原因がはっきりしている高血圧
血圧は、血液量がふえても、血管抵抗が高まっても上がります。からだのどこかに、この2つの原因を生み出す病気が潜んでいて、そのために高血圧になったという場合は、特に症候性高血圧、または二次性高血圧といい、原因不明の本態性高血圧と区別されています。
腎臓の病気による高血圧
いちばん多いのは腎臓の実質の病気、つまり慢性糸球体腎炎や慢性腎孟腎炎などです。炎症によってナトリウムの排泄が十分行われなくなり、血圧が上がってきます。
そのほか、腎血管性高血圧という病気があります。これは腎臓へいく腎動脈が狭窄をおこしたためにおこる病気です。狭窄のために腎臓の組織が血液不足となりますが、そうなると腎臓の穿糸球体細胞からレニンと呼ばれる一種のたんばく分解酵素が分泌されます。
レニンンーアンジオテンシン系のメカニズムで血圧が上昇します。
内分泌の異常による高血圧
これは、ある種のホルモン分泌器官が異常に増殖して、過量のホルモンを出すために血圧が高くなる場合です。たとえば褐色細胞腫という病気は、副腎髄質やクロム親和性細胞にできる良性腫瘍で、アドレナリンやノルアドレナリンというホルモンをたくさん分泌するために高血圧をひきおこします。
原発性アルドステロン症( 副腎皮質せ腺腫) という病気は、副腎皮質にできる良性腫瘍で、この場合はアルドステロンというホルモンを過剰に分泌し、体内のナトリウムを排泄しにくくします。体内にたまったナトリウムは水をひきつけ、体液量も血液量もふえるために高血圧となるのです。
本態性と二次性は治療方針が異なる
本態性高血圧と二次性高血圧は、治療方針のうえで大きな違いがあります。つまり、本態性高血圧の治療は、高い血圧を下げること自体が根本L方針で、脳卒中や心筋梗塞につながる危険因子があれば、これも是正していくことが治療の中心となるのですが、二次性高血圧では、原因疾患の治療が第一義的な治療方針となります。
二次性高血圧のなかには、根治療法が可能なものがいくつもあります。たとえば褐色細胞腫、原発性アルドステロン症、腎動脈狭窄、片側だけの水腎症などは、手術で根治できます。
つまり大もとの病気を治せば、二次的に上がった血圧も正常に戻ります。しかし、血圧が高いままの状態が長期間続〈と、細動脈の病変が進んでしまい、血管抵抗が増加しますし、特に高血圧による腎臓の病変が進むと、今度は腎実質の病気による慢性の高血圧が発生します。この段階では手遅れで、あわてて手術をしたところで、高血圧は是正しょうがありません。