特に注意するのは脳卒中と心筋梗塞
高血圧の人が突然襲われる危険症はひ人といろいろありますが、頻度のうえでいのは、脳卒中と心筋梗塞の発作です。そして高血圧治療の本来の目的は、こういった病気を防ぐところにあるのですが、いずれの病気も、その基盤は動脈の傷みにあり、しかもこれが一朝一夕で完成するものではないだけに、予防のむずかしさがあります。
高血圧を早めに発見し、さらに早期に正しい治療を受けていれば、動脈の傷みはそれほどひどくなるものではありません。血圧が高いということを自分では知りながら、そのままほうっておくために、突然に発作という目にあうのです。
悪いことをしても自分だけはだいじょうぶという考えは、まさに泥棒の思想に通じるものがあります。つまり、脳卒中や心筋棟塞の前ぶれがおこる寸前で高血圧の治療を開始したところで、もうそんなにひどく動脈が傷んでいるのでは、高血圧治療の意味は半減どころか、治療の時期を逸したといったほうが正しいでしょう。
それにしても、せっかく高血圧の治療を続けていたにもかかわらず、脳卒中や心筋梗塞をおこす人がいます。これは、治療開始が遅れたとか、降庄薬を正しく連用していなかったとか、食塩制限をはじめとする食生活を正しく守らなかったとか、必ずなにか要因となるものが潜んでいるものです。
前触れなしに発症する
高血圧に特有な自覚症状はありません。そして脳卒中や心筋梗塞をいつおこしても不思議はないくらいに動脈病変が進んでも、脳や心臓の組織に酸素不足が生じないかぎり、自覚症状は出てこないものです。大きな発作の前に必ず小さな発作がおこるというのであれば都合がよいのですが、脳卒中のなかでも、脳出血やくも膜下出血などは、いきなり大発作で発病するものですし、心筋梗塞も、なんの前ぶれもなしに突然おこるケースが半分以上ということですから、予断は許せません。ここは定期的に診察や検査を受けて、そのきぎしがあったら、たとえ自覚症状がなくても、予防のために生活上の注意を守ることがたいせつです。
つまりこういう症状は、動脈の傷みが極限に達して初めて出てくるものなのです。もっと早期の脳卒中や心筋梗塞の前ぶれはないかというと、これこそ、高血圧であり、糖尿病であり、脂質代謝異常なのです。高血圧治療の原点がここにあることをよく考えて、くれぐれも脳卒中や心筋梗塞をおこさないように気をつけたいものです。
前ぶれ症状
しいて脳卒中や心筋梗塞の前ぶれ症状というと、それぞれの病気で違いはあります。もちろんこんな症状がなくても、眼底検査や心電図検査をはじめ、問診や診察で、しかるべき兆候というものがつかめることも多いのです。前述のように、こんな前ぶれ症状が出るまで、血圧の治療をいいかげんにしておいてはいけないのです。
脳出血の前ぶれ症状
- ズキンズキンと拍動性の頭痛がする
- 視力障害(目が疲れやすい、チカチカする、細かい文字が読みづらい)
脳梗塞の前ぶれ
- 回転性のめまい
- 舌がもつれる
- 一時的な片まひ(突 然、握っていたペンやはしを落とす)
- 突然の下肢脱力(歩行中よろける)
- 運動負荷で心電図に異常があらわれる
- 労作時に脈が乱れる