治療の原則

高血圧の治療には、降圧薬を使って積極的に血圧を下げる場合と、降圧薬は使わずに食事や暮らしの工夫だけで血圧を下げる場合とがあります。もちろん降圧薬を使う場合も、食塩制限や肥満是正、運動といった生活習慣の修正は必要です。ではどういった高血圧が薬を必要とするのかというと血圧値がある程度高く、一般療法では効果がないという判断された場合です。

臓器障害や心臓・血管病があると高リスクになる

  • 心臓
    左室肥大、狭心症、心筋梗塞の既往、心不全

  • 脳出血、脳梗塞、一過性脳虚血発作
  • 腎臓
    タンパク尿、腎障害、腎不全
  • 血管
    動脈硬化性プラーク、大動脈解離、閉塞性動脈疾患
  • 眼底
    高血圧性網膜症

危険因子や合併症により治療方針が異なる

  • 低リスクの場合
    遺伝要因がなく高血圧による臓器障害がなければ生活習慣で正す。
  • 中等リスクの場合
    降圧剤の使用
  • 高等リスクの場合
    降圧剤の使用

血圧はどこまで下げるか

高血圧の人は、若い人でもないかぎり、高血圧を指摘された時点では、大なり小なり、ある程度の血管病変を合併しているものです。
こういう場合、うかつに理想の血圧値まで降圧すると、臓器の血流が減って、機能低下をおこすはめになります。そういう意味で、降圧目標を一律に決めるわけにはいきません。
その人の年齢、臓器障害の程度、治療前の血圧値などを考慮に入れて、その人その人について決定していく必要があるのです。

理想の降圧目標

降圧目標は若年・中年者、糖尿病患者の場合は130/85mmHg未満ですが、高齢者の場合は年齢を考慮して140~160以下/ 90mHg未満です。
また臓器の側からみると、血管病変の結果、狭くなった血行路を十分に血液が流れるためには、血圧はあまり低いと困るのです。つまり血圧は、臓器血流の原動力でもあるのですから、たとえば腎臓に障害がおこっていて、血液中の尿素窒素やクレアチニン値が高くなればなるほど、降圧の目標値も高めというところでがまんせざるをえません。
しかし一方で、血圧をある程度下げると腎臓の負担がとれて、腎機能が降庄前より改善してくることも多いのです。

血圧を理想値まで下げてはいけないというルールは脳についてもいえます。脳という臓器は、100gについて、1分間に五50mmの血液を流す必要があります。
そして、脳血流を保っ血圧が必要以上に上がると、脳動脈が収縮して血液の流れすぎを防ぎ、逆に血圧が下がったときは、脳動脈が拡張して必要な血流量が減らないように、自動調節機構が働いています。

ただし、高血圧によって脳動脈に硬化がおこり、動脈の内腔が狭くなると、必要量の血流を保つためには、正常血圧の人より高めの血圧が要求されているのです。
つまり、脳卒中の既往歴をもっている人や、眼底所見が進んでいる人の血圧を下げるときは、それなりの注意を必要とします。

要するに、臓器障害があっても高血圧は是正するのが正しいのですが、降圧目標は理想の血圧値よりやや高めの点にねらいを定めるのが常識です。といって、降圧しすぎを心配するあまり、降圧目標を高めに評価しすぎては、これまた降圧薬治療の目的を達しえないという、実にむずかしい責任が医師にかかっているのです。そのほか、やっかいな問題がいくつかあるのです。その一つは、病院や診療所では、家庭にいるときより血圧が高めになるということです。

もう1つやっかいなのは、目標の血圧値まで一気に下げると、臓器の側で低めの血圧に順応する余裕がないため、かえって血圧を下げたことによる疲労感や不調感がおこる点です。したがって降圧は一気にするのではなく、数週間から2~3ヶ月かけて、徐々に下げていくことがたいせつです。

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