原因

原因がわからない高血圧が多い

高血圧のほとんどは、なぜ血圧が上がったのか原因が不明です。単に血圧が高いということ自体が病気の本態だということで、これを本態性高血圧と呼びます。

本態性高血圧の場合、どういうメカニズムで血圧が上がるのかというと、そのごく初期は血流量がふえているだけで、血管抵抗は健康者と変わりないのです。ところで本態性高血圧という状態がほぼ完成した時期では、増加した血流量はまたふつうの状態に改善していて、いつのまにか血管抵抗が異常に高くになってしまっているのです。全世界の学者が半世紀以上もかかって研究しているのに、ほんとうの原因はまだ解明されていません。

今から55年も前のことですが、「本態性高血圧というのは特定の病気ではなく、複数の因子が関与して血圧を高くしているのだろうと解釈されたのです。

現在では、どのへんまで研究が進んでいるのかといえば、ごくごく簡単に言うと、「本態性高血圧とは、遺伝を背景とし、さまぎまな環境因子で発生する病気」と解釈されています。

遺伝が大きな因子

どんな人が高血圧になりやすいのかというと、大きく分けて遺伝因子と環境因子の2つあります。ひと口にいうと、遺伝が六割強、環境が4割弱という比率で高血圧の発生に関与するともいわれています。

遺伝については、調査があります。この血圧を支配する遺伝子数は現在20以上見つかっており、この数が一定数に達すると血圧値が上がりはじめ、この数が多いほど血圧の上昇が大となるわけです。しかし高血圧の濃厚な遺伝歴がある人でも、環境がよい場合には高血圧の発生時期が遅れてくるし、血圧上昇もさほど著明にならないようです。ところで環境因子については、気候、食事、時好、職業、ストレスなど多L方面から研究されているものの、いちばん影響が大きいのは食塩です。そして遺伝素因と環境条件とが複合的に関連し合いながら、血圧が上がってくるのです。

食塩が影響している

環境因子のなかで、最も注目され重要視されているのは、食塩です。実は食塩をほとんどとらない原住民は、年をとっても高血圧にならないのですが、より文化的生活で食塩をたくさんとるようになると、血圧が上がってくることが調査ずみです。このことからも、食塩と血圧とは深い関連のあることがわかります。

なぜ食塩が血圧を上げるのか?

ネズミに食塩を多量に摂取させたときに、血圧が上がる場合と、上がらない場合のあることが確認されました。要するに高血圧の遺伝素因をもっているネズミの腎臓では、余分に取りすぎた食塩を排泄させるのに、血圧を上げる必要があるのです。

人間でも高血圧では、赤血球や白血球をはじめ腎動脈壁にはナトリウムが異常に高濃度です。これは、細胞内のナトリウムを細胞外へくみ出す働きが不十分なことを示しています。

体内では、ナトリウムは細胞外に、カリウムは細胞内に圧倒的に多く存在しています。ですから、ナトリウムは細胞外から細胞内へもれ込みやすいし、カリウムは逆に細胞内から細胞外へもれ出しやすくなっています。ところが必要以上に大量の食塩をとると、細胞外のナトリウムがふえ、これがいっせいに細胞内へもれ込みます。細胞内へナトリウムがたまるのは生理的にぐあいが悪いために、細胞膜では細胞内の余分なナトリウムを細胞外のカリウムと入れかえるメカニズム( ナトリウムポンプという)が作動します。

健康な人の場合、余分な食塩は、腎臓から排除されます。しかし高血圧の遺伝素因をもった人の腎臓では、ナトリウム排除機能が低下しており、どうしても体内にたまりがちとなります。すると、脳組織からナトリウム利尿ホルモンが分泌されます。このホルモンは、腎臓の尿細管でナトリウムが再吸収されるのを抑制する働きがあるのです。
これは腎臓からのナトリウム排泄には合理的な結果をもたらしますが、実は同時に、細胞内ではナトリウムポンプの働きを封じ込める余計な仕事に手を出すのです。

ところが、細胞内にたまったナトリウムは、細胞外のカルシウムと入れかわる反応がおこります。この反応は、細胞内にナトリウムがたまりすぎるのを防ぐには合理的ですが、ナトリウムと代わって細胞内へ入り込んだカルシウムは、とんだ悪者で、筋肉線維を収縮させるいたずらをします。これが細動脈の細胞でおこったとなないると、細動脈はいっせいに収縮し、内腔が狭くなり、血管抵抗が高まってしまうのです。これが本態性高血圧の成りたちに大きく関与しているのではないかと考えられています。

遺伝意外に血圧を上げる要因となるもの

  • 食塩のとりすぎ
  • 肥満
  • 運動不足
  • ストレス
  • 皮膚の刺激

高血圧を維持する因子

レニン-アンジオテンシン系

本態性高血圧症のなかには、レニンという物質がふえている人が15%て程度います。このレニンは、腎臓から分泌されるたんばく分解酵素で、血管の収縮に関係をもっています。つまりレニンは、血液中のアンジオテンシノーゲンに働いて、アンジオテンシンⅠ という物質を作り出します。
これはさらに肝臓や各組織に含まれる変換酵素の作用を受けて、アンジオテンシンⅡにかわりますが、これこそ強力な血管収縮作用をもっているのです。アンジオテンシンⅡは、同時に副腎皮質に働いて、アルドステロンの分泌を促し、これがさらに腎臓の薯糸球体細胞を刺激してレニンの分泌を促すというぐあいに悪循環をくり返します。ノルアドレナリンとアドレナリンの作用本態性高血圧の初期には、血液中にノルアドレナリンというホルモンがふえていますが、このことは、本態性高血圧の発症に交感神経の緊張克進が重要な働きをしていることを教えます。そして、この初期に腎臓からの食塩排泄機能の低下があることもわかっています。

ちろん交感神経の緊張が高ますいると、副腎髄質からノルアドレナリンやアドレナリンの分泌も促されるのですが、それだけでなく、レニン-アンジオテンシン系の賦括にもつながっています。要するに、本態性高血圧の発生に重要な因子として現在わかっているのは、

  1. 交感神経の緊張克進
  2. 体内の食塩停滞

こうして高血圧が発生し、その状態が長く続いているうちに交感神経の緊張克進状態は目だたなくなり、増加した血流量も元に戻ります。この時期では血管抵抗の高まりが目だつのですが、くわしく調べてみると、細動脈が単に収縮して抵抗を高めているのではなく、細動脈が肥厚して内腔を狭めているのです。

1件のコメント

  1. ピンバック: 腎硬化症 | Condition

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