暑さ

脱水状態は血栓をつくってしまう

高血圧は冬の寒冷が危険だということは常識です。それなら夏は安心かというと、実はそうではないのです。
脳卒中や心筋梗塞という病気が冬にふえるのは当たり前ですが、こういった病気は夏でも発生しているのです。心臓血管系の病気で命を落とす人が寒い季節に多いことは、国際的な常識でもありますが、ただここで例外が1つ知られています。
それはオーストラリアのシドニーで、心筋梗塞で亡くなる人が、冬に比べて夏のほうが多いのです。オーストラリアは赤道の南側にありますから、日本をはじめ欧州やアメリカの気候と夏冬が逆になっていますが、そういう意味ではなくて、シドニーでは、実際に寒い季節よりも暑い季節のほうが心筋梗塞をおこしやすいのです。これはどうしたことかというと、シドニーの冬は暖冬ですごしやすいのですが、夏は酷暑そのもので、このために脱水傾向になります。その結果、血液がこくなり、血液が凝固しやすくなって、血栓症を合併するからなのです。つまり、冠状動脈の血栓症が心筋梗塞につながるというわけです。
それでは、南太平洋やアフリカも気候はシドニーと同じですから、心筋梗塞が夏に多いはずだと考えられますが、実はそうではないのです。

というのは、心筋梗塞という病気は、栄養がよすぎてコレステロール値の高い国民はかかるものの、栄養の悪い開発途上国の人たちはかからないからです。
クーラーが普及していないころの日本で酷暑の夏を迎えたことがあります。このときは、夏だというのに、高齢者がひんばんに脳血栓や心筋梗塞に襲われました。これは高齢者が環境変化に対する順応性の低下のため、暑さで脱水をきたしたからなのです。

カリウム不足に要注意

また、汗にはナトリウムやカリウムも含まれていますが、このカリウムの放出が心筋梗塞の引き金となります。カリウムは、筋肉の細胞内に含まれて
いて、筋肉の収縮に関与していますが、真夏に、大量の汗といっしょにカリウムも流れ出て、心臓の筋肉内にあるカリウムが減ってしまうと、心筋梗塞に襲われるというわけです。

カリウムは、いつもナトリウムと手をとり合って体外に出ていく性質をもっています。したがって、利尿降庄薬を長期に服用している患者さんは、積極的にナトリウムを体外に出すと同時に、カリウムも外に出してしまうので要注意です。カリウムを含んでいる野菜やくだものを努めてとりましょう。

クーラーや冷房の冷気にも注意をはらう

もう1つ夏に気をつけたいのは、クーラーです。皮膚に強い刺激が加えられると、血圧は急上昇します。戸外の熱気から急にクーラーの冷気に身を包まれると、これが強い皮膚刺激となり、血圧を上げてしまうのです。

特に夏は、皮下の毛細血管が冬に比べて拡張しており、毛穴が広がり、汗を出して熱を放散させやすい状態にあります。そのからだを、自然のしくみに逆らって無理に冷やすために、水分その他の代謝のバランスがくずれてしまいます。
これは健康な人にとってもよいわけがありません。まして、健康な人より高血圧の人ほど冷気に弱いのですから、いっそう気をつけなければなりません。
さらに、動脈硬化が進んでいる高齢者の場合には、血管が弱っているのでなおさらのことです。クーラーが効きすぎた状態というのは、外気温との差が五度以上ある場合です。寒い部屋に長くいるとそのうちからだがなれてしまいますが、初めに震え上がるほどの冷えを感じたら、冷えすぎです。暑い外気にふれて家に帰り、いきなりクーラーの前で涼むなどということのないように注意します。オフィスや会社で冷房が強すぎて帰宅すると暑いというのは血圧が変動するので注意しなければなりません。
からだは、入ってくる水分と出ていく水分が均等になっています。温和な気候下で安静な生活をした場合、1日にどうしても必要な水分は、不可避尿400mlと不惑蒸泄900mlを足した1300mlで、これを補わないと脱水状態になってしまいます。
外出でもしようものなら、1500mlほど汗をかきます。汗の分だけ飲水量をふやせば問題はありませんが、高齢者では、のどの渇きを覚えにくいので、うっかりすると脱水状態をおこします。また、高齢者の腎臓は尿をこくする機能が低下しているために、不可避尿の量も多めに必要ですから、特に水分の補給には気を配ってください。

寒冷

高血圧の敵「寒さ」

個人個人の血圧は、高い人もあり低い人もありますが、同じ人でも、血圧は夏に低く冬に高いものです。仕組みは、冬期は皮膚が寒冷刺激にさらされるからです。もともと皮膚が刺激を受けると、交感神経が興奮して血圧を上げるのですが、この刺激は、疼痛でも、熱湯でも、寒冷でも変わりがありません。
しかし冬は、急に寒い環境にさらされやすいので要注意です。

寒さのために末梢血管が収縮し、血管の抵抗が大きくなって、血圧が上がってしまうのです。それと同時に、血液の凝固性も高まりますから、脳や心臓の事故はどうしても冬におこりがちとなります。

寒さから身を守るポイント

部屋全体を温め適温に
冬は、部屋全体を20度前後に暖めるように工夫しますよく、コタツだけで身を縮めている人がいますが、これでは下半身だけしか暖まらず、上半身は冷えきった環境におかれているのです。
このため肩や首すじの血液循環が悪くなり、肩がこったり、頭痛がおこったりしがちです。部屋の温度が奪われるのは窓と床面ですから、窓にはカーテンを二重に引き、床面はふかふかのじゅうたんを敷くとよいでしょう。
これは熟の不良導体である空気の層で、保温効果を高めるためです。なお、私たちのからだは急激な五度以上の温度差に弱いので、冷えきった廊下などに出るときは、全身の保温に十分注意し、子供のように素足で廊下を歩くような無精なまねはしないことです。
外出のときは、防寒を心がける
特に体温が奪われやすいのは胴体です。ふだん露出している顔面や指先などは、皮膚温が低いのですが、胴体の皮膚温は高いので外気温との差が大きく、それだけ幅射熟として体温が逃げやすいものです。したがって外出のときは、面倒がらずに、重ね着で空気の層を幾重にもつくるなり、防寒に気を配りましょう。
特に胴体に近い首すじや大腿部をカバーしないと、からだはすぐ冷えきってしまいます。ふだん露出になれている手先も、酷寒の際は手袋をし、また、マフラーの着用を忘れてはいけません。それから、冷たい空気を吸っただけで冠状動脈が収縮することも知られていますから、特にこがらしの季節には、マスクがたいせつです。
なお、飲酒後は、皮膚の血管が開いて皮膚温が高まっていますから、それだけ体温は奪われやすくなっています。宴会からの帰宅時には特に防寒を心がけます。
洗面はお湯で
4度の水に手を突っ込んで、どのくらい血圧が上がるかをみる寒冷昇庄試験という検査があります。これによると、ふだん血圧が高い人は、正常血圧の人より著しく血圧が上昇します。
特に寒い冬の洗面や食器洗い、ぞうきんがけなどは十分に注意してください。冷たいのをがまんして水を使うと、血圧は30~40mmHgも上がります。しかもこの血圧上昇は急激ですから、脳や心臓の動脈硬化を合併している場合は、危険きわまりないのです。

できれば夜の排尿は溲瓶で行う
せっかく熟睡して、血圧も落ち着いていたのに、尿意を催して目がさめることがあります。ふだん血圧が高くない人でも、年をとると腎臓機能が低下しますから、昼はあまり尿が出ないのに、夜間安静にしていると、腎臓の機能が活発になってきて、どうしても1~2度は起きるようになるものです。これが夏なら話は別ですが、冬で家屋がいちばん冷えきっている時刻に、トイレに起き出すというのは、血圧の揺さぶりで事故をおこす原因となりかねません。
また、男性の場合は、排尿で急激な血圧低下をおこすこともあり、これがとで脳血栓をおこしたり、失神したりすることもあります。ですから、冬の夜間の排尿は、シビンを使うのが安全です。これを面倒くさがっていると、綱渡りと同じで、いずれ事故をおこしましょう。

生活をする上で重要な6項目

  1. 減塩
    減塩は高血圧治療の基本です。日ごろ大量の食塩をとりすぎる日本の食習慣にならされている以上、ここは、なんとしてでも食塩を減らす努力が必要です。これによって降圧薬の使用量が減れば、それだけ副作用の心配も減るし、また一方で、血圧の予期しなの上昇が防げるのです。
  2. 運動不足に注意
    運動不足の人は、ちょっとした動作で容易に血圧が上がってしまいます。また、体重がふえて高血圧を増悪させるだけではなく、血液の凝固性を克進させて血栓が生じやすい危険もあるのです。努めてからだを動かしましょう。
  3. 禁煙
    喫煙によるニコチンや一酸化炭素は、粥状硬化症の進展に拍車をかけますから、たとえ血圧を下げておいても、心筋梗塞をおこす危険があります。またすでに冠状動脈硬化がおこっている場合は、タバコを吸って遊離脂肪酸をふやしただけで心筋梗塞が発生します。
  4. 肥満に注意
    太りすぎは巷苅物ていると降圧薬が効きにく〈ストレスを飼いならすそれだけ大量の薬を使う必要が出てきます。また肥満すると、血清のコレステロールや中性脂肪がふ、え、糖尿病も発生しやすくなります。これらは粥状硬化症の進展に拍車をかけるもとです。さらに肥満体の血圧は不慮に上昇しやすいというぐあいに、まったく悪いことずくめです。
  5. ストレスに注意
    人は社社会生活をしている以上、ストレスを避けて通るわけにはいきません。ストレスを受ければ、血圧はいつになく上昇するし、コレステロールもふえます。要は、ストレス解消法を身につけ、一刻も早く自己のペースをとり戻すことです。こうすれば、血圧を上がりっばなしにしないですむのです。
  6. 血圧を揺さぶらない
    特に脳や心臓に動脈硬化症を併発している場合は、血圧が不意に上がると、脳卒中や心筋梗塞をおこす危険が大きいのです。これは、ふだんの行状が大きく関係してきます。過労、寝不足、不摂生など、心あたりのある人は、重々注意してください。

食事のタブー

高血圧を正しく治療するうえで、食事は非常に重要な意味をもっています。その理由の第一は、私たち日本人が食塩をとりすぎる食習慣にあり、これをなんとかしないことには高血圧の害に拍車をかけるということです。

第二の理由は、高血圧の場合、栄養よすぎると心筋梗塞をおこし、また逆に栄養が悪いと脳卒中がおこるというぐあいに、栄養のバランスが実にむずかしく、その人の病状に応じて工夫する必要があるのです。次に示したのは、うっかりまちがいやすい食べ方です。思いあたるふしがあったら、すぐにでも改善します。

空腹が満たされればOK

栄養をとるという意味と満腹するという意味は別問題です。好物ばかりを食べて空腹を満たしたとしても、これは単に熱量が補給されたというだけで、からだの構成や代謝に必要な栄養成分がバランスよくとれたということにはなりません。

辛いものは避ける

からくない料理にも、食塩が隠れて入っていることがあります。また、みそ汁やうどんのかけ汁がからいからといって、お湯を足してうすめればよいというものではありません。全部飲みほしてしまえば、塩分量は結局同じことなのです。

バターや卵や有害

バターや卵、獣肉をたくさんとりすぎる欧米では、バターをマーガリンにかえ、獣肉を鶏肉で代用することがすすめられても当然ですが、これはバターや獣肉が健康に有害だという意味ではありません。要はとりすぎが悪いのですから、ふだんバターや卵をほとんど食べていない人までが、これを敬遠する理由はどこにもありません。

田舎料理をバカにする

動物性脂肪をとりすぎてもいないのに血液中のコレステロールがふえている人は、食物繊維の不足に原因があります。「イモの煮物はいなか料理」などとバカにしてはいけません。血圧が高い人は食物繊維を摂ることを習慣化しなければなりません。

ため食い

「朝食抜き、夕食ため食い」をすると、太ります。また動物性脂肪をまとめて食べたあとは、血液が血管の中でかたまりやすく、動脈硬化が進んでいると、脳血栓や心筋梗塞の危険があります。

他人のでまかせを信用してしまう

現状では、効果が確実で副作用の少ない降圧薬がいっぱいあります。クコや紅茶キノコ、柿の葉ジュースなどといった民間薬にとびつく必要はないのです。まず医師を信頼してください。

1日2回以上外食する

これでは食塩のとりすぎと野菜不足は必定です。おなかいっぱいになっても、栄養のバランスがくずれては、病気は増悪するいっぼうです。特に食塩過多は高血圧を悪くするばかりです。

1日2杯以上味噌汁(スープなども含む)を飲む

汁物は、食塩がたっぶり入っているわりに塩からさを感じさせません。和食好きの外食党は、うっかりすると1日3杯も飲む人がいます。せいぜい1日1杯までにします。

どんなものにもしょうゆ、ウスターソースをかける

料理の風味を、しょうゆやウスターソースで消すことはないでしょう。これでは文明人の面よごしで、塩食い人種と呼ばれてもしかたがありませんしょうゆは割り醤油がおすすめです。

外食

外食について最低限の知識

外食ばかりしていると、からだによくない」というイメージが定着してしまっている人も多いです。しかしこれは、外食自体がからだに有害な食事だというわけではなくて、限られた食品だけで空腹感を満たすという、きわめて栄養のバランスが悪いところに問題があるのです。

なぜそうなるのかは値段とのかかわりです。栄養のバランスを目的とするなら、あれやこれや種類を多く注文しなければなりません。しかし外食は手間賃がプラスされていますから、たかが湯豆腐や野菜サラダだけと思っても、値段がびっくりするほど高いものです。

客の側からは、財布とのからみで、自分の好みを選ぶわけですから、限度があります。これでは栄養のバランスがくずれても当然です。たとえば、ラーメン、そば、うどんをはじめ、カレーライス、ピラフ、スパゲッティ、シュウマイ、ギョーザなどは、糖質過多でたんばく質の欠乏はNGという意味ではありません。卵を加えて月見うどんとしたり、また具の多い鍋焼きうどんや五目そばを選ぶなり、あとで牛乳とくだものを買って補ったり、いろいろ手段はあるわけです。

近ごろのレストランでは、昼食に定食を提供しているところがあります。焼き魚、魚フライ、レバーのニラいため、八宝菜などをご飯と組み合わせた外食は、たんばく質を補給する意味では好ましいのですが、ミネラルやビタミン不足になることは必定です。特に定食にみそ汁がついているとなると、家庭と外とで1日に2杯も飲むことになってしまい、これでは塩づけです。天どんやカツどんなどのどんぶり物は、たんばく質を補強しているとはい、え、こってりした味を生かすために食塩がたっぶり使われているうえに、野菜不足はいかんともなし得ません。

外食はこうやってバランスを取る

メニュー

デメリット

改善策
かけそば・かけうどん
  • 糖質過多・たんぱく質不足
  • 食塩過多
  • ビタミン・ミネラル不足
  • 卵をトッピングして月見にする
  • 汁を残す
  • 食後に牛乳・果物を追加する
どんぶりもの
  • 糖質過多
  • 塩分過多
  • ビタミン・ミネラル不足
  • 食後に果物を食べる
寿司
  • 塩分過多
  • ビタミン・ミネラル不足
  • シャリを残す
  • 果物を補う
パスタ・ピラフ
  • 糖質過多
  • ビタミン・ミネラル不足
  • 牛乳、果物を補う
定食
  • 塩分過多
  • 味噌汁、漬け物は残す
  • 茶碗蒸しや酢の物に変えられればベスト


外食は1日1回が基本

外食の特徴は、食塩が多すぎることと、栄養のアンバランスにあるのです。ということは、高血圧の人が外食をとるときは、1日に1回だけとし、他の2食は家庭食でバランスの狂いを是正するのが良策といえましょう。

合併症の食事の注意

日ごろ血圧の高い人が治療を受ける場合、診察や検査の結果、同じ高血圧の人でも、ある人は糖尿病を合併していたり、またある人は血清総コレステロール値が高かったり、血清尿酸値が高めだったりというぐあいに、血圧以外にも脳卒中や心筋梗塞に関連する異常所見をもっている場合が少なからずあります。
こういった場合、血圧を下げるために食塩を1日7gにおさえるというのは共通したことですが、そのほかに、どういう点に注意を向けなければいけないのかという概要をまとめています。

糖尿病

まず痩せる

たとえ血圧が薬で下がっているにせよ、糖尿病があると、血圧値の異常が軽度であっても血管はどんどん傷めつけられ、いずれ脳卒中や心筋梗塞に見舞われます。
ところで糖尿病の治療には優れた薬がたくさんありますが、これらを長く使っていると、かえって心筋梗塞をおこしやすくなるという調査もあります。
またある種の薬は、血糖を下げるには効果があるけれど、血管系の事故をおこしやすいという理由で、今は使われなくなったものがいくつもあるのです。一般に、糖尿病の人は太っていることが多いのですが、こういう場合は、糖尿病の薬を使うことよりも、まず肥満を是正するのが正しい治療法です。
肥満しているとインスリンの働きがうまくいかず、これをカバーするすいそうために過剰のインスリンが膵臓からう分泌されますが、これが附状硬化を促進するはめとなるのです。
やせるためには、標準体重と労働量を考慮に入れて、必要最低量の食事をとることです。同時に運動をすると、糖代謝が盛んになり、効果的です。

高血圧の治療に使われる降圧薬のなかに利尿薬がありますが、これは体内のカリウムを減らす副作用をもっています。もしカリウムが減ってしまうと、今まで血糖値が正常であった人でも糖尿病になることがわかっているくらいですから、すでに糖尿病にかかっている人は、たっぶりカリウムを食事で補っていかねばなりません。そのためにはカリウムの多い野菜やくだものをしっかりとっていただきたいのです。ただし、甘いくだものは、存外と熱量も多〈、これが肥満につながるので注意しなければなりません。この点は葉菜類はカリウムが多い反面、熱量はほとんどありませんので、好適な食べ物です。さらに葉菜類は食物繊維をたっぶり含んでいますから、同じ食事をしたところで、血糖値の急激な上昇は防げます。

コレステロール・中性脂肪が多い

太っている人は痩せる

太ると体内のコレステロール生産が増え、ますますコレステロールはふえます。また、ある程度の脂肪をとっている人たちは、太ると例外なく中性脂肪がふえてきます。肥満は降庄薬の必要量もふやしますが、降圧薬の量がふえると、長い間には副作用が出てこないともかぎりません。余分な熱量のとりすぎは、控えます。

脂肪の摂りすぎに注意

現代人の場合、脂肪のとりすぎだけが高脂質血症の理由とはいえません。しかし、日ごろおつき合いが多く、特にホテルでのフルコースを毎週食べているような人は、アメリカ人と同じ脂肪のとりすぎが原因となっています。ここは上手に残す工夫をしてほしいものです。丸めたバターも、デザートのアイスクリームも、ほどほどにしましょう。

食物繊維を十分に摂る

コレステロールが多い人のほとんこの副作用が特に出やすいのです。

アルコールを控える

酒飲みが痛風にかかりやすいというわけではありませんが、日ごろぜいたくな食事をしている人にとっては、アルコールが血清尿酸値を上げる原因となります。昔は白ワインなら安全だとか、蒸留酒ならその害がないとかいわれましたが、これはまちがいで、アルコール類なら、どんなタイプのものでも作用は同じです。アルコールの代わりに湯茶を多めにとって尿量をふやすことは、尿酸値をふやさないコツでもあります。糖尿病の人なら血糖が急上昇しない沖縄の泡盛がおすすめです。

尿酸が多い人

まずダイエット

尿酸がふえすぎると痛風という病気にかかりますが、痛風にかかっていない人でも、血清中の尿酸がふえると心筋梗塞にかかりやすくなることが知られています。そしてぐあいの悪いことに、利尿降圧薬が尿酸をふやす副作用をもっており、日ごろ太っている人では、この副作用が特に出やすいのです。

アルコールを控える

酒飲みが痛風にかかりやすいというわけではありませんが、日ごろぜいたくな食事をしている人にとっては、アルコールが血清尿酸値を上げる原因となります。昔は白ワインなら安全だとか、蒸留酒ならその害がないとかいわれましたが、これはまちがいで、アルコール類なら、どんなタイプのものでも作用は同じです。アルコールの代わりに湯茶を多めにとって尿量をふやすことは、尿酸値をふやさないコツでもあります。

動物性食品を芋類などにかえる

尿酸がプリン体を材料として作られるというところから、昔はプリン体含有量の多い食品(肉エキス、臓物など) をひかえるべきだと考、えられていたのですが、実はこのプリン体は、体内の糖質からも脂肪からも作られるのです。ここはむしろ、動物性食品を穀類や芋類といった植物性食品で置きかえることに重点をおいたほうが賢明です。

どうしてもダメなら薬を使う

高血圧治療のベースとして使われる利尿降庄薬は、血清尿酸値を上げる副作用をもっているのですが、食生活が今ほど豊かでなかった時代には、この副作用はほとんど出なかったのです。しかし昔の質素な食生活に戻れというのではありません。カロリーと動物性食品を制限してみて、それでもうまくいかない場合は、体内で尿酸が合成されにくくなる薬や、体内の尿酸が排泄されやすくなる薬を使えばよいのです。痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬についてはこちら。

心電図に異常がある

カリウムをしっかり摂る

高血圧の人にとって重要な心電図変化は、左心室肥大と心筋虚血の所見です。いずれも高血圧を長い間ほうっておいた証拠ですが、このままだと、心筋梗塞をおこす危険があると同時に、脳卒中をおこす確率も大きいのです。こういう人は、カリウムを積極的にとるように心がけてください。
高血圧の食事療法の第一が食塩の制限であり、カリウムはその補助手段としてたいせつです。ところが心筋梗塞の予防という意味では、カリウムの補給は、補助手段どころか積極的手段であるのです。これは、心筋内のカリウムが少ないと心筋の抵抗力が減り、酸素不足にさらされたとき、いとも簡単に梗塞をおこしてしまうからです。

アメリカの宇宙基地では、宇宙飛行士たちにオレンジジュースを欠かさず補給していますが、これは、宇宙船の中でのストレスに、心筋が十分耐えられるようにとの配慮なのです。実際にオレンジジュース200mlの中には0.4gといケ大量のカリウムが含まれています。
もちろんオレンジジュースだけがカリウムの多い食べ物ではありません。新鮮な野菜やくだものは、特にカリウム・ ナトリウム比が大きいのですから、積極的にとるようにおすすめします。

動物性脂肪を一気に大量に食べない

動物性脂肪は血液の凝固性を高める働きをもっています。いくら1日に必要なだけの脂肪だからといって、1回の食事だけに集中してとると、血栓症をおこす危険があります。

眼底に異常がある人

動物性食品をしっかりとる

同じ高血圧の場合でも、日本人は脳卒中にかかりやすく、欧米人は心筋梗塞にかかりやすいのですが、この違いは人種差というより、むしろ動物性食品のとり方に問題があるのです。
つまり獣肉や乳製品をとりすぎると冠状動脈硬化が進んで心筋梗塞になりますが、芋類や穀類といった糖質に偏った食生活をしていると、脳の細動脈が傷ついて脳卒中をおこすのです。
眼底に見る動脈は細動脈そのもので、しかも脳動脈に近い部位にありますから、眼底の動脈に異常があるということは、脳細動脈にも同じような異常があると考えてよいのです。ところで高血圧の正しい治療をしていると、眼底所見はある程度よくなってくることがわかっています。
この正しい治療とは、単に血圧を下げるだけでなく、栄養不足を改善させたり、乳製品をしっかりとったりすることです。特別な理由がないかぎり、牛乳は1日1本、卵は1日1個とることを心がけてください。もちろんバターを料理に上手に使うこともたいせつです。

食塩制限

脳動脈が傷んでいると、急激な血圧上昇に耐えきれなくなって、思わぬ事故がおこります。この不慮の血圧上昇は、細動脈の突然の収縮でおこりますが、細動脈の収縮をおこす引き金は交感神経の緊張です。
特に細動脈壁内の食塩含有量が多いと、交感神経のちょっとした緊張で、いとも簡単に細動脈は反応するのです。つまり、脳卒中予防という点からは、ふだん食塩のとりすぎを厳守し、細動脈壁内の食塩含有量をぜひとも減らしておく必要があるのです。眼底所見が進んでいる場合は、たとえ降庄薬でふだんリラックスしているときの血圧が下がっているからといって、安心しきってはいけないのです。1日7gを目標に、厳重に食塩制限を守ることが脳卒中予防のコツです。

尿に異常がある人

香辛料を控える

一般に尿検査というと、高血圧に関してはたんばく、糖、沈渣をしらべるわけですが、ここでは、尿たんばくが(+)だったり、尿沈渣で赤血球が出ている場合にしぼります。
もちろんこういった尿所見があったからといって、いきなり腎臓の病気と決めつけるわけにはいきません。膀胱の病気でも、尿路結石症でも同じような尿異常がおこります。こうした腎組織以外の病気のときは、その病気にかなった治療を受ければよいのですが、いろいろしらべてみて、これが腎臓自体の病気であるとわかった場合には、その原因は2つあります。1つは高血圧のために腎臓の細動脈が傷ついて腎臓が障害を受けたタイプであり、もう1つは、元来、腎臓に病気があってその結果血圧が上がっているというタイプです。いずれにせよ、腎臓が原因でたんばくや赤血球が尿に出ているときは、腎臓を刺激することは禁物です。この意味で、腎臓を刺激する香辛料はとりすぎないように留意する必要があります。しかし、腎臓の機能そのものが障害されていないのなら、食事でのたんばく質やカリウムまで制限する必要はありません。
高血圧による腎臓の細動脈病変は、脳の細動脈病変と似て、栄養が悪いとどんどん進みます。ですから今まで粗食だった人は、動物性食品をしっかりとり、高血圧に対して腎臓の細動脈の抵抗を高める必要があります。

食塩を正しく制限する

食塩は多くとればとるだけ、腎臓の細動脈に負担をかけます。この時点で悪い食習慣を是正しておかないと、いずれ腎臓が広い範囲に障害をおこし、結局は腎機能不全という最悪の状態に追い込むことになります。こうなると、もう食事療法だけではどうにもならなくなります。

腎機能に障害がある

良質のたんぱく質を摂る

元来、食物中のたんばく質とからだを構成しているたんばく質とは、アミノ酸構成が違っており、考えなしにたんばく質をとると、足りないアミノ酸もあれば、余分なアミノ酸もあるということになります。腎臓の機能が健全なら、不必要なアミノ酸は、尿素その他の窒素成分として尿中に排泄されますが、機能に障害があると、排泄不十分のため、体内に不要の窒素成分がたまりすぎ、危険状態を招きます。したがって、腎機能に障害がある場合は、アミノ酸の過不足がないように食事に気をつかうことがたいせつです。
特に米やパンに含まれるたんばく質は、アミノ酸構成がからだのたんばく質とはかなり違っており、不必要な窒素成分が体内に停滞する結果となります。食べすぎないようにしてください。
体内で過不足なく利用できるたんばく質は、卵白と牛乳です。卵白なら、体重60kgの人でも25gとれば十分です。

カリウムの制限

腎臓の機能が悪いと、カリウムの排泄がうまくいかなくなりますが、カリウムは体内にたまった窒素成分と相まって尿毒症の原因となります。カリウムは野菜に多いので、野菜を食べるときは、細かく切って十分に水洗いするか、よく煮て、カリウムが少なくなった状態でとる必要があります。野菜を食べるときは、細かく切って十分に水洗いするか、よく煮て、カリウムが少なくなった状態でとる必要があります。
血圧が高い場合には、カリウムを十分に摂るとナトリウムが排泄されて血圧が下がりますが腎機能が低下している場合、カリウムを摂りすぎると心臓麻痺を起こすことになるので十分注意します。腎臓が悪くなっており、タンパク尿や血尿がでていてもクレアチニンやBUNなどの数値が正常であれば腎機能は正常です。カリウムはしっかり摂るようにします。

食物繊維が重要

食物繊維がすばらしい理由

食物繊維の重要性が叫ばれてだいぶ経過しました。現代人にその重要性は伝わったのでしょうか?、中央アフリカに住む原住民が大腸がんにかからないのは、たくさん食物繊維をとるおかげで、腸内で細菌が作り出した発がん物質が洗い流されてしまうからしいという考え方が動物実験で確認されたのは、20年も前のことです。

また食物繊維が、血液中にふえすぎたコレステロール値を下げる働きをもっていることは、もっと前からわかっています。食物繊維というと野菜に多いと誰もが知っていますが、ひと口に食物繊維といっても、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナンといろいろあります。

ところで、食物繊推がなぜコレステロール値を下げるのかというと、腸の中で胆汁酸を吸着して便といっしょに排泄させてしまうことに理由があります。胆汁酸は脂肪の消化を助けるために胆のうから出てきますが、目的を達したあとは、小腸の末端部で完全に再吸収され、肝臓へ戻り再び利用されます。

戦後まもないころは、1日に20g近く食物繊維をとっていましたが、食物繊維が多いと胆汁酸が再吸収されずに、どんどん失われてしまいます。そこで胆汁酸を減らさないために、体内で生産されているコレステロールが次々と胆汁酸に変わっていくのです。

ところが、最近の食生活は、7分づきのご飯が白米になっており、パンというと精製した小麦粉でル作ってあり、イモやインゲンの煮物はいなか料理とバカにして食べないというありさまですから、食物繊維の摂取量はかなり減りました。

ここ10数年はおよそ16gで推移しています。これでは胆汁酸が足りなくなることはないので、1日に500mg~1000mg生産されているコレステロールは使われようがなく、どんどん血液中に、増えていくというわけです。

実際に日本では、ふだんコレステロールや脂肪を摂りすぎてもいないのに血清総コレステロールが異常にふえてしまっている人が急増しています。
この原因こそ実は食物繊維不足なのです。1日20~25gを目標に摂取したいものです。コレステロールを確実に下げる薬は世界中のどの国にもなく、日常の食事をしらべても脂肪やコレステロールのとりすぎはないし、ほとほと困ったのですが、グルコマンナンという食物繊維をたっぶりもっているコンニャク精粉をためしに飲んでみたところ、血清総コレステロールはみごとに下がりました。

もう1つの食物繊維の効果は、糖尿病の予防と治療です。
食物繊維の多い食べ物をとると、胃内停滞時間が長くなり、その結果、食べ物を腸へ少しずつしか送り込めません。このことは、血液中のブドウ糖が急速に上昇するのを防ぐという意義をもっているのです。また、海藻類はアルギン酸という食物繊維をいっぱい含んでいます。このアルギン酸は、腸の中でナトリウムを吸着して便といっしょに排泄されますが、これによって血圧が下がったという成績が知られています。

なお食物繊維は、鉄、鋼、亜鉛といった健康にたいせつな微量元素を吸着し、腸での吸収を妨げるという悪い面をもっています。その意味では、食物繊維を薬としてのむのではなく、自然の食事としてとるのがよいのです。

どんな食物繊維がいいか

野菜はおおぎっばにいって食物繊維を1%含んでいます。しかしキャベツだけで10gの食物繊維をとろうとすると、1kgも食べなければなりません。
野菜や葉は煮たりゆでたりすれば食べやすくなりますから、おひたしや鍋物にするとよいでしょう。なにも野菜だけで食物繊維をとらなくてもよいのです。くだものにはペクチンというりっばな食物繊維が含まれています。
なかでもリンゴは、2~5%もの大量のペクチンを含んでいます。皮の内側に多いので、皮ごと食べることです。そのほかインゲン、トウモロコシ、イモ類なども積極的にとるといいでしょう。
こんな食習慣はNG、コレステロール値を下げる4つの食習慣は特にNGですので注意します。

コレステロール

ほとんどは体内で作られる

血液中のコレステロールは、ほとんどが体内で作り出されたものであり、食品としてとったコレステロールはほんの一部にしかすぎません。

それにしてもコレステロールをたくさん食べると血清コレステロールがふえるという理由で、米国では1日300mgに制限するようにすすめられています。ところで以前は、コレステロールは、とればとるほど血清コレステロールがふえるものと考、えられていましたが、食品としてとったコレステロールは4割が吸収されるだけで、残る6割は便といっしょに排泄されるという成績も知られており、とにかく現在では、すでにある程度のコレステロールをとっている人が、さらにコレステロールを多くとっても、血清コレステロール値はたいして変わらないということがわかってきたのです。

たとえば食品中のコレステロールが100mgまでの範囲では、血清コレステロールはいっこうにふえませんが、100mgをこすとその分に応じて上昇してきます。

ところが300~400mg以上となると、血清コレステロール値は頭打ちとなって、それ以上はあまり上昇してこないのです。

アメリカの食習慣では、コレステロールは1日に400~500mgとりますが、これを300mgにおさえると約10mgコレステロール値が下がるという計算となります。

卵がいけないのはアメリカの話

アメリカ人がとるコレステロールの約半分は卵黄です。それも卵そのものとしてとる分が半分、残る半分は卵黄を使った食品です。アメリカ人の食習慣では、肉や乳製品を制限することはたいへんむずかしいところから、せめて卵ぐらいはがまんするようにといわれているわけがここにあります。

しかし、だからといって日本人がこれを真に受けることはありません。というのは、コレステロールを食べても血清コレステロールがふえる人とふえない人とがあり、特に日本人はふえない体質の人が多いようです。

その理由の1つは、コレステロールを食べても、同時に十分な脂肪をとらないことには腸から吸収されにくいという点にありましょう。つまり日本人は、欧米人ほどは脂肪をとっていないのです。

安定したコレステロール値のために積極的に摂りたい5つの栄養素を習慣化するといいでしょう。

脂肪・油

脂肪はコレステロール量に関係する

高血圧の重要な合併症である心筋梗塞は、血清稔コレステロールが増えれば増えるほど多発します。血清総コレステロール値が高く、日本の4~5倍も心筋梗塞で死亡する欧米諸国では、コレステロールが悪者扱いされても当然のことです。

しかし「コレステロールは低いほうが安全だ」という欧米の考え方をそのまま日本にもち込んで、はたしてよいものなのでしょうか。この点については、日本に多発している脳卒中という病気が、コレステロール値の低い人が多いのです。
コレステロールとは?
そして、血液のコレステロールに大きく影響しているのが、ひと口にいえば脂肪なのです。

植物性ならいいは本当?

一般に、動物性脂肪はコレステロールをふやし、植物性脂肪はコレステロールを減らすといわれていますが、そんな単純なものではありません。

実は同じ脂肪でも、それを構成している脂肪酸には3つの種類があって、不飽和基を1つだけもっている一価不飽和脂肪酸はコレステロールを下げることが最近わかりました。
一方、飽和脂肪酸はコレステロールを上げるといわれていますが、この作用があるのはラウリン酸、ミリステン酸、パルミナン酸だけです。

そして不飽和基を2つ以上もっている多価不飽和脂肪酸はコレステロールを下げるといわれていますが、実際にコレステロールを下げるのは、植物油としては米油、コーン油、ペニバナ油、小麦胚芽油、ヒマワリ油だけです。

これに対し、魚に含まれる油は中性脂肪も下げる作用をもっています。

血栓の予防にEPA・DHAhttps://more-supplement.info/use/archives/30

また、ひと口に植物性脂肪といっても、飽和脂肪酸のほうが多価不飽和脂肪酸より多いヤシ油やココナツ抽は、コレステロールをふやす働きがあるのです。もう少し詳しくいうと、飽和脂肪酸がコレステロールをふやす力は、多価不飽和脂肪酸がコレステロールを減らす力より2倍も強力なのです。

では多価不飽和脂肪酸の含有量が多ければ多いほどコレステロール値を下げる力が大きいのかというと、必ずしもそうでありません。米(ヌカ)油は天ぶら油として多価不飽和脂肪酸を35%しか含んでいませんが、これを80%含んでいるペニバナ油( サフラワー油)とたいして変わらない働きをもっています。なお多価不飽和脂肪酸は、n・6系列とn・3系列があります。n・6系列とn・3系などはダイエットにも必須です。

魚と肉の作用は正反対

ところで近年、EPA(エイコサペンタエン酸) と呼ばれる多価不飽和脂肪酸が注目されています。これは、グリーンランドに住むイヌイットが粥状硬化症をおこしにくいということに研究の発端があるのですが、彼らの体内にはトロンボキサンと呼ばれる物質がまったくといってよいほど作られていません。この物質は、血管壁に血小板を呼び寄せて粥状硬化発生のきっかけを作り出す作用があって、アラキドン酸から作られるのですが、イヌイットの体内には、アラキドン」酸がEPAに置きかわっているのです。

EPAは魚油に含まれていますが、タイやカレイといった高級魚には意外と少なく、むしろイワシ、サバ、サンマ、アジといった、俗に青物と呼ばれる大衆魚に大量含まれています。最近は、高級魚は養殖されたものが多く流通しているので、体のことを考えたら大衆魚のほうがおすすめです。

また体内でEPAから合成されるのがDHA(ドコサヘキサエン酸)で、これも血液凝固をおさえる作用があります。

マグロ(特に目)やブリ、サバ、ウナギなどに多く含まれます。これに対して獣肉の脂肪は、トロンボキサンをたくさん作り、粥状硬化を促すだけでなく、血液の凝固性を高めますから、血管内で血液が固まりやすくなり、血栓症をひきおこす危険性をもっているということになります。それでは、「獣肉の脂肪はコレステロールの問題だけでなく、いろいろないたずらをするから、多価不飽和脂肪酸の多い植物油や魚の油が安全だ」と考える人も多いことでしょう。

ところがこの多価不飽和脂肪酸が多すぎると、またやっかいなことがおこります。多価不飽和脂肪酸は実に不安定な存在で、脂肪の過酸化物を作りやすいのです。これが老化現象に拍車をかけることは古くから知られていますが、また同時に粥状硬化の発生にも一役買っているほか、発がん物質の作用を強める作用ももっているというありさまです。

このためWHOでは、多価不飽和脂肪酸は総熱量の10%におさえるようにと警告しています。ところで、コルフ島やクレタ島に住むギリシャの人が動脈硬化にもかかりにくいし、がんにもかかりにくいというのは有名です。
これは彼らが浴びるほど使うオリーブ油に理由があるのではないかと考、えられていますが、このオリーブ油の主成分は一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸です。

では一価不飽和脂叩肪酸ならからだによいのかというと、必ずしもそうではないのです。エルカ酸という一価不飽和脂肪酸は心臓の筋肉を傷める作用をもっています。これはナタネ油に多量含まれていますので、WHO では「ナタネ油を食用とするとき、低エルカ酸油を使うか、ほかの抽と混ぜて使うように」と勧告しています。

脂肪の上手な摂り方

以同じ脂肪といっても、一方に偏りすぎるといろいろな問題がおこります。国民栄養調査に基づいて脂肪摂取の比率を次のように定めています。

  • 望ましい脂質エネルギー比率は、総摂取エネルギーの20~25%
  • 飽和:一価不飽和:多価不飽和=3:4:3
  • n-6:n-3=4:1

たんぱく質

たんぱく質が不足すると脳卒中の原因になる

実験用のネズミとして、高血圧自然発症ラット、脳卒中易発症ラットと呼ばれるネズミを作り出しました。これらのネズミは遺伝素因が強いため、ほうっておいてもほとんどがが高血圧になります。

アメリカの研究者がこのネズミを本国へ持ち帰り、いぎ実験を始めてみると、思うように血圧は上がってこないし、脳卒中にもならないという結果が出ました。

日本では血圧が上がるのに、なぜアメリカでは血圧が上がらないのえさかというと、実は餌の成分に違いがあったのです。日本もアメリカも、塩の量は同じだったのですが、たんばく質の含有量がアメリカの餌のほうが格段と多かったのです。

また、脳卒中の多い農村と脳卒中の少ない魚村とを比較すると、魚村のほうが尿中に多くの無機硫酸を含んでいることが調査されました。この理由は、魚村のA食事には魚介類が多いことにあるのですが、これは、たんばく質をきちんととっていると、血管が丈夫になり、脳卒中になりにくいという1つの暗示です。

高タンパクは食塩の害も減らす

もうひとつの重要な研究があります。これは、高血圧の家族歴をもっているが現在のところは正常血圧である群と、高血圧や脳卒中の家族歴をもたない正常血圧群について、それぞれ1日25gずつの食塩を摂取させたものです。そうすると、高血圧の素因をもっている群の血圧ははっきり上昇したのですが、素因をもっていない群の血圧はほとんど上がりませんでした。
ここでいったん減塩食に戻しておいて、素因をもつ人たちに、1日25gの食塩摂取を再び行いましたが、今度は動物性たんばく質を40gから110gに増加してみたのです。すると、前は血圧が上がったのに、今度はあまり上がらないという結果が出ました。そして尿中へナトリウムがどんどん排泄されていることが確かめられました。つまり動物性たんばく質は、ナトリウム排…泄を促進する作用があり、これが食塩の悪影響を打ち消したのだということがわかったのです。

「日本人の栄養所要量」によると、成人では中等度の活動の際、男性で70g、女性で60gのたんばく質が必要です。そして動物性と植物性を約半々の割合でとることが疾病予防の上でたいせつだと提言をしでいます。
魚、大豆、野菜、海藻を積極的に摂る | 心臓病の基礎知識
かつて脳卒中が多発した農村では、動物性たんばく質の摂取が少なめでした。現在では食生活が改善されて増加傾向にあります。米どころに住む人たちは、どうしても食塩過多になりがちですから、塩分の害を防ぐ動物性たんばく質を積極的にとりましょう。

動物性と植物性の違い

たんばく質というと、アミノ酸がたくさん結合して構成されたものですが、このうち、血圧を下げ、脳卒中を予防する作用が強いアミノ酸というと、メチオニン、リジン、プロリン、タウリンといったところです。特に魚のたんばく質はこの効果が強いといわれていますが、最近ブームになっている大豆のたんばく質には、血圧を下げる力がほとんどありません。

この二つのたんばく質の違いはどこにあるかというと、魚がもっているメチオニンというアミノ酸が大豆にはほとんどないのです。これは大豆に限った話ではなく、植物性たんばく質全般にいえることで、メチオニンをほとんど含んでいないのです。高血圧と脳卒中を予防する意味では、特に動物性たんばく質が重要だということがおわかりいただけたと思います。

それでは動物性たんばく質はできるだけ多くとればよいのかというと、これまた早計なのです。というのは、動物性たんばく質は、動物実験上、粥状硬化症を促すことが古くからわかっているからです。

これに対して植物性たんばく質は、粥状硬化症の発生には関係ないとされています。それどころか、大豆を食べるとコレステロール低下に効果があります。
大豆たんばく質がコレステロール値を下げる作用は、アミノ酸構成というより、アルギニンというアミノ酸が関係しているのではないかと考えられています。

たんぱく質の上手な摂り方

動物性たんばく質と植物性たんばく質を半々にとるのが理想です。植物性では、量のわりにたんばく質が多いのは大豆です。ご飯は1日軽く3杯でたんばく質は21gになりますが、豆腐だと3分の1丁で9gのたんばく質がとれるのです。
野菜は1日少なくても300gとることがすすめられますが、これだけで5gのたんばく質が含まれます。くだものはたんばく質は含まれません。

動物性たんばく質として1日に必要な目安は、切り身の魚を1切れ89g、獣鳥肉60g、卵1個、牛乳1本というところで、これで動物性たんばく質33gになります。
以上は、糖尿病の基礎食(1200kcal)と同じです。

人間が生きていくために必要かつ最低のエネルギーは1200kcalです。これは、標準体重60kgの人が、ただ横になってじっとしているとき(1kg当たり20kcal消費する)の1日の必要エネルギー量と同じ理想的な栄養配分例です。そして、たんばく質をはじめ、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルなど、最低必要な栄養素が完全に組み込まれているのが下表で、糖尿病の基礎食と呼ばれているものです。