入浴

お風呂は血圧によくないの?

高血圧の人が浴室で脳卒中をおこすことがあります。このために、「高血圧者に入浴は危険だ」と思っている人もいるくらいですが、実はおふろで事故がおこるのは日本だけで、欧米ではこのようなことはないのです。

つまり、入浴自体が悪いのではなく、入浴のしかたそのものに問題があるのです。欧米ではからだを横たえてお湯につかるのに、日本ではかがみ姿勢で腰を浮かしてお湯につかります。

浴槽が深いほど、水圧がかかり、血圧も上がってしまうのです。もう1つの違いは、お湯の温度です。欧米では浴室が居間と同じ温度で寒くないために、熱いお湯に入る必要がありません。しかし日本では、寒さをカバーするために、熱いお湯でからだが冷えないようにしているのです。体を温めるために熱いお湯に入るということです。

熱すぎるお湯は有害

熱いにしろ、寒いにしろ、いずれも皮膚を刺激すると血圧が上がります。皮膚を刺激しないお湯の温度とは、理論的には体温に近い温度ということで、37~38度というところです。

皮膚が熱いお湯や冷たい水などの刺激を受けると、すぐに血圧が上がります。浴槽につかったとたん、血圧が上がっても、そのうち、からだ中の血管が開いて血圧が下がります。高血圧の人は、熟すぎるお湯と、最後の水かぶりは禁物です。

浴室が冷えきっていると、裸では寒さが身にしみますから、どうしても熱いお湯にからだを沈めて温めようとするわけです。このように熱いおふろに入る習慣が、いつのまにか身についてしまい、冬だけではなく、夏も熱いお湯につかるようになり、おふろとは熱いのが習慣化してしまているのです。

たいていの人は42度以上のお湯につかっているようですが、お湯の温度が42度以上に達すると、皮膚をお湯につけただけで血圧は上昇します。そしてお湯につかっているうちに、全身の血管が開いて、血圧が下がります。からだに熱がこもるにつれ、皮膚の血管が開いて放熱しようとするのですが、体温より高い温度のお湯につかっているからには放熱しようがないし、血圧はどんどん下がってきます。

このままではのぼせてしまうわけで、いい加減なところで浴槽から飛び出し、からだを洗うことになります。ところが洗い場が冷えているために、今度は血圧がしだいに上がってきます。そして寒さを覚える程度までにからだを冷やしてしまうと、血圧は当然のことながら、いっそう高くなっていきます。

脳や心臓の動脈が傷んでいる人では、こんなふうに血圧を上げたり下げたりしているうちに、事故をおこしかねません。ではどうすれば血圧の揺さぶりが防げるでしょうか。

それは、前もって浴室をストーブで暖めておくことです。こうすれば、無理して熱いお湯につかる必要はないのです。浴室の温度については、冬と夏とで快感温度は違いますが、冬のからだは寒さになれていますから、40度前後にしておけば、裸になっても寒く感じません。浴室を暖めておけば、お湯の温度が皮膚を刺激しない程度でも寒くありません。

ただ日本人は、子どものころから熟めのお湯に入りなれているため、37~38度のお湯では物足りないことが多いので、39~40度というところが適当でしょう。

よく、浴室が湯気でいっぱいだから暖かくなっていると考える人がいますが、この湯気こそ寒い証拠なのです。夏には湯気が立たないことを思い出してください。つまり、浴室が冷えているからこそ、水蒸気が凝結して湯気になるのです。

血圧が高い人はこれだけは守る

まず面倒がらずに、寒暖計と湯温計とを用意します。寒暖計では浴室の温度を20度前後に、また湯温計ではお湯の温度を40度前後に管理することです。
こうすれば、入浴による温度の害は避けられます。

次に水圧の害ですが、日本式浴槽に身を沈めるときは、首まで深くつからないで、せいぜい肩が沈むか沈まぬか程度にするのが賢明です。

浴槽の底にお尻をつけて坐るのなら、お湯の量を加減する必要がありますが、適当な腰かけ台を使うのもひとつの方法です。「お年寄りに新湯は毒」とよくいわれます。これは一番湯ほど肌にチリチリして、皮膚を刺激するという意味では感心できないからです。

浴槽のお湯揚は、人が入っているうちに、皮膚の脂肪や有機物で適当にやわらかくなりますから、日ごろ血圧が高い高齢者は、二番湯以降がからだにはよいのです。しかし、バスクリーンなどの入浴剤を入れれば、問題はありません。

ぬるめのお湯は血圧を下げ続ける

熱いお湯に入ると交感神経が緊張し、筋肉も締まり、活動力も増します。これは、昔、江戸の火消衆などが利用した朝湯の効果です。

高血圧の人がこれをまねしてはいけません。熱いお揚に対してぬるめのお湯は、副交感神経が緊張しますから、神経のイライラを解消し、血圧も下がって催眠効果も出てきます。また、肩こりや腰痛などといった筋肉の疲れもとれるものです。この効果は、湯ぎめをしないかぎり、2時間も続きます。特に皮膚の血管を開く効果の大きい炭酸泉につかった場合は、血圧を下げる効果が数時間も続くことが知られています。半身浴は血圧をさらさらにします。

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