひと口にアルコールと高血圧との関係といっても、その内答はたいへんに複雑です。まず第一に、アルコールを常飲すると高血圧になるのかという点については、欧米では、「どうもそうらしい」という調査結果があります。

特に一日に60ml以上もアルコールを常飲していると高血圧になるというのです。日本ではかつて秋田県に高血圧が多い背景の1つとして、ドブロクが問題視されたことがあります。
実際にお酒を飲み続けていると、血圧が上がることが知られています。しかし日本人の高血圧の発生には、食塩のとりすぎや肥満、運動不足のほうが関連が深いので、アルコールだけを目のかたきにする必要はなかろうというのが、日本における通念です。

お酒を飲んだときの血圧への影響

アルコールを飲んだとき、血圧は上がるのでしょうか?それとも下がるのでしょうか?アルコールの血圧に対する作用はたいへん複雑で、飲酒中や飲酒直後は血圧が下がっているけれども、毎日酒を飲むという生活を送っていると、いつの間にか血圧は上がってくるのです。
つまり、血圧に対するアルコールの急性効果は降庄的に、慢性効果は昇圧的に働いています。要するに、アルコールでストレスが解消されると、血圧はみごとに下がるのがふつうです。

ただ、度を過ごしたり、酔った勢いではしゃいだりしたら血圧は上がることでしょうし、酒のツマミとして食塩をとりすぎたら、これもまた問題がおこるでしょう。

欧米では高血圧の人に対しアルコールを槍玉にあげて、1日三30ml以下(日本酒として1合以下)にするよう勧告しています。この点について、日本では寛大に考える医師が多かったのですが、最近は欧米と同じく制限するよう勧告が出されました。

心筋梗塞や脳卒中との関連性

アルコールのもう1つの問題は、アルコール常飲者は心筋梗塞や脳卒中にかかりやすいのかどうかという点です。これについては、血圧を正しく治療しているかぎり、アルコール自体は問題になりません。しかしおおざっぱにいうと、アルコールを飲んでいる人のほうが心筋梗塞にかかりにくいという奇抜な調査がいくつもあります。

ハワイ在住の日本人は、アルコールをたしなむ人ほど心筋梗塞にかかりにくいけれど、脳卒中はふえるという調査もあります。これもくわしくみると、度を越した大酒飲みとなると、こんなうまいぐあいにはいかないようです。

適量のお酒を飲むと、なぜ心筋梗塞にかからないのかについては、酒飲みは食べすぎをしないとか、適当にストレスを解消しているとか、いろいろとりぎたされていますが、その1つにアルコールは、血栓防止作用とともに善玉のコレステロールをふやすという研究が知られています。

では、結論はどうなのかというと、ふだん酒好きの人なら、家庭での晩酌程度であれば百薬の長であるといえまさかなす。しかしお酒の肴に含まれる食塩には十分注意することがたいせつです。

酒飲みに善玉コレステロールがふえるのなら、お酒をたしなまない人はどうすればよいのかというと、運動もよし、肥満是正もよしということで、善玉コレステロールをふやす目的で無理にお酒を飲む必要はどこにもないでしょう。

血圧が高い人はこんな飲み方はNG

  • 塩味の強いツマミをとる
  • 寒い時期のはしご酒
  • 食べないで飲んでばかり

自宅でたしなむ程度であれば気分がほぐれて百薬の長となります。心地よくなってゴロリと横になれば、血圧はぐっと下がり、一石二鳥の効果があるでしょう。お酒は「百薬の長」か?[本当] | lie&true(本当、嘘)

危険動作

血圧を変動させる大きなきっかけは、日常生活のなかに多数あります。会議や運転での精神的緊張、感激やイライラなどの感情的興奮、そして肉体労作など、ストレスはくり返し私たちを襲ってきます。

また、排便、せき込み、重い荷物の上げ下げには、いきみ動作が加わるほか、寒冷、高温浴はもちろんのこと、外力による痔痛などで皮膚が刺激されます。ときには寝不足をおこすこともあり、不摂生に陥ることもあるでしょう。

これらはすべて、血圧を変動させますが、これが二重、三重におこると、それだけ血圧は不安定に動揺します。いくつものストレスで自己のペースが乱れると、血圧に悪影響が出るだけでなく、血液が血管内でかたまりやすくなりますから、脳や心臓の動脈硬化がある程度進行している場合は、これがきっかこうそくけで、脳卒中や心筋梗塞をおこします。この刻々たる血圧の急な変動は、たとえ降圧薬をきちんと飲んでいて、ふだんの血圧が落ち着いている場合でも、おさえることは不可能です。

急な血圧変動のきっかけとなる危険行動一覧の例

  • 飲酒後の後の入浴
  • 遅刻しないようにとイライラしながら、駅の階段を急いで上がり、混んだ電車に無理に入ろうとする
  • 満腹直後に冷たい外気を思いきり吸い込む
  • 寒い冬の夜、暖房のないトイレで排便のために強くいきむ
  • 熱いおふろに入ったあとで、寒い脱衣室にからだをさらす
  • 真夏に、汗だくで帰ってくるなり、クーラーの前で涼む
  • 寝不足の後の重労働
  • 朝、時間ぎりぎりまで寝て、あわてて飛び起き、ふとんを上げる
  • 会議の席で興奮したり、怒ったりして大声を出す

肥満対策

運動による熱量消費は少ない

太っていればいるほど血圧が高くなり、体重を減少させると血圧が下がることは周知のとおりです。そして、肥満を解消するために運動が必要だということは誰でも知っていることですが、実は、運動で消費する熱量というものは、消耗すべき脂肪組織のもっている熱量に比べたら、まったく微々たるものなのです。

よく、「ひと汗かいて体重が1kgも減った」ということを言う人もますが、これは、脂肪が1kg減ったという意味ではありません。間違いです。

体重が増減する要因についてしっかり理解するには、栄養学の原点に戻らなければなりません。
脂肪1gのもつ熱量は9kcalです。そして脂肪組織は、脂肪90%、水10%で構成されています。つまり、脂肪組織を1kg消耗するには、98kcal×(1000-100)=8100kcalの負荷をかける必要があるのです。

日本の成人は、だいたい1日に2100kcal摂取していますがが、この計算でいくと、3日間絶食したところで、脂肪組織の消耗は1kgに達しません。

こんなに莫大なエネルギーをもっている脂肪組織のことですから、ちょっとやそっと運動したからといって、簡単に減るはずはないのです。

たとえば歩くことで脂肪組織を1kg減らすには、早足1.5km歩いても100kcalの消費にすぎませんから、計算すると120kmも歩き続けなければならないのです。

これは、東京を起点として、北は渋川か水戸、中央道なら山梨市、東海道では沼津までの距離に当たります。つまり、「ひと汗かいたら体重が1kg減った」というのは、体内からその分の水が減ったという意味にすぎないのです。

ダイエット中にイライラするのは?

肥満解消と一言で言ってもなかなか一筋縄にはいきません。ダイエット中のイライラもそのひとつかもしれません。

運動をすると基礎代謝が亢進する

実際のところ、運動で肥満が改善するのは、運動自体の熱量消費による結果ではありません。汗水たれる運動をしたあとは、基礎代謝量が数日、克進しっぱなしになるというところに、運動の効果はあるのです。

基礎代謝というのは、人間が生きていくための必要最小限度の熱量で、じっと安静を保っていても消耗する熱量です。運動をすると基礎代謝の亢進による熱量の消費が大きくなる、つまり、1回の運動だけで消費される熱量はわずかであっても、日ごろ運動している人は、からだに「熱量の消費の習慣がつき、ことさら運動をしないでも、たとえば眠っている間でも、余分な熱量が体外へ逃げていくというわけです。

基礎代謝の亢進はどの程度かというと、運動後15時間は25%増しになるとか、運動後6時間は21%増しになるとかいろいろな説がありますが、20%増しと仮定して、8時間の睡眠中に、運動した人は200kcalも余分に消耗する計算となります。

これは3kmの歩行と同じ熱量です。運動が肥満是正に必要な理由はここにあるのです。それも、汗水流す運動ほど基礎代謝の亢進には有効なのですから、この点をよく心得ることがたいせつです。

散歩程度の運動負荷では、毎日6kmほど歩く必要がありますが、テニスや水泳で、ひと汗もふた汗も流す運動なら、1一週間に3回もやれば十分だという調査結果も知られています。

また、食事前後に運動をすると、食事前後でとった熱量が体内にたまりにくいことも知られています。

この逆、つまり夕食後、テレビを見ながら横になるというのは、太っている人にとっては禁物ということでもあります。

いったん身についた脂肪は、とるのがたいへんです。食べたものが脂肪としてたまる前に使ってしまいましょう。それには、食後に軽い散歩をするのがいちばんです。昼食後の腹ごなしとして、20~30分も歩ければ理想的です。

運動

運動をすれば血圧は上昇する

肉体労作をすれば血圧、脈拍ともに上昇します。同じ運動量を負荷したときの血圧値や脈拍数の増加は、高齢になるほど、程度も大きくなるものです。
しかも同じ年齢でも、高血圧の場合は正常血圧に比べて血圧や脈拍の増加は大きいのです。これは、活動中の筋肉がより大量の酸素を消費しているため、十分な血液を供給する必要があるからですが、その結果、肺と心臓はそれだけ負担を受けることになります。
このことから、かつては、ふだん血圧が高い人や、心臓の冠状動脈に硬化がある人は、なるべく安静にしているべきだという考え方をしたものです。

日頃から体を動かす習慣があれば

心筋梗塞にかかりにく

しかしその後の調査では、よくからだを動かしている人は、あまり動かさない仕事の人に比べて、心筋梗塞にかかりにくいことがわかってきました。

たとえば、ロンドンのバス会社の調査では、運転手のほうが車掌より高率に心筋梗塞をおこすことが知られています。これは、車掌は二階だてのバスを昇ったり降りたりしているのに対して、運転手は座ったままで、しかも交通事情の悪い市内をストレスだらけで運転しているという点に、違いがあるのだろうと推測されています。
米国の鉄道職員の調査でも、からだを動かさない事務職は、保線区手の二倍も多く心筋梗塞にかかることがわかりました。

動脈硬化が進みにくい

実際に冠状動脈の狭窄度を測定した研究によると、労働している60歳代の人は、冠状動脈が75%以上も狭くなっているものは34パーセントですが、運動不足の人では50%もいるのです。
これは、労働していると、冠状動脈硬化が進みにくいことを示しているのです。

心臓に負担がかかりにくい

ところで、ふだんよくからだを動かしている人の血圧値や脈拍数は、安静時はもちろんのこと、運動したときもあまりふえないということが知られています。

この点について高血圧の人を2群に分け、一方は自転車による運動訓練を、1回60分当て週3回ずつ行い、一方はあまりからだを動かさない生活を続けて、10週間後に血圧値を比べた研究がありますが、その結果は、運動訓練を行った場合は、最大血圧も最小血圧もみごとに下がりました。

高血圧症の危険な合併症である心筋梗塞が、運動している人に発生しにくく、その1つの理由として、冠状動脈硬化が運動している人には進みにくいことは説明したとおりですが、もともと心筋梗塞という病気は、心筋の酸素需要を満たすだけの血液が供給できない結果おこるのです。この血液は冠状動脈を通って心筋へ供給されるのですから、冠状動脈の硬化が進んでこなければ、それだけ安全というわけですが、実は運動訓練をした心臓は、同じ負荷の運動に際して、鍛練していない心臓よりも酸素消費が少なくてすむのです。つまり狭心症や心筋梗塞にかかった場合のリハビリテーションとして、運動訓練が重要視されている理由もここにあるのです。

要するに高血圧の人にとって運動訓練は、ふだんの血圧を下げ、労作のときの不慮の血圧上昇を防ぐうえで非常に有効なのです。

運動は心臓を強くする

同じ仕事をしても、日ごろ運動でからだを鍛えている人の心臓は、酸素をあまり消費しません。その理由は、心臓自体にあるのではなく、鍛練した筋肉にあるのです。

運動や肉体労作をすると、新陳代謝が増加した筋肉系へ十分な血液を供給するため、心臓の活動が盛んになります。こうして運動や肉体労作をくり返し行っているうちに、鍛練された筋肉は、血液のなかから、より有効に酸素をとり込むコツを覚えるのです。
つまり、筋肉の新陳代謝が増加しても、それに必要なだけの酸素をとり込むのに、そんなに多くの血液はいらなくなるのです。ということは、それだけ心臓の負担も少なくてすむという結果になります。これがトレーニング効果です。

同じ仕事をしても、日ごろ運動をしている人は、血圧値も脈拍数も、あまりふやさずにすみます。なお運動訓練は、1週間に1度や2度やっても効果はあがりません。
せめて週に3回は必要です。歩行という軽い運動なら、毎日、それも6kgぐらいは歩かないと効果は得られません。

運動の効果

運動訓練を続けていると、血圧や脈柏のほかに、血液の脂質が改善します。つまり、血清の総コレステロール値やLDL( 悪玉)コレステロール、中性脂肪は減り、HDL(善玉)コレステロールがふえてきます。このことは、血圧が下がることと相まって、粥状硬化症の進展に歯止めをかけるのです
HDL・LDLコレステロールについてはこちら。

また血液が血管内で凝固しにくくなけっせ人りますから、血栓症をおこしにくくもこうそくなります。これは、脳梗塞や心筋梗塞の予防にたいへん重要なことですが、心筋梗塞の予防については、さらに冠状動脈のバイパス(副血行路)が運動で発達してくることも関係しています。

血圧の高い人が運動をするメリット

  • ふだんの血圧が下がる
  • 肉体労働をした際に血圧が上昇しにくい
  • 血液の凝固性亢進がおさえられ血栓が溶けやすくなる
  • 糖の代謝異常が是正される
  • 冠状動脈のバイパスが発達し心筋梗塞にかかりにくくなる

高血圧の人に最適な運動

運動であれば、どんな運動でも健康増進に役立つと考えるのは間違いです。筋肉を鍛練すれば確かに筋力は増大しますが、高血圧の人が必要な運動というのは、筋力をつけることではなく、血圧を下げ、脈拍数を減らし、心筋梗塞を予防するところに目的があるのです。

ということになると、同じ運動でも、これにかなったものもあれば、一方で、この目的には合わないものもあるのです。どんな運動が適しているのかというと、水泳、テニス、体操などの全身運動や手足を屈伸させる種類のものがよいのです。
ジョギングや自転車こぎといった、主として下肢の運動も向いています。これは、下肢のほうが上肢よりも筋肉が多いので効果があがりやすいのです。ともかく、筋肉を収縮させて手足をよく動かすことが重要です。これらの運動は、筋肉に力を入れたとき、筋肉の長さは、伸びたり縮んだりしており、筋肉自体の緊張度は変わりがありません。これを等張性収縮と呼びます。

避けたい運動

力がいるわりに動きが少ない運動

同じ筋肉の運動でも、筋肉は緊張するが筋肉の長さは変わらないタイプのものがあります。これは等尺性収縮と呼ばれ、筋肉は突っ張っていても、手足は屈伸しないという状態です。たとえば、鉄棒でひじを曲げてじっとからだをつり上げているときや、重量挙げで両腕を上げながら重みに耐えているとき、エキスパンダーを伸ばしっきりで支えているとき、水の入った重いバケツを運ぶとき、これらはすべて、筋肉の等尺性収縮運動です。

この筋肉の等尺性収縮では、血圧値も脈拍数もふえますが、特に最小血圧の上昇が大きいという特徴をもっています。一方の等張性収縮では、脈拍数の増加と最大血圧の上昇は大きいのですが、最小血圧の上昇は軽度という特徴をもっています。しかも等張性収縮の運動訓練を続けているうちに、脈拍や血圧の変動はしだいに軽度になってくるという効果があります。

ところが、運動訓練による脈拍や血圧変動の抑制効果は、等尺性収縮による訓練ではおこりません。つまりこの種の運動は、ボディビルの目的ならいざ知らず、高血圧や心筋梗塞のリハビリテーションには使えないのです。

ところで、日常生活のなかで、等尺性収縮を伴う動作がいくつもあります。たとえば、こぶしをぐっと握る動作がそうです。また、ふとんを運ぶ動作も同じです。大きくやわらかいふとんとなると、力をこめてしっかり握らないと落ちてしまいます。このとき、力をこめて握ったというだけで、血圧や脈拍の揺さぶりは大きいものです。朝のふとんの上げ下ろしのときに、狭心症をおこす人がいるくらいです。

団体競技

バレーボールやサッカーなどの団体競技は、健康な人や、合併症のない高血圧の人は別として、脳卒中や心筋梗塞のおそれのある場合は、避けたほうが安全です。というのは、チームが勝つためには、自分を犠牲にしてまで無理をする必要があるからです。

姿勢と血圧

急に立ち上がると血圧は上昇する

人間は重力の関係で、立った姿勢でいると血液が下半身にたまります。横になっているときに比べると、500~750mlも多くたまります。
これ以上の血液が下半身にたまらないのは、交感神経が緊張して下半身の静脈が収縮し、たまった血液を心臓へ押し返すからです。
つまり、脳という重要な臓器の血流量が減らないように、手足の血管も内臓の血管もいっせいに収縮するわけです。それにしても循環血液量はたかだか5Lですから、立っているときに下半身に血液が500~750mlミもたまるということは、心拍出量を10~15%も減らしてしまうはめとなり、このままだと血圧もそれだけ下がってしまいます。

それをくい止めるために、動脈系は必死で収縮します。つまり横になって休んでいるときは無理な血管の収縮機構がないので血圧は下がっていますが、休んだあとで急に立ち上がると、最大血圧はやや下がったところで、最小血圧はやや高まったところで安定します。

ただ若い人と違って高齢者では、この下肢の血管反射が鈍っているために、最大血圧の下がり方はやや大きめです。つまり、血圧がストンと下がるために、立ちくらみをおこすことが多いので注意を要します。

危険な立ちくらみ

一般に、立ったときの最大血圧が15mmHG以上も下がったり、立ち上がってから30秒たっても最小血圧が上がってこないという場合には、起立性低血圧と呼ばれます。起立性低血圧がおこっても、脳の血液循環に支障をきたさなければ、特にめまい感などの自覚症状はおこりませんが、

起立性低血圧は、けっしてふだん低血圧の人にだけみられるものではなくて、高血圧の人にもみられます。特に、褐色細胞腫、原発性アルドステロン症、腎血管性高血圧などの症候性高血圧症では、起立性低血圧をおこしやすいのが特徴で、診断の手がかりとして重要所見でもあるわけです。

さてここで問題となるのは、交感神経を抑制する作用機序をもつ降圧剤が、起立性低血圧という副作用をおこす場合があるという点です。ですから、こういう種類の降圧剤を内服している場合は、横になっているときや腰かけているときの血圧値だけでなく、立っているときの血圧をはかってもらうことがたいせつです。特に、立ちくらみという症状をもっている人は、主治医にその旨を伝えることを忘れてはいけません。というのは、脳の動脈硬化がある程度進んでいるときは、こうノてく立位で血圧があまり下がると、脳梗塞をおこす危険があるためです。

メモ

急に立つと、最大血圧が下がるために一瞬くらっときます。健康な人は、手足の血管が反射的に収縮してすぐ元の血圧に戻ります。動脈硬化が進んでいる人は、こんなときに脳梗塞や心臓発作をおこすことがあるので要注意です。

睡眠・休養

睡眠中は血圧が一番低い

血圧は、一定の値を保っているわけではなく、1日のうちでも大きく変動しており、特に精神的・肉体的ストレスが加わっている間は、いつになく高い値を示します。そして、血圧が高ければ高いほど動脈壁の負担が大きくなり、長い経過のうちに、動脈の傷みが進行して、いずれは脳や心臓、腎臓の障害がおこってきます。

このために高血圧は早めに治療する必要があるわけですが、日常生活のなかでも、心身ともにリラックスすれば、血圧を下げることができます。

血圧の高い人にとって、リラックスできる時間をもてばもつほどいいのです。

たとえば不安定に血圧が上がっていても、横になって休んでいると、血圧はしだいに落ち着いてきて、30分もすると眠っていなくても最大血圧が15mmHG~20mmHGも下がるものです。しかもふだんの血圧が高い人ほど、この降圧程度は大きいのです。

ということは、会社の休憩時間を有効に利用して、不安定に上昇した血圧を、20分でも30分でも横になって下げておいたら、それだけ血管の傷みは少なくてすむはずです。

もちろん睡眠時間を十分にとることは、高血圧の人にとっては重要なことです。これは、平均した血圧の値が、睡眠中はいちばん低いからです。仕事をして血圧が高くなり、そのために傷んだ血管が、この睡眠中に修復されるのですから、睡眠という自然の療法をないがしろにしてはいけません。

もともと睡眠量というものは、睡眠時間だけで決まるのではなく、睡眠の時間と深さを掛け合わせた量なので、深い眠りができる人は、睡眠時間が多少人より短くても、十分な睡眠量をとることができます。しかし高血圧の場合は、血圧が下がっている時間が長ければ長いほど、傷んだ血管の修復が十分にいくわけですから、できるだけ睡眠時間は長くとりたいものです。

血圧を下げる睡眠法

床についてもなかなか眠れず、夜間も時々目がさめるという人がいますが、これはからだが疲れていない場合や、神経の高ぶりをおさえる自然の作用が十分に働いていないときの現象です。

日ごろ、仕事もせずに、脳と口だけしか動かしていない人にありがちな現象ですが、ここは、日中にからだをよく動かすことがたいせつなのです。

神経質で寝つかれないというときは、就雇前にぬるめのお湯につかり、副交感神経の緊張を高めるのもよいし、酒好きの人であれば、就最前に軽く1杯やるのもよいでしょう。

ところで睡眠中の血圧をみると、一様に下がっているのではなく、やはり刻々と変動しています。電話のベルをはじめ、神経をいらだたせる雑音が聞こえたり、電灯の光が閉じたまぶたを通して網膜を刺激したりすると、眠っていて意識はしなくても、血圧はびっくりするくらい急上昇します。
この際の血圧上昇は、降圧剤でふだんの血圧が下がっていても、くい止めることはできません。つまり上手に静かな睡眠をとるためには、騒音や光刺激が寝室をおかさない工夫が必要です。

まっ暗な部屋が嫌いなら、豆ランプは天井ではなく足元につけるようにし、雨戸がなければ窓にブラインドをつけるという、ちょっとした知恵が、健康を保つコツになります。
こちらも参考になります。快眠のコツはリラックスすることです。

睡眠一口メモ

睡眠中は、血圧を下げます。軽い高血圧の人なら、日中は血圧が高くても、睡眠中は健康な人と同じ血圧値に下がります。
治療中をみると、日中120~140mmHGの血圧が、睡眠中には100mmHG以下になるのが一般的です。24時間、血圧を測定すると睡眠中に時々、上昇していることがわかりますがこれは、、大きな物音がして血圧が急上昇したものです。静かな環境ではどよく熟睡するのが、上手に血圧を下げるコツです。
旅行に行ったり、入院したときによく眠れないときは血圧が揚げっている場合が多いので血圧が高めの人は十分に注意します。

入浴

お風呂は血圧によくないの?

高血圧の人が浴室で脳卒中をおこすことがあります。このために、「高血圧者に入浴は危険だ」と思っている人もいるくらいですが、実はおふろで事故がおこるのは日本だけで、欧米ではこのようなことはないのです。

つまり、入浴自体が悪いのではなく、入浴のしかたそのものに問題があるのです。欧米ではからだを横たえてお湯につかるのに、日本ではかがみ姿勢で腰を浮かしてお湯につかります。

浴槽が深いほど、水圧がかかり、血圧も上がってしまうのです。もう1つの違いは、お湯の温度です。欧米では浴室が居間と同じ温度で寒くないために、熱いお湯に入る必要がありません。しかし日本では、寒さをカバーするために、熱いお湯でからだが冷えないようにしているのです。体を温めるために熱いお湯に入るということです。

熱すぎるお湯は有害

熱いにしろ、寒いにしろ、いずれも皮膚を刺激すると血圧が上がります。皮膚を刺激しないお湯の温度とは、理論的には体温に近い温度ということで、37~38度というところです。

皮膚が熱いお湯や冷たい水などの刺激を受けると、すぐに血圧が上がります。浴槽につかったとたん、血圧が上がっても、そのうち、からだ中の血管が開いて血圧が下がります。高血圧の人は、熟すぎるお湯と、最後の水かぶりは禁物です。

浴室が冷えきっていると、裸では寒さが身にしみますから、どうしても熱いお湯にからだを沈めて温めようとするわけです。このように熱いおふろに入る習慣が、いつのまにか身についてしまい、冬だけではなく、夏も熱いお湯につかるようになり、おふろとは熱いのが習慣化してしまているのです。

たいていの人は42度以上のお湯につかっているようですが、お湯の温度が42度以上に達すると、皮膚をお湯につけただけで血圧は上昇します。そしてお湯につかっているうちに、全身の血管が開いて、血圧が下がります。からだに熱がこもるにつれ、皮膚の血管が開いて放熱しようとするのですが、体温より高い温度のお湯につかっているからには放熱しようがないし、血圧はどんどん下がってきます。

このままではのぼせてしまうわけで、いい加減なところで浴槽から飛び出し、からだを洗うことになります。ところが洗い場が冷えているために、今度は血圧がしだいに上がってきます。そして寒さを覚える程度までにからだを冷やしてしまうと、血圧は当然のことながら、いっそう高くなっていきます。

脳や心臓の動脈が傷んでいる人では、こんなふうに血圧を上げたり下げたりしているうちに、事故をおこしかねません。ではどうすれば血圧の揺さぶりが防げるでしょうか。

それは、前もって浴室をストーブで暖めておくことです。こうすれば、無理して熱いお湯につかる必要はないのです。浴室の温度については、冬と夏とで快感温度は違いますが、冬のからだは寒さになれていますから、40度前後にしておけば、裸になっても寒く感じません。浴室を暖めておけば、お湯の温度が皮膚を刺激しない程度でも寒くありません。

ただ日本人は、子どものころから熟めのお湯に入りなれているため、37~38度のお湯では物足りないことが多いので、39~40度というところが適当でしょう。

よく、浴室が湯気でいっぱいだから暖かくなっていると考える人がいますが、この湯気こそ寒い証拠なのです。夏には湯気が立たないことを思い出してください。つまり、浴室が冷えているからこそ、水蒸気が凝結して湯気になるのです。

血圧が高い人はこれだけは守る

まず面倒がらずに、寒暖計と湯温計とを用意します。寒暖計では浴室の温度を20度前後に、また湯温計ではお湯の温度を40度前後に管理することです。
こうすれば、入浴による温度の害は避けられます。

次に水圧の害ですが、日本式浴槽に身を沈めるときは、首まで深くつからないで、せいぜい肩が沈むか沈まぬか程度にするのが賢明です。

浴槽の底にお尻をつけて坐るのなら、お湯の量を加減する必要がありますが、適当な腰かけ台を使うのもひとつの方法です。「お年寄りに新湯は毒」とよくいわれます。これは一番湯ほど肌にチリチリして、皮膚を刺激するという意味では感心できないからです。

浴槽のお湯揚は、人が入っているうちに、皮膚の脂肪や有機物で適当にやわらかくなりますから、日ごろ血圧が高い高齢者は、二番湯以降がからだにはよいのです。しかし、バスクリーンなどの入浴剤を入れれば、問題はありません。

ぬるめのお湯は血圧を下げ続ける

熱いお湯に入ると交感神経が緊張し、筋肉も締まり、活動力も増します。これは、昔、江戸の火消衆などが利用した朝湯の効果です。

高血圧の人がこれをまねしてはいけません。熱いお揚に対してぬるめのお湯は、副交感神経が緊張しますから、神経のイライラを解消し、血圧も下がって催眠効果も出てきます。また、肩こりや腰痛などといった筋肉の疲れもとれるものです。この効果は、湯ぎめをしないかぎり、2時間も続きます。特に皮膚の血管を開く効果の大きい炭酸泉につかった場合は、血圧を下げる効果が数時間も続くことが知られています。半身浴は血圧をさらさらにします。