血圧値以外の病態にかなった処方がポイント
現在使われている降庄薬は数多くあり、それぞれ血圧を下げるしくみは千差万別です。また同一薬剤でも、何種類もの働きをもつものがあります。
これら数多い降圧薬のなかには、降圧作用が弱いものから強力なものまでいろいろありますし、心臓や腎臓機能に対する作用もまちまちです。
元来、血圧を下げる目的は、脳卒中や心筋梗塞、尿毒症の防止にあるのですから、血圧は下がったけれども腎臓機能が低下したというのでは意味がないのです。
そして原因のはっきりしない本態性高血圧の場合には、複数の因子が互いにからみ合って血圧を上げているのですから、特に心拍出量が増加している場合はこれを是正するために、また交感神経緊張が高ぶっている場合はこれを是正するために、というぐあいに、目的に合った降圧薬を使うのが理にかなっています。
ですから、同じ高血圧の人でも、その人にいちばん通している降圧薬を選ぶ必要が出てきます。これはたいへんむずかしい点で、自分の血圧が高いからといって、薬局でかってに降圧薬を買ってくるわけにはいかないのです。血圧値だけではなく、心臓や腎臓に障害があらわれていないか、眼底はどうかなど、必要な検査を含めて慎重な診察で、高血圧の特性を見きわめないかぎり、正しい降圧薬治療はできません。
どんな降圧剤があうか
医学や薬学の進歩によって、以前は数少なかった降圧薬が、今では種類も、増え、新しいものがたくさん出回ってきました。代表的な血圧を下げる薬剤はこちらです。
このうち最近は、特にβ遮断薬やα1遮断薬( いずれも交感神経抑制薬)、カルシウム括抗薬、ACE阻害薬がふえてきました。逆に中枢作用性恥刺激薬、末梢作用性交感神経抑制薬、直接血管拡張薬は、現在あまり使われていません。なお、古くからあった利尿薬は、今でも広く使われています。
- 利尿薬腎臓からのナトリウム排泄を促すことで細胞外液量が減って血圧が下がる。長く使っているうちに、細胞外液量はもとに戻り、今度は末梢血管抵抗が低下することで血圧が下がる。
- 交感神経抑制薬交感神経が緊張しても、心臓の活動性を増やさない(β遮断薬)、いまあは血管抵抗を増やさない(α1遮断薬)ことによって血圧の上昇を防ぐ。
中枢神経系のa2受容体を刺激することにより塩心性交感神経活動を低下させる。
あるいは交感神経末端からのノルエピネフリンの遊出を抑制したり、カテコラミンを減少させる。 - 血管拡張薬細胞内へのカルシウム涜入を阻止することにより血管平滑筋を弛緩させる。冠状動脈だけではなく、末梢細動脈を拡張させて血圧を下げる( カルシウム桔抗薬)アンジオテンシンⅡ 産生抑制、アルドステロン分泌抑制によって、末梢血管を拡張させて血圧を下げる(ACE阻害薬)直接血管を拡張して、血管の抵抗を低下させることによって血圧を下げる